考える言葉
少数精鋭
1970年代中頃を境に、日本経済が高度成長期(1955~1972年頃)から安定・低成長期に移行する時代があった。
その頃、高度成長期には青田刈りという言葉が流行ったほど、多くの企業がこぞって新卒就労者を採用し、人を増やしていたのだが、時代環境の変化がそう言わせたのか、「これからは“少数精鋭”の時代である」と言われ出したのを記憶している。
つい最近のことだが、ある経営者から「“少数精鋭”に徹していこうと思うのだが、どこから手掛けていけばいいのだろうか?」という疑問を投げかけられた。
その意図の背景には、少子高齢化になって人材採用が難しくなってきているということと、売上拡大を目指すよりも利益重視の経営へ舵取りしていかなければならないという危機感からであろう。
「“少数精鋭”で行きたい」という、その経営者の意図するところは「一人当たりの生産性をもっと高くしたい」と考えたほうがいいだろう。
そこで、不採算部門の一人当たりの生産性を計算し直して、三人でやっていることを一人減らして、二人で担当してもらう。生産性の低い仕事をやっている人たちがいたら、その仕事を一つにまとめて、誰か一人にやってもらう…。
そして、余剰となった人は業績が伸びている部門・部署への移動、あるいは新規事業の立ち上げに関わってもらうのもいいだろう。
それから、“少数精鋭”を目指す目的は、生産性の高い組織や人材を育てるところにある。だとすれば、生産性の高低の判断をする物差し・基準を誰もが自覚できるように明確にしておく必要があるだろう。
そのためには、先ず組織が目指す一人当たりの生産性目標を明確にしておく必要がある。
その一つの方法として、次の労働分配率を使うのもいいだろう。
「労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100」
この労働分配率が高すぎるということは、企業の収益が従業員の人件費に過度に依存し、利益が圧迫されているという可能性がある。つまり、給料に比べて一人当たりの生産性が低いのか、過剰人員がいるのか。これでは、“少数精鋭”とは言い難い。
世界的に見て、日本という国の生産性の低さが話題となっているが、何が原因となっているのだろうか。日本人が他国の人に劣っているとは思えないのだが…。
“少数精鋭”という視点も踏まえて、徹底して、働き方改革を行い、生産性の向上を高めるためには、何をなすべきなのかを徹底して考える必要があるだろう。日本の企業の99.7%は中小企業だという。その中小企業の働き方にも問題があるという。
考える言葉
自助努力
先週の考える言葉シリーズ(25‐05)で、IG主催の“新春セミナー”について取り上げたが、小生が第1部で講演した『自助努力~強みの上に己を築け』の内容についてもう少し詳細を知りたいと要望があった。
そこで、“自助努力”について考えてみたいと思う。
“自助努力”(self help)とは、「他に頼らず、自力を尽くして物事を成し遂げようとすること」である。そして、このテーマを実践し、高めるに当たり、次の10項目の視点が考えられるので紹介したい。
① 自助の精神を養う
「天は自らを助くる者を助く」(“自助論”サミュエル・スマイルズ)頑張りは自分への応援であるという
② 勤勉の精神を培う
「幸運の女神は常に勤勉な人に微笑む」
③ 自ら好機をつくる
「自ら機会をつくり出し、機会によって自らを変える」
④ 才能と精進をする
「働け!働け!働け!」(仕事は最高の修行である)
⑤ 勇気と気概を持って前進せよ
「学べ!やれ!試してみろ!」 強い意志こそが人格の中心的力である
⑥ 勤勉に、正確に、誠実に
「悪魔は人の怠惰につけ入る」という。(油断大敵!)
⑦ お金と美徳について
「正しく稼ぎ、正しく使う」(節約は人を寛容にする)
⑧ 自己研鑽の精神を培う
「鉄は熱くなるまで打ち込め」(努力する限り限界はない)
⑨ 模範となる人々に学ぶ
「自ら先頭に立って模範となろう」(そのためには師匠をもつ)
⑩ 人徳を身につける
「美徳とは日々の正しい行動の集大成である」(人格は力である)
価値ある目的を思い描き、上記のような視点で、“自助努力”を怠らず、やり続ければ、目的を実現するために必要なあらゆる出逢いを引き寄せてくれるのだという。
“自助努力”は、IG会計グループの本年度・基本方針でもある。この一年間、“自助努力”についてじっくり考えてみたいと思う。
考える言葉
IG新春セミナー
先週7日(金)、IG会計グループ主催で恒例の“IG新春セミナー”が「ホテルニュー長崎(3F)」で開催された。
ここ数日、天候不順で雪がちらつく天気だったが、参加者も多く、無事開催できてホッとしたところである。
今年の“IG新春セミナー”のテーマは、『自助努力~強みの上に己を築け』である。
今大会のテーマは例年の如く、IG会計グループの本年度の基本方針でもある。
第1部で、今セミナーのテーマである『自助努力』について、そのテーマを掲げた背景とそのテーマに対して弊社がどのような取り組みをしようとしているのかについて、小生が一時間ほど講演を行った。
その内容の骨子は、戦後80年間の日本経済の動向・変遷(5段階)と、その結果、日本が抱えることとなった社会的課題と何か、それを解決するために為すべき自助努力の視点(10項目)について、語らせて頂いた。
そして第2部。大久保嘉人氏(元サッカー日本代表)が登場。「情熱を貫くメンタリティ~キャリアから紐解く勝者の考え方」というテーマに対して、コーディネーターの永井功太郎氏(日本M&Aセンター)との対談形式で、思いを語ってくれた。
「成功するには、能力だけでなく、人一倍の努力が必要だ」
「人を育てるには、その人の問題を指摘するのではなく、本人自身に気づかせ、考えさせるようにする」
「不安を抱えつつも、自分を信じて、思い切ってやることだ」(自己責任)
「自信を培うこと。そのためには、徹底した練習による裏づけが必要だ」(一つの技を繰り返し、繰り返しやり続けること)
超一流という選手には、我を感じないという。つねにチームのことを優先し、チームの一員としての自覚をもって思考し、行動しているのだろう。
第3部は懇談会。大久保氏も最後までお付き合いしてくれて、参加者の人たちの声かけ、記念撮影にも気軽に応じてくれていたので、順番待ちの行列ができていた。
また、懇親会では小生も久し振りにお会いする人たちとの会話が弾み、改めて感謝の気持ちで満たされた。
“新春セミナー”を無事終えて先ず思ったのは、「開催できてホントに良かった」という気持ちである。なぜなら、参加された方々の表情が生き生きとされていたし、懇親会でも話が弾んでいたからだ。
やはり、「人は集まる場を持つことが大切だ」と改めて気づかされたように思う。集う、そして語り合う、そんな刺激の場をもっと、つくっていきたい。
考える言葉
事業コンセプト
英語のコンセプト(concept)とは、「①概念、考え。②骨格となる発想や観点」(デジタル大辞典)という意味を持つ。
つまり、物事の考え方のベース・方向性のことで、哲学や芸術などの分野で使われるほか、ビジネスにおいてもよく使われている。
ビジネスで使われる「コンセプト」は、どのような顧客にどのような価値をどのようにして提供するかといった、企画の骨組み・構想をいう。
今回の“事業コンセプト”とは、起業のアイデアをビジネスの構想として具体的に整理したものをいう。「誰に」「何を」「どのようにして」といった視点でまとめることで、事業概要が端的に表現される。
先ずは、ビジネスのアイデアを打ち立て、マーケティングリサーチにより検証をしたあと、いよいよ“事業コンセプト”の策定に取り掛かることになる。
市場性はあるのか、商品・サービスの魅力度はどれくらいか、事業の実現性は高いかなどを確認していく。
具体的には、次の5つの設問に答えてみると頭の整理がしやすいだろう。
① 誰に対して(顧客は誰か)
② どのような商品・サービスを
③ どんな相手を競合に
④ どんなかたちで(システム)で提供するか
⑤ 必要な経営資源の整理・把握
さて、最近、戦後80年という言葉をよく耳にする。その流れを経済的動向の視点でとらえると、「戦後の復興期(1945~1954)~高度成長期(1955~1973)~安定成長期(1974~1985)~バブル期(1986~1990)~低成長期(1991~現在に及ぶ)」という変遷があり、今や「失われた30年」を迎えているという。
70年代、経済が成熟化し安定成長期に入ったころ、ニーズの多様化に伴い、多くの企業で事業の「多角化」が叫ばれた時代があった。その一つの手法としてM&Aがあった。そのメリットはリスクを分散・軽減できることであるが、逆にデメリットとして利益率の低下・財務リスクなどが言われている。
その後、「選択と集中」という事が言われ、「コアコンピタンス(Core Competence)」という言葉が流行った。つまり、「得意分野」に選択・集中する差別化の戦略である。
「多角化」あるいは「選択と集中」、いずれの戦略を取るにしても、“事業コンセプト”を明確にして、組織で共有化しておくことは大事である。過去の延長線上に未来が描けない時代である。“事業コンセプト”を再確認したいと思う。
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