古田会計事務所

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今週の考える言葉「ポジショニング」

考える言葉

ポジショニング

   市場の多様化が進む中、自社の“ポジショニング”(positioning)を明確にする必要性が叫ばれている。
 
   “ポジショニング”とは、「位置(ポジション)を決める」を意味する英語である。経営における“ポジショニング”とは、他社との違いや特徴を意味する。言い換えると、同質競争を避けて自社の存在意義を確立することである。
 
   P・F・ドラッカーは、「生態的ニッチ戦略」という概念を用いて、中小企業は「小さな市場」を対象として、“ポジショニング”を明確にする戦略を提案している。つまり、独自性を発揮し、戦わない経営をすることだ。(非競争の独占市場)
 
   ポジショニングを成功させるためのポイントとして次のような点が挙げられる。
 
 ① 「企業視点」ではなく「顧客視点」で考える
  顧客の視点で自社製品やサービスを評価すること。
 
 ② 「ターゲット市場の規模」を確認する
  選んだ市場が自社にとって十分な利益をもたらす規模であるか。
 
 ③ 「顧客に共感されるポジショニング」を選ぶ
  顧客が自社製品やサービスに価値を感じ、共感できるポジションを選ぶこと。
 
 ④ 競合分析を継続する
  定期的に競合分析を行い、自社のポジションが競合他社に対してどう位置付けられているかを確認すること。
 
 ⑤ 企業理念やポリシーとの整合性を保つ
  選んだポジションが自社の企業理念やポリシーと整合性があるかを確認すること。
 
   この戦略は、STP分析(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を通じて効果的に実行される。
 
   ドラッカーは、中小企業に対して生態的ニッチ戦略の有効性を説いている。「リーダー的な地位とは、規模の問題ではなく、質の問題である。
 
   強みの分野への集中である」「スペシャリストになることができるニッチは、ほとんどあらゆる分野に存在する」中小企業は競合がなくなるまで市場を細分化して、その中の1つの市場を対象にしても十分に存続できる。
 
   “ポジショニング”の要諦は、競合のない状況をつくりだし、顧客をファン化・信者化できる関係を築けるかどうかである。そのためには、同業他社との差別化ではなく、徹底した独自化を図る必要がある。
 
   「他社より高く売るには、すべてを小さく考えよ」(サム・ウォルトン)。
 

今週の考える言葉「生産性向上」

考える言葉

生産性向上

   P・F・ドラッカーは、その著書の中で「企業の目的は、顧客の創造である」と述べている。
 
   そして、「顧客の創造という目的を達するには、富を生むべき資源を活用しなければならない。資源を生産的に使用する必要がある。これが企業の管理的な機能である。この機能の経済的な側面が生産性である」という。
 
   ここ数年、「働き方改革」という活字がよく見受けられるようになったが、その目的は「働きやすい環境をつくり、生産性を向上させること」にある。その背景には、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「働く人々のニーズの多様化」などが挙げられている。
 
   働き方改革は、次の「3本柱」をもとに、働く人にとって働きやすい社会づくりを目的にしているという。
 
①「労働時間の是正」
 世界的に見ても日本は平均労働時間が長く、みなし残業やサービス残業、有給休暇取得率の低さなどの課題がある。
 
②「正規・非正規間の格差解消」
 非正規雇用の従業員に対して公平な待遇が求められている。
 
③「多様で柔軟な働き方の実現」
 状況に合わせた働き方ができるようにして、家庭と仕事の両立がしやすくなるようにする。
 
   そして、「働き方改革」の目的である“生産性向上”に必要とされているものは、労働だけが唯一の生産要素であるとする生産性のコンセプトではない。成果に結びつくあらゆる活動を含む生産性のコンセプトである。
 
   また、生産性に重大な影響を与える要因として次のようなものが挙げられる。
 
 ① 知識
 ② 時間
 ③ 製品の組み合わせ(プロダクト・ミックス)
 ④ プロセスの組み合わせ(プロセス・ミックス)
 ⑤ 自らの強み
 ⑥ 組織構造の適切さ、および活動間のバランス
 
   これらはすべて、労働、資本、原材料など、会計学や経済学のいう生産性要因に追加すべき要因である。
 
   “生産性向上”は経営にとって、これから益々重要な課題となるだろう。
 

今週の考える言葉「因果応報の原則」

考える言葉

因果応報の原則

   “因果応報の原則”という考え方がある。
 
   「人はよい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ」
 
   もとは、仏教の言葉で、「因果」は、因縁(原因)と果報(報い)。
 
   ある原因のもとに生じた結果・報いの意。一般には、悪い行いに対する悪い報いのほうをいうことが多い。
 
   例えば、現在の自分は過去の自分が創った以外の何者でもないので、もし現在の姿に過ちがあれば、先ずその原因を探し出し、それを悔い改めることが先決ということになる。
 
   自分のなした行為に対し、責任問題が生じたとき、あれやこれやと言い訳、弁解がましいことをいっていると、「因果応報だよ…」と一言先輩から言われハッとさせられることがあったのを思い出す。
 
   私たちは何か問題が生じたとき、つい責任問題、責任の追及に意識が行きがちだが、明らかに手順を間違っている。まずは、どうしてこのような事態が生じたのか、その原因を明らかにするのが先決である。その上での責任の追及だろうと考える。
 
   だが、責任問題が矢面に立つことは、しばしばみられることだ。
 
   つい最近も、こんなことがあった。
 
   ある仕事上の手続きミスで、損失が生じたときのことだ。何とか、その損失をカバーできないかと対処方法を検討していた時のことだ。ある関係者から、こんな質問が出てきた。
 
   「この問題の責任はどこにあるのか、誰の責任ですか?」「その損失は誰が負担するのですか?」と。
 
   これは勿論、気になることでもあるし、ハッキリとすべきことだと思う。その責任問題をうやむやにするわけにはいかない。
 
   だが、今後の対策も踏まえて、“因果応報の原則”に基づいて、その原因を記憶が確かなうちに明確にすることが先決ではないかと思う。
 
   問題が起こったとき、この“因果応報の原則”という言葉を知っていると、過去の失敗を単に責任問題として捉えるのではなく、未来への判断・行動の礎として活用できるのではないだろうか。
 
   「失敗(過去)は変えられない」が、「失敗(過去)は未来に活かすことができる」のだ。
 
   そのためにも、“因果応報の原則”は仏教思想の根本をなすものであるが、楽しい、健全な人生を送るためにも原則として心がけておきたいと思う。
 

今週の考える言葉「捨欲」

考える言葉

捨欲

   人間には、様々な欲がある。食欲、色欲、金欲、権力欲、名声欲、出世欲…人間は欲の塊であるともいえる。
 
   今もないわけではないが、若かりし頃、際限もない欲望に心が振り回されて、心穏やかではない日々があった。どうすれば、欲にかられた煩悩から抜けられるのか、宗教や哲学の本を読み漁ったことがあった。
 
   どの本読んでもその瞬間には、「なるほど!」と悟った気分になれるのだが、少しすると、新たな欲に取りつかれ、心が騒めく。捨てがたき煩悩のなせる業である。
 
   最近、書棚の整理をしているのだが、その時に目についた書物を読み直す機会が増えている。
 
   前々回で紹介した『中村天風 銀の言葉』(岬龍一郎 著)もその一つだ。その中に、次のような言葉が紹介してあったので、改めて紹介したい。
 
   『欲は捨てるな、欲を持て!“捨欲”などできないことで悩むな。欲望がなくて、何の人生ぞ。ただし「楽しい欲を持て!」』
 
   “捨欲”とは、仏教用語である。煩悩の根源となっている「欲」を捨てるという意味である。天風先生は「はたして人間は欲を本当に捨てられるのか?」と、この教えに疑問を投げかけている。
 
   そして、「できないことを、そもそもできるように説くのが詐欺だ」ともいう。そして、「釈迦もキリストもマホメットも、偽りを言っている」と手厳しい。
 
   それに、彼らが何年もかけて修行を積んだのも、みんな悟りたい、生きる辛さから救われたいと思う「欲」があったればこそではないか、と。
 
   「強い心を持ちたい、積極的な人生を歩みたいと思うから、それに近づく努力をするのだろう。それも立派な欲なのだ」と。
 
   だから、「大いに欲望と炎を燃やせ!」という。天風哲学の魅力の一つに、天風先生の言葉の歯切れのよさがあると思う。「ウン、これだ!」と納得してしまう言葉の強さを感じるのである。
 
   ただ、どんな欲望も炎も燃やせといっているわけではない。「欲望には大別して苦しい欲望と楽しい欲望の二つがある」という。もちろん、燃やすべきは、楽しい欲望である。では、楽しい欲望とは何か?
 
   それは、私利私欲を離れて、「人の喜びを自分の喜びとせよ!」ということである。
 
   世の中というのは自分一人で生きられないようにできている。
 
   だとすれば、自他非分離の価値観を学び、習得し、大いに楽しい欲望と炎を燃やし、自己形成していきたいと思う。
 

今週の考える言葉「生命力」

考える言葉

生命力

   中村天風(1876~1968年)といえば、「人生は心一つの置きどころ」という名言を思い出させる。
 
   幸福になるのも、不幸になるのも、すべては「心が決めている」と……。
 
   この言葉と出逢ったのは、もう数十年以上も前になるが、あの当時の何か意味不明なモヤモヤ感や苛立ちが心からスーッと消えて、やるしかないと腑に落ちたのが、今でも鮮明に覚えている。
 
   それ以来、この言葉を座右の銘として、心の整理整頓を心掛けてきて、今があると思っている。
 
   今回もそうだが、書棚の整理をしていると、スーッと目に止まり、手にしたのが『中村天風 銀の言葉』(岬龍一郎 著)である。
 
   “生命力”とは、生きる力、生き抜く力である。万物の霊長として天から授かった人間の“生命力”には、他の生物にはない心(魂)が備わっている。その“生命力”をいかにして甦らせて、「人間が人間として生きていくのに一番大事なのは何か」を説いたのが天風哲学の「心身統一法」であるが、人間の本質である心(魂)を鍛えることを本旨としている。
 
   天風哲学の教義である「心身統一法」は、「生命の力」を甦らせる方法を説いているのであるが、理解しやすいように“生命力”を次の6種類に分けている。
 
① 体力・・・本当に頼もしい状態にあるか。
② 胆力・・・人間としての普通の心の強さであり、無用な心配をしない。
③ 判断力・・・物事を正しく認識し、評価する能力である。
④ 断行力・・・困難や反対を押し切って強い態度で実行する。
⑤ 精力・・・仕事を成し遂げていく元気。
⑥ 能力・・・物事を成し遂げることのできる力。
 
   以上、「6つの生命力」を甦らせる最大・最高の源泉が「積極的精神」であるという。
 
   そして、この「積極的精神」を持ち続ける心得としては、まず消極的で、否定的観念を捨て去ること。「消極的なのは本来の性格ではなく、積極的精神は努力で養うことができる」という。
 
   それから、取り越し苦労は、「ムダな努力」であり、積極的精神の大敵だという。また、取り返しのつかないことで心を悩ませるのもよくない。未練は断ち切るしかない。
 
   要は、人生は良くも悪くも自身の心の持ちようで決まるというのだ。「精神一到何事かならざらん」(朱子)である。
 
   天から授かった“生命力”。人生、まさに「心一つの置きどころ」である。
 

今週の考える言葉「超一流」

考える言葉

超一流

   市場が成熟化すると、生き残るための新たな差別化戦略が求められる。そして、その戦略が描けるかどうかで栄枯盛衰の運命が決まる。
 
   マーケティング論には、「プロダクトライフサイクル」という用語がある。それは、製品や市場の成長を「導入期~成長期~成熟期~衰退期」の4つに分類する考え方がある。
 
   この考え方を用いることで、現在自社の製品・サービスがどのプロセスにいるかを客観的に捉えることができ、次の打ち手や戦略を立てることに役立つのである。
 
   今の日本市場では、次の二つの理由から、「プロダクトライフサイクル」の短縮化が進んでいるという。
 
技術の発展速度の向上
顧客や市場のニーズの多様化・複雑化
 
   さて、“超一流”といわれる人や組織は、自らの置かれている環境を客観的かつ正確に把握し、その変化に適用できるように常に自己変革を怠らないという。
 
   そして、“超一流”と呼ばれる人には、いくつかの特徴があるという。
 
 ① 人格者である(企業や他人の利益を考えて行動する)
 ② 意思を伝えるのがうまい(他人の力を必要だと熟知している)
 ③ 現状を楽しめる(人や環境のせいにしない)
 ④ 規則正しい生活を送っている(食事、睡眠、運動のバランスがいい)
 ⑤ 後進を育てている(熱意と信念をもって指導・育成し、人望が厚い)
 
   また、超一流として上記の特徴を身につけるために、次のようなことを心掛けているという。
 
 ① 継続して努力をする
 ② スピードを意識する
 ③ 謙虚さや柔軟性を持ち続ける
 ④ ユーモアを持つ
 ⑤ 向上心を持ち続ける
 
   常に先を見据えて努力できる人であり、決めるのは他人の評価であることをよく自覚しているのだろう。
 
   今、日本の市場は成熟期から衰退期にある、とよく言われている。しかし、どんな環境にあろうと、自らの立つ位置を決めるのは、当然のことながら自分自身の意思である。
 
   だとすれば、超一流という人はどんな人か、またそうなるためにはどうしたらいいのか、熟慮するのも一考だと考える。
 

今週の考える言葉「ビジョナリーワード」

考える言葉

ビジョナリーワード

   書棚を整理していると、『未来は言葉でつくられる~突破する1行の戦略』(細田高広 著)が目についたので再読している。もう10年程前に出版された本であるが、当時何度も読み直した形跡が残っている。
 
   そこに、「未来を発明する“ビジョナリーワード”」という言葉があるので、少し紹介したい。
 
   ビジョナリー(visionary)とは、「先見の明がある人」とか「洞察力のある人と解している。また、英語の「VISION」には、「視覚」や「風景」の他に「想像力」といった意味が含まれているとある。
 
   しかし、本書では、ビジネスでいうビジョンとは「見えるもの」ではなく、「見たいもの」。「未来予測」ではなく、「未来意思」。「未来を予測するのではなく、つくりだす人」(アラン・ケイ)こそが、ビジョナリーだと述べている。
 
   そして、「時代」を発明した言葉として、30項目を掲げてあるがそのいくつかを紹介したい。
 
① 「10年以内に、人類を月に送り込む」(ジョン・F・ケネディ)
② 「貧困は、博物館へ」(ムハマド・ユヌス、グラミン銀行創設者)
③ 「女のからだを自由にする」(ココ・シャネル)
④ 全てのデスクと、家庭にコンピューターを(ビル・ゲイツ)
⑤ 自由闊達にして愉快なる理想工場(井深大)
⑥ 地上でいちばん幸せな場所(ウォルト・ディズニー)
⑦ 無印良品(西友の良品計画)
⑧ 1000曲をポケットに(「iPod」アップル)
⑨ すべての書籍を60秒以内に手に入れるようにする(「キンドル」アマゾン)
⑩ 僕たちはエンジニアじゃなくてアーティストなのだ(スティーブ・ジョブズ)
 
   確かに、こうした言葉をよく吟味すると、単なる「未来予測」ではなく、未来を変えたいという「未来意思」を強く感じることができる。
 
   “ビジョナリーワード”をつくるには、次の4つのステップが必要だという。
 
① 現状を疑う
② 未来を探る
③ 言葉をつくる
④ 計画を立てる
 
   「会計人は社会のインフラ!」「倒産は、博物館へ」・・・。小生が大事にしている“ビジョナリーワード”である。『将軍の日』で、ぜひ“考える一日”を!
 

今週の考える言葉「働くこと」

考える言葉

働くこと

   先週の「”考える言葉”シリーズ(24‐33)働き」で、「動き」と「働き」の違いについて考えてみた。
 
   今回は、「人はなぜ、働くのだろう?」という観点から、“働くこと”の意義について考えてみたい。
 
   前回も触れた通り、「働くの語源は、傍(はた)を楽(らく)にすること」であり、他人に貢献することによって、自らの成長機会を得ることになるのだ、と。
 
   経営学者である伊丹敬之(ひろゆき)教授は、氏の著書『経営を見る眼』の中で、次の二つのために「人は働く」と述べている。
 
「所得」=「稼ぎ」(経済生活)
「すること」=「勤め」(存在意義)
 
   そして、なぜ人は「会社」で働くかというと、一つは、人間は一人ではできることには限界があるということ、二つに、集団に加わりたい、つまり人は群れたがる動物だからだという。
 
   先週(20~21日)は、二日間、福岡で後継者育成塾(第8期⑤)を開催したが、その時のテーマは『仕事の価値化~仕事の報酬は仕事である』。二日間みっちり、「何のために仕事をするのか」、そして個人ではなく組織人として、なぜ“働くこと”をしているのか等々について、皆で討議し、考えてみた。
 
   普段何気に行っている日常的な業務……。「なぜ、何のために」と目的を問い直してみると、様々な気づきが出てくるものだ。
 
   近代組織論の祖の一人であるチェスター・バーナード(1886~1961)は、企業という組織を協働行為の体系と捉え、その組織の成立条件として、次の3要素を示している。存続の前提としている。
 
① 共通目的(組織目的)
② 協働意思(貢献意欲)
③ コミュニケーション
 
   ここで、“働くこと”とは、協働行為の体系の一部分として、全体と部分との関係性を十分に理解した上で、自らの役割を十分に認識し、求められる成果につながるような動き、働きをすることが重要である。
 
   「仕事の本質は、社会貢献である」とするならば、「自らの働きが世のため人のためになっているのか」という問いを自問自答し、日々反省の時間を持つことが大切だと考える。
 
   「人はパンのみにて生くるにあらず」 “働くこと”の意義を改めて熟慮したい。
 

今週の感がる言葉「働き」

考える言葉

働き

   人を評価するときの間違いの一つは、「動き」と「“働き”」を混同するところにある。
 
   夜遅くまでの残業とか、休日出勤を「よく働いている」と評価するのは早計である。それがどんな成果につながっているのか抜きに評価できないという。
 
   忙しく動き回っていれば働いている気になってしまう。しかし、これは悪しき習慣である。
 
   成果をあげるには、古いものや報われないものを計画的に廃棄する必要があるとドラッカーは繰り返し主張している。
 
   さらに、“働き”において成果を出すために重要なことは、自らの強みを認識できているかどうかである。なぜならば、何事かを成し遂げるのは強みだからである。
 
   では、強みを正しく知るためにはどうしたらいいのか。ドラッカーが推奨するのは、フィードバック分析である。
 
   例えば何かをすると決めた時、先ず期待する成果を書き留めておく。そして定期的に期待と結果を比較する。すると、次のような事が明確になってくる。
 
① 自分は何がうまくできるのか
② 自分の強みは何か
③ 自分にはどんな能力が欠けているのか
④ 自分は何を学ばなければならないか
 
   こうして自分の強みを知ったら、それをさらに強化し、“働き”(仕事)に活かすように心がけることだ。
 
   そして、組織としての“働き”という観点から考えると、協働行為の体系としての機能が求められる。つまり、組織を構成するメンバー一人ひとりがお互いの強みを生かし合うという風土を創ろうとする心がけである。
 
   “働き”を通して、自らのキャリアを高めたいと願っている。それには、ドラッカーによると、次の3つを知ることが大事だという。
 
① 自らの強み(強みを知り、伸ばすこと)
② 自分の仕事のスタイル(仕事の得意不得意を知 る)
③ 自分の価値観(モノの考え方)
 
   そして、自らの価値観を“働き”に活かそうとするならば、組織の価値観との間にズレがあっては自らの強みを発揮することはできない。
 
   元来、働くの語源は、傍(はた)を楽(らく)にすることだという。“働き”、他人に貢献することによって、自らの成長機会を得ることになる。
 
   自己の強みを活かし、世のため人のために尽くすことに専念したいと思う。
 

今週の考える言葉「起業家精神」

考える言葉

起業家精神

   バブル崩壊後(1990年代初頭)、日本経済は「失われた10年~30年」と言われ、そしてアフターコロナ後の今がある。
 
   その間、よく耳にするようになった言葉に一つに、“起業家精神(アントプレナー・シップ)”という言葉がある。また同時に、“起業家精神”を持った若い経営者に出逢う機会が増えたような気がする。
 
   アントレプレナーシップ(entrepreneurship)、その語源はフランス語の「entrepreneur」から来ており、日本語では「起業家(企業家)精神」と訳されている。
 
   シュンペーター(経済学者)は、“起業家精神”について「新しい事業を創造しリスクに挑戦する姿勢であり、イノベーションを遂行する当事者である」と述べている。
 
   また、ドラッカー(経営・社会学者)は「“起業家精神”を個人の資質だけでなく、組織の文化やリーダーシップの哲学」としても捉えている。
 
   そして、「組織やリーダーが変化に適応し、成長するための貴重な指針となり、変化こそが新たな機会を生み出す土壌である。つまり、変化の時代においてビジネスの成功に不可欠な要素を提供する」としている。
 
   かなり分厚い本だが、『ベンチャー創造の理論と戦略』(ジェフリー・A・ティモンズ著、千本倖生+金井信次訳)という本の中で、「“起業家精神”の6大テーマ・起業家に必要なメンタリティと行動」として、次の6項目が紹介してある。
 
① 全面的な献身と強固な決意(決してあきらめない)
② リーダーシップ(ビジョンと夢)
③ 起業機会への執念(識別し、没頭する)
④ リスク、曖昧性、不確実性に対する許容度(パラドックスへの対処)
⑤ 創造性、自己依存、適応力(失敗を恐れず、行動主義に徹する)
⑥ 一流足らんとする欲求(チャレンジ目標への意欲)
 
   この6大テーマの関しては、まったくの同感である。小生も、未来会計の事業化について講演したとき、「事業化、成功の秘訣は何ですか?」と問われたとき、次のように応えることが多い。
 
   「一言でいうと、成果が出るまで、決して諦めずにやり続けること」…。
 
   そのためには、上記の「6大テーマ」は必要不可欠な要件だと、改めて認識した次第である。
 
   今日の成熟化した時代環境、ビジネスのグローバル化、消費者ニーズの多様化など激変する経済環境において、その環境に適応し、さらに存続・発展していくには、“起業家精神”は組織にも個人にも必要不可欠な要件だといえよう。
 

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