2025年4月14日
考える言葉
社風
職業柄、いろんな業種、業態の企業の経営者や社員の方々と触れ、会話を交わす機会がある。その時、ふと気づかされるのが“社風”の違いである。
“社風”とは、「その企業の雰囲気や特徴」のこと。
企業の内での人間関係を基本とした働く環境のことを意味する。空気感というか、感覚的に要素も大きいだろう。
人間に例えると「人柄」に当てはまる。勤勉で、まじめ人とか、人見知りをしないとかいった「性格」、仕事よりプライベートを重視したいなどの「価値観」から成り立つ、その人の雰囲気のようなものである。
ある会社の社長と接し、その物腰の柔らかさで、いつも他者の話には傾聴する姿勢を見ていて、感心させられる方がいる。そして、驚かされるのは、その会社の社員の人たちが皆、同じような雰囲気を醸し出していることだ。やはり、これは“社風”と言えるだろう。
ふと、思う。自社の“社風”というものをしっかりと考えたり、社内で話し合ったりしたことはあるだろうか。
朝礼や全体会議のときに、経営理念の唱和はしているが、それが“社風”としてどんな形で、浸透しているか、皆で語り合ったことはないのではないだろうか。
“社風”は、「組織風土」や「組織文化」から影響を受けているというが、“社風”の例としては、次のようなものが挙げられるだろう。
① 互いに尊重し合い、率直に意見を言い合える。
② 穏やかで、のんびりしている。
③ 上下の差別なく、意見できる。
④ 社員全員が仲よしで、楽しそうだ。
⑤ 雰囲気が明るい。
⑥ 体育会系のノリがある。
⑦ 積極的で、チャレンジ精神が旺盛である。
社風は、人間に例えると「人柄」だと言えよう。つまり、その人の思考や行動のベースとなっている価値観である。
IG会計グループとしての“社風”、組織として共有している価値観とは何か、改めて考えてみよう。
「先駆的な役割担う」、「主体性を発揮する」、「切磋琢磨し合う」、「自己実現に衆知を集める」などを、IG経営理念として謳っているが、どれだけ“社風”といえるほど根付いているか、常に意識して行動していきたいと考える。
2025年4月7日
考える言葉
伴走支援
昨今、“伴走支援”という言葉を見聞きする。
中小企業庁の「経営力再構築 “伴走支援”ガイドライン」によると、その理論的な柱となったのは、アメリカの心理学者であるエドガー・H・シャイン(1928~2023年)が提唱した「プロセス・コンサルテーション」の考え方だという。
では、“伴走支援”とは何か?
「経営者との“対話と傾聴”を通じて、経営者に企業の本質的な課題への“気づき”を促し、“内発的な動機付け”により社内の潜在力を発揮させ、企業による課題解決を支援することにより企業の“自己変革力の向上、自走化の促進”を図っていく支援方法である」(中小企業庁のガイドライン)とある。
つまり、簡単にいうと、“伴走支援”とは「経営者の聞き役となり、経営者の心が動いて行くことに寄り添うことで前向きな方向につながり、経営者の勇気と力を引き出していく」ということであろう。
その結果、企業の「自己変革力の向上、自走化の促進」を目指す支援方法である。“伴走支援”の肝は、「聞き役」に徹することができるかどうかである。
従来の経営コンサルティングの手法は、どちらかというと「課題解決型支援」と呼ばれる手法で、その企業の抱えている問題を解決してあげるのが目的であった。
企業の目先の課題への御用聞きを行い、その解決方法を提案し、それに企業が受動的に対応していくというやり方である。
一方、“伴走支援”とは、「課題設定型支援」と呼ばれている手法で、「聞き役」に徹し、経営者に本質的な経営課題に気づかせ、当事者意識を持ち、課題解決へ能動的に行動していくように働きかけていく手法である。
「中小企業白書」(20222年度版)は、自己変革の障害として次の5つを挙げている。
① 見えない(企業内部の可視化ができていない)
② 向き合わない(経営者が現実を直視しない)
③ 実行できない(組織内部のしがらみや経営者の心理的障害)
④ 付いてこない(現場の巻き込みが不十分)
⑤ 足りない(課題解決のための経験や知見が足りない)
この5つの障害を乗り越えるためには、自分の殻を破って、外部の能力を活用する必要がある。
その時、必要なのが信頼できる“伴走支援者”である。その立場を担えるのは、われわれ税理士を始め士業に携わる人達ではないかと思う。
“伴走支援”の肝、「対話と傾聴」、つまり「聞き役」に徹することを心がけたいと思う。
2025年4月1日
税務カレンダー
2025年3月31日
考える言葉
ブランド力(brand)
先週(3月19~23日)は、日本M&A協会の国際会議で、タイのバンコクへ行ってきた。主催は㈱日本M&Aセンターである。1994年の第一回会議(上海)以来、30年にわたり毎年開催されており、おかげで世界の多くの有名都市に訪れる機会を得、見聞を広げることができている。
最近、海外に行って感ずることがある。日本という国の“ブランド力”(brand)は、強まっているのだろうか。それとも……。
一昔前だったら、海外に行ってお店に入ると、「あなた日本人?」と聞かれ、「はい」と答えると……、離れない!
数年前だが、シドニーに行って感じたことだが、お店入っても、寄ってこない。日本語でしゃべりかけて来た店員がいたので、振り返ると、東京から来たワーキングホリデーの若い女性。話を聞くと、「時給3000円」で働いているという。東京で働いてもせいぜい1500円なので、シドニーで働いたほうが、割がいいという。
思うに、今、日本はいつ潰れてもおかしくない中小企業がたくさんあるという。
① 自己資本比率が20%未満の会社
② 借入金の償還に10年以上かかる会社
上記に当てはまるとしたら、真剣に自社の収益力を高めるためにどうしたらいいのかを、早急に考える必要があると思う。
利益創出の構造は、「利益=売上×利益率-固定費」と明確である。つまり、収益力を高めるためのパターンは、次の5つである。
① 高く売れる(単価が高い)~高製品力
② たくさん売れる~高生産性
③ 安く仕入・外注する~外部購入費安
④ 人件費が少ない~低人件費
⑤ 固定経費が少ない~固定経費安
自社の“ブランド力”を高めるためには、やはり、他社との差別化ができる状態であるかどうかだろう。そのためには、先ずは自社の収益力を高める努力を怠らないことであろう。
“ブランド力”を高めることによって、企業には同業他社との差別化、付加価値の向上、値決め決定権が得られる。また、自社内の意思統一と社員モチベーションの向上につながるし、ビジネスパートナーの協力、採用活動の効率化などが期待できる。
消費者・顧客にとっては、探索コストの低減やリスク回避というメリットを享受できることになるだろう。ブランド力を高める意識を持ちたいと考える。
2025年3月17日
考える言葉
王道
「姑息な手段に振り回されず、“王道”を貫け!」
かつて、バタバタしていて、つい目先の利益に目が眩み、不用意に心が動かされようとしたとき、誰彼となく口にした言葉である。
書棚にあった、『企業発展の礎となる経営理念の研究』(佐々木直 著)を読み直していると、宮内義彦氏の言葉として、次のような内容のことを紹介してあった。
「宝くじを当てるような気持ちで経営を行うのではなく、“王道”を歩んで、誰にも負けないサービス・商品を作りあげることです。そして、経営は自分の責任でやることです」と。
ここにある“王道”という言葉に触れて、チャレンジ精神に溢れていた若き頃、よく口にした言葉だったな、と思い出した次第である。
少し、気になり、ネットで調べてみた…。
「①儒教で理想とした、有徳の君主が仁義に基づいて国を治める正道。②royal roadの訳語。安易な道。近道」
つまり、“王道”には二つの意味があり、使う意味によって由来が異なるという。
1つは、政治的な意味で「王道」を用いる場合、由来は中国の儒教で、中国戦国時代の学者である孟子(もうし)が唱えた説です。王道とは力で統治する覇道と対照的な、仁愛によって統治する政道のことを表す。
もう一つは、「遠回りせずに済む最も適した方法」のことで、「近道」「安易」と似た意味である。エジプトの王が問いかけたことに対する数学者の答え、「There is no royal road to learning」(学問には王道はない)という言葉が由来である。そこから「royal road」が「近道」として使われるようになったという。
小生は、どちらかというと、①の正道という意味で使ったようだ。しかし、「あーでもない、こうでもない」と悩むよりは、“王道”を選んだほうが結果、近道となるので一緒のことかなと、思う。
宮内義彦氏が言うように、意識して「“王道”を歩むこと」、また「“王道”を貫く」という考えは、世の中が多様化している今日的な状況において、極めて大切なことのような気がする。
久し振りに、“王道”という言葉に触れ、気になったことがある。それは、悩む機会が少なくなったのではないか…。言葉を換えていうと、新しいことにチャレンジする機会が少なくなった。
この世の真理は、何事においても進化向上していけるものだという。この真理を常に忘れず、切磋琢磨し続けることこそが、“王道”への心得ではないだろうか。
2025年3月3日
考える言葉
人間形成
最近、戦後80年という言葉をよく耳にする。今年(2025年)が戦後80年の節目であるということからだろう。
戦後の日本は、経済的復興を最優先課題として掲げ、そのための知識教育の制度化を図った。その甲斐もあって、高度経済成長期(1955~1973年の頃)を経て、世界第2位の経済大国になったのは周知の事実である。
その当時流行った言葉に、エコノミックアニマルがある。これは、その当時の日本人は経済上の利潤追求を第一義として活動していたため、国外の人からそう呼ばれたのであろう。
そのせいもあったのだろうか、日本人としての思想・価値観を問い直すようなセミナーも流行っていたし、本屋にはそんな書籍もたくさん並んでいたように思う。
その当時、あるセミナーで紹介され、関心をもった人物がいる。
安岡正篤(1898~1983年)である。書棚を整理していると、十数冊出てきたので懐かしく思い、再読しているので少し紹介したい。
安岡正篤は、日本の易学者、哲学者、思想家。戦後の政界・財界に影響を与えた人の中で、一番手に挙げられる。また、「平成」という元号は、安岡正弘の発案だとも言われている。
その氏が説く“人間形成”において、人間は次の四つの要素から成り立っているという。① 徳性、② 知性・知能、③ 技能、④ 習慣
さらに、人物を修めるための平生の心掛けとして、次の三点を挙げている
① 心中常に「喜神」を含むこと
② 心中絶えず感謝の念を含むこと
③ 常に陰徳を志すこと
そして、人間としての要素をしっかりと認識できたら、次は人間として、自己を高めていく努力が大事になる。
① 寸陰を惜しむこと
② 良き師、良き友を持つこと
③ 愛読書、座右の書を持つこと
④ 感恩報謝の心を持つこと
以前にも紹介した、物事の捉え方としての「目先にとらわれず長い目で、物事の一面だけでなく多面的に、枝葉末節にこだわらず根本的にみてゆく」という思考の三原則も肝に銘じておきたい教えである。
手元にある本だけでも再読に時間がかかると思うが、それだけの価値はあるだろう。
2025年3月1日
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