古田会計事務所

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今週の考える言葉「自分との戦い」

考える言葉

自分との戦い

   “自分との戦い”(battle with myself)…。「人生は“自分との戦い”である」という言葉は、誰もが一度は耳にした言葉であろう。
 
   「“考える言葉”シリーズ」でも何度となく、取り上げたテーマの一つでもある。
 
   最近、読んだ本に『サクッとわかるビジネス教養 マネジメント』(遠藤功 監修)というものがあり、分かりやすく、かつ本質を突いた内容だったので少し紹介したい。
 
   著書の中に、マネジメントの必要性について次のように書いてある。
 
   『仕事に限らず、人生というものは思い通りにはいきません。…思い通りにいかないものを、どうにかこうにかして「いい感じ」にし、成果を最大化するために必要なスキルこそがマネジメントなのです』。
 
   そして、マネジメントの最小単位は「自分」、そこから「チーム」、「組織」と単位が大ききなっていくと指摘し、先ずはマネジメントの基礎となる「セルフマネジメント」の徹底から始めるべきだと指摘している。
 
   全く、同感である。マネジメントとは、その意味で、まさにセルフマネジメント、つまり、“自分との戦い”を徹底するところから始まるのである。
 
   IG会計グループが、創業間もない頃からドラッカーの提唱する「自己管理による目標管理」を徹底して学び、弊社の組織体制、人材育成のベースとしてきたのも、自立心を培い、“自分との戦い”ができる、「主体性のある人材」を創出したかったからである。
 
   セルフマネジメントでパフォーマンスを最大化するための必要な要素として次の4つが挙げられるという。
 
 ① 時間(最も重要なリソース。常に時間を意識すること)
 ② 仕事(段取りと準備が命)
 ③ 環境(現場を見直し、環境を整えること)
 ④ 人間関係(仕事の成果は人とのつながり。思いやりが大事)
 
   昔から、「他人と過去は変えられない」という言葉があるように、マネジメントとはトップ自らが率先して「自己革新」を心がける、“自分との戦い”を徹底して行うしか成果は出ないのだと考える。
 
   今、ふと「克己心(こっきしん)」という言葉が浮かんだが、「自分に打ちかつ心のこと」をいう。語源は、「論語」の「克己復礼(こっきふくれい)に由来するといわれている。
 
   まさに“自分との戦い”において大切な心がけであろう。
 
   「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」(山本五十六)とある。“自分との戦い”、自己革新の覚悟を怠らないようにしよう。
 

今週の考える言葉「管理会計」

考える言葉

管理会計

   先週末(1月17~18日)、福岡で「IG後継者育成塾(第8期第7講)」であった。
 
   以前にも紹介しているが、「IG後継者育成塾」の目的は、創業者の志を継承する「後継者の人材」を育成するところにある。
 
   そのために、習得すべき最大のテーマは、「自己革新力」である。そのために必要な課題として3つのテーマ(① 思考力、② 数字力、③ モチベーション力)を身につけるために、全12講でカリキュラム化して行っている。
 
   2ヵ月に一回の開催なので、終了するのに2年間を要することになる。それだけの時間かけて行う理由に一つは、ただ知識の習得だけでなく、経営者にとって大切な人脈づくりの機会にして欲しいからだ。現に、卒業したあとも、定期的に会ったり、情報交換したりをしているようだ。
 
   さて、今回は『管理会計~会計を経営に活かす』というテーマで、その大家である澤邉紀生教授(京大)お招きして、「経営者の意思決定をサポートするための会計」である“管理会計”について、大変分かりやすく、噛み砕いて、じっくりと講義して頂いた。
 
   経営者としての仕事を行うための出発点として、まずドラッカーの「五つの質問」がある。「これらの質問に答えることは、経営者にしかできない仕事!」であり、「これらの質問に答え続ける者こそが経営者!であるという。
 
   その意味で、「五つの質問」は経営者にとって必要な「道具箱」だという。ただ、道具を「所有する」のと「使いこなす」とは違う。「使いこなす」ためには、経営者目的の“管理会計”をしっかり学び、身につける必要があるという。
 
   「5つの質問」を使いこなすことによって、「経営者としての夢(将来のあるべき姿)が明確になってくる。その夢、あるべき姿を実現するためにはどうしたら良いか考え、計画し、実行し、実現する経営」、まさに「逆算の経営」を具現化するために必要な会計の領域が“管理会計”だといえよう。
 
   その意味において、“管理会計”は「未来会計」であり、「意思決定のための会計」だと言える。
 
   多くの経営者は、会計といえば、過去の結果をまとめて、税務署に申告するために、あるいは利害関係者に報告するに義務付けられているように思っている人が多い。小生は、それを過去会計であり、報告会計と呼んでいる。過去は変えられないので、自分に不都合な結果であれば、ごまかしてしまう。いわゆる粉飾決算である。
 
   その点、“管理会計”とは、経営のレベルアップのために有用な、真に経営者のための会計だといえよう。IG会計グループでは、ずっと以前から、MAS監査というビジネスモデルを構築し、提供している。導入した企業の黒字率は90%を超えている。
 

今週の考える言葉「強み」

考える言葉

強み

   今年は21世紀に入って、早や25年目になる。第一四半世紀の最後の年で、つまりラストスパート(last spurt)の年である。
 
   IG会計グループにとっては、新5ヵ年計画(2025~2029年)のスタートの年でもある。
 
   中期ヴィジョンとして、『夢・志への挑戦、Next Stage~Build on Strength』を掲げて、次世代のための未来創造に向けてスタートすることにした。
 
   そして、本年度(R7年)の基本方針は『自助努力~“強み”の上に己を築け』とし、先週末、新年度発表会を全員で開催し、今年一年に対する各部署・各人の所信表明をしたばかりである。
 
   さて、非連続な時代環境において、競争力を保ち続けるためには、コア・コンピタンス(Core Competence)という言葉をよく耳にするが、自己あるいは自社の“強み”をしっかりと認識しておく必要があるだろう。
 
   今、P・F・ドラッカーの書物をぜんぶ読み直しているのだが、ドラッカーは自らの“強み”に集中することの大切さを次のように説いている。
 
   「何かを成し遂げるのは、“強み”によってだけである。弱みによって何かを行うことはできない」
 
   「不得手なことの改善にあまり時間を使ってはならない。自らの“強み”に集中すべきである。無能を並みの水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーと努力を必要とする」
 
   NN構想の会(1999年設立)を25年前に立ち上げたときの動機も、よくよく考えてみると、ドラッカーの「自らの強みに集中せよ」という思想に触れたのがきっかけとなったような気がする。
 
  それでは、どうやって自らの“強み”を知ればよいのだろうか?
 
   これもドラッカーによると、“強み”を知る方法は一つしかないという。フィードバック分析である。「何かをすることに決めたならば、何を期待するかを直ちに書き留めておく。九ヶ月後、一年後にその期待と実際の結果を照合する」そうすることによって、一年後あるいは二年後には、自らの“強み”が見えてくるのだという。
 
   確かに、ある仕事に関して、他の誰よりも迅速かつ正確にこなしている自分がいる。
 
   それは、自分の“強み”が生かされている証拠である。そして、その気づいた“強み”をさらに磨く努力をすれば万全である。
 
   もう一つ大事なことは、組織のメンバーがお互いの“強み”を発見し合うことだ。そして、お互いの“強み”を生かし合うような文化が生まれたら、素晴らしい成果が生まれるだろう。コア・コンピタンス経営を心掛ける一年にしたいと思う。
 

今週の考える言葉「成功する人」

考える言葉

成功する人

   書棚を整理していると、農業経営に関する書物が十数冊出てきたので、再読し始めている。その中の一冊に『農業で成功する人うまくいかない人』((澤浦彰治 著)という本があり、新しくの農業に取り組み、成功する人の思考と行動について述べている個所がある。
 
   その内容を読んでいると、何も農業経営に限らず、一般企業においても共通して言えることなので少しかいつまんで紹介したい。
 
 ① しっかり成り立っているプロの農家に学び、生の情報を大事にしている。(研修先選びが大事、学ぶ姿勢がいい)
 
 ② やるべきことのタイミングを逃さず実行している。(「将来よくなりたい」という願望を強く持っている)
 
 ③ 安易に支援資金に依存しない。(先ずは、正しいアドバイスが得られる師匠持つこと)
 
 ④ 機械や機械や道具をきれいに長く使う。(減価償却が済んでも、使い続けている。5S活動の徹底)
 
 ⑤ 労働時間(午前8時~午後5時)に縛られない。(その日に必要であれば徹夜してでも終わらせる)
 
 ⑥ 高いモチベーションを持っている。(どんなときでも諦めない。一時的ではなく、「継続的なやる気」)
 
 ⑦ 丈夫な身体を維持している。(避けて通れない強い体力づくり)
 
 ⑧ 顧客の要望に対して「できない」と即答しない。(今はできないが、時間と資源をかければ必ずでる)
 
 ⑨ 利益を目的として考えない。(顧客の要望に応えるいい仕事をすれば、利益は後からついてくる)
 
 ⑩ 適正規模で経営をする。(損益分岐点売上高を下げる)
 
 ⑪ 自分の意志で物事を考え、かつ柔軟な姿勢で実行する。(肯定的で、楽観的に思考する)
 
 ⑫ 失敗を環境や他人のせいにせず、自己責任で受け止める(失敗を次に活かし、事前にリスクを考え、準備する)
 
   激変の時代環境の中で、誰もが変化のためのリスクを背負わなければ新たな成長が難しい時代である。成功するための心構え、条件づくりが重要となる。常にいろいろな機会を見つけ、自分に合った成功事例を学ぶ必要があるだろう。
 
   いい仕事をするために、自分自身の強みを正しく知る機会を常に求めたいと思う。
 

今週の考える言葉「CSR」

考える言葉

CSR

   「CSR(Corporate Social Responsibility)」とは、企業が社会的存在として果たすべき責任のことである。日本語では、「企業の社会的責任」と訳されている。
 
   企業が適切に“CSR”を果たすことは、信頼向上や人材採用・定着への好影響、法令違反のリスクを低減するなどの観点から非常に重要なことである。
 
   日本で“CSR”の考え方が普及した背景には次のような時間があったからだと思う。
 
   1970年代のオイルショックの際の便乗値上げや買い占め・売り惜しみなどで生活物資が高騰し、小売業らに対する批判的なムードが高まった。また、2000年代には不景気の中で相次いで企業不祥事が問題となり、一般消費者の企業に対する信頼は大きく低下した。
 
   こうした背景の下、企業の信頼回復・維持するためには、“CSR”を適切に果たすことが重要であると認識されるように至ったのであろう。
 
   “CRS”に関しては、「国際標準化機構(ISO)」が定めた、次の「CRSに関する7つの原則」がある。
 
 ① 説明責任
 ② 透明性
 ③ 倫理的な行動
 ④ ステークホルダーの利害の尊重
 ⑤ 法の支配の尊重
 ⑥ 国際的行動規範の尊重
 ⑦ 人権の尊重
 
   驚くことに、ドラッカーは約50年前の1973年(63歳)のマネジメント論の著作の中で、その社会的な役割として次の3つを掲げ、「企業の社会的責任(CSR)」に関しても言及している。
 
 ① 自らの組織に特有の使命を果たす
 ② 仕事を通じて働く人たちを生かす
 ③ 社会の問題について貢献する
 
   ただ、「企業とは、それぞれに特有の目的をもつ組織であり、その分野で成果をあげることを目的とする社会の機関である」とし、「それらの組織が果たすべき最大の貢献、すなわち“社会的責任”とは、自らに特有の機能を果たすことである」としている。
 
   つまり、その能力を超えた課題に取り組み、あるいは“社会的責任”の名のもとに自らの権限のないことを行い、成果を損なうようなことは行うことは許されるべきではないとしている。つまり、分を弁えた上で、“CSR”に取り組むべきだと忠告している。
 

今週の考える言葉「STP分析」

考える言葉

STP分析

先週の”考える言葉”シリーズの中で、“STP分析”について少し触れていたが、今回はこのことについて考えてみたい。
 
   “STP分析”とは、市場を「セグメンテーション(Segmentation)」により細分化し、「ターゲティング(Targeting)」で狙うべき市場を定め、「ポジショニング(Positioning)」によって競合との差別化を図ることで、効果的にマーケティング戦略策定するためのフレームワークである。
 
   マーケティングの実践は、「環境分析」「基本戦略」「具体的施策」の3つのステップに分けることができる。“STP分析”は、「基本戦略」のステップで利用するフレームワークである。
 
   “STP分析”を行うことで、次の3点を把握できる。
 
① 市場における顧客ニーズ
市場を細かなセグメントに分割する。その過程で、各セグメントにどのようなニーズや特性が存在するかを把握できる。
具体的には、世代別、男女別、職業別などで分類。その他、経済的地位や地域などでセグメントする。
 
② ターゲット市場に対してより効果的なアプローチ法
狙うべきターゲット市場を特定することができるため、広告やプロモーション、製品開発などのリソースを最適化することが可能となる。
具体的には、集中型・差別型・無差別型マーケティングなどの手法がある。
 
③ 競合他社との差別化のポイント
ターゲット市場における自社の立ち位置を決めるためには、自社の製品やサービスが顧客に対してどのような価値を提供できるのかを把握することが重要である。
具体的に比較する軸の代表例としては、値段・品質・店舗数・販売チャネルなどがある。
 
   以上、“STP分析”は、なかなか理に適った分析手法であると思う。
 
   あと、“STP分析”を実際に行う際の留意点をいくつか挙げておきたい。
 
① STP分析の実施のみで満足せず、他の手法も併用し、多角的な視点から検討を行うように心掛けること。
 
② 選択した市場の大きさや成長率を十分に確認すること。
 
③ STPの順番にこだわりすぎず、着手しやすい項目から進めてもよい。
 
   百聞は一見に如かずという。自社の基本戦略を考えるときに、一手法として試してみたらどうだろうか。
 

今週の考える言葉「ポジショニング」

考える言葉

ポジショニング

   市場の多様化が進む中、自社の“ポジショニング”(positioning)を明確にする必要性が叫ばれている。
 
   “ポジショニング”とは、「位置(ポジション)を決める」を意味する英語である。経営における“ポジショニング”とは、他社との違いや特徴を意味する。言い換えると、同質競争を避けて自社の存在意義を確立することである。
 
   P・F・ドラッカーは、「生態的ニッチ戦略」という概念を用いて、中小企業は「小さな市場」を対象として、“ポジショニング”を明確にする戦略を提案している。つまり、独自性を発揮し、戦わない経営をすることだ。(非競争の独占市場)
 
   ポジショニングを成功させるためのポイントとして次のような点が挙げられる。
 
 ① 「企業視点」ではなく「顧客視点」で考える
  顧客の視点で自社製品やサービスを評価すること。
 
 ② 「ターゲット市場の規模」を確認する
  選んだ市場が自社にとって十分な利益をもたらす規模であるか。
 
 ③ 「顧客に共感されるポジショニング」を選ぶ
  顧客が自社製品やサービスに価値を感じ、共感できるポジションを選ぶこと。
 
 ④ 競合分析を継続する
  定期的に競合分析を行い、自社のポジションが競合他社に対してどう位置付けられているかを確認すること。
 
 ⑤ 企業理念やポリシーとの整合性を保つ
  選んだポジションが自社の企業理念やポリシーと整合性があるかを確認すること。
 
   この戦略は、STP分析(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を通じて効果的に実行される。
 
   ドラッカーは、中小企業に対して生態的ニッチ戦略の有効性を説いている。「リーダー的な地位とは、規模の問題ではなく、質の問題である。
 
   強みの分野への集中である」「スペシャリストになることができるニッチは、ほとんどあらゆる分野に存在する」中小企業は競合がなくなるまで市場を細分化して、その中の1つの市場を対象にしても十分に存続できる。
 
   “ポジショニング”の要諦は、競合のない状況をつくりだし、顧客をファン化・信者化できる関係を築けるかどうかである。そのためには、同業他社との差別化ではなく、徹底した独自化を図る必要がある。
 
   「他社より高く売るには、すべてを小さく考えよ」(サム・ウォルトン)。
 

今週の考える言葉「生産性向上」

考える言葉

生産性向上

   P・F・ドラッカーは、その著書の中で「企業の目的は、顧客の創造である」と述べている。
 
   そして、「顧客の創造という目的を達するには、富を生むべき資源を活用しなければならない。資源を生産的に使用する必要がある。これが企業の管理的な機能である。この機能の経済的な側面が生産性である」という。
 
   ここ数年、「働き方改革」という活字がよく見受けられるようになったが、その目的は「働きやすい環境をつくり、生産性を向上させること」にある。その背景には、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「働く人々のニーズの多様化」などが挙げられている。
 
   働き方改革は、次の「3本柱」をもとに、働く人にとって働きやすい社会づくりを目的にしているという。
 
①「労働時間の是正」
 世界的に見ても日本は平均労働時間が長く、みなし残業やサービス残業、有給休暇取得率の低さなどの課題がある。
 
②「正規・非正規間の格差解消」
 非正規雇用の従業員に対して公平な待遇が求められている。
 
③「多様で柔軟な働き方の実現」
 状況に合わせた働き方ができるようにして、家庭と仕事の両立がしやすくなるようにする。
 
   そして、「働き方改革」の目的である“生産性向上”に必要とされているものは、労働だけが唯一の生産要素であるとする生産性のコンセプトではない。成果に結びつくあらゆる活動を含む生産性のコンセプトである。
 
   また、生産性に重大な影響を与える要因として次のようなものが挙げられる。
 
 ① 知識
 ② 時間
 ③ 製品の組み合わせ(プロダクト・ミックス)
 ④ プロセスの組み合わせ(プロセス・ミックス)
 ⑤ 自らの強み
 ⑥ 組織構造の適切さ、および活動間のバランス
 
   これらはすべて、労働、資本、原材料など、会計学や経済学のいう生産性要因に追加すべき要因である。
 
   “生産性向上”は経営にとって、これから益々重要な課題となるだろう。
 

今週の考える言葉「因果応報の原則」

考える言葉

因果応報の原則

   “因果応報の原則”という考え方がある。
 
   「人はよい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ」
 
   もとは、仏教の言葉で、「因果」は、因縁(原因)と果報(報い)。
 
   ある原因のもとに生じた結果・報いの意。一般には、悪い行いに対する悪い報いのほうをいうことが多い。
 
   例えば、現在の自分は過去の自分が創った以外の何者でもないので、もし現在の姿に過ちがあれば、先ずその原因を探し出し、それを悔い改めることが先決ということになる。
 
   自分のなした行為に対し、責任問題が生じたとき、あれやこれやと言い訳、弁解がましいことをいっていると、「因果応報だよ…」と一言先輩から言われハッとさせられることがあったのを思い出す。
 
   私たちは何か問題が生じたとき、つい責任問題、責任の追及に意識が行きがちだが、明らかに手順を間違っている。まずは、どうしてこのような事態が生じたのか、その原因を明らかにするのが先決である。その上での責任の追及だろうと考える。
 
   だが、責任問題が矢面に立つことは、しばしばみられることだ。
 
   つい最近も、こんなことがあった。
 
   ある仕事上の手続きミスで、損失が生じたときのことだ。何とか、その損失をカバーできないかと対処方法を検討していた時のことだ。ある関係者から、こんな質問が出てきた。
 
   「この問題の責任はどこにあるのか、誰の責任ですか?」「その損失は誰が負担するのですか?」と。
 
   これは勿論、気になることでもあるし、ハッキリとすべきことだと思う。その責任問題をうやむやにするわけにはいかない。
 
   だが、今後の対策も踏まえて、“因果応報の原則”に基づいて、その原因を記憶が確かなうちに明確にすることが先決ではないかと思う。
 
   問題が起こったとき、この“因果応報の原則”という言葉を知っていると、過去の失敗を単に責任問題として捉えるのではなく、未来への判断・行動の礎として活用できるのではないだろうか。
 
   「失敗(過去)は変えられない」が、「失敗(過去)は未来に活かすことができる」のだ。
 
   そのためにも、“因果応報の原則”は仏教思想の根本をなすものであるが、楽しい、健全な人生を送るためにも原則として心がけておきたいと思う。
 

今週の考える言葉「捨欲」

考える言葉

捨欲

   人間には、様々な欲がある。食欲、色欲、金欲、権力欲、名声欲、出世欲…人間は欲の塊であるともいえる。
 
   今もないわけではないが、若かりし頃、際限もない欲望に心が振り回されて、心穏やかではない日々があった。どうすれば、欲にかられた煩悩から抜けられるのか、宗教や哲学の本を読み漁ったことがあった。
 
   どの本読んでもその瞬間には、「なるほど!」と悟った気分になれるのだが、少しすると、新たな欲に取りつかれ、心が騒めく。捨てがたき煩悩のなせる業である。
 
   最近、書棚の整理をしているのだが、その時に目についた書物を読み直す機会が増えている。
 
   前々回で紹介した『中村天風 銀の言葉』(岬龍一郎 著)もその一つだ。その中に、次のような言葉が紹介してあったので、改めて紹介したい。
 
   『欲は捨てるな、欲を持て!“捨欲”などできないことで悩むな。欲望がなくて、何の人生ぞ。ただし「楽しい欲を持て!」』
 
   “捨欲”とは、仏教用語である。煩悩の根源となっている「欲」を捨てるという意味である。天風先生は「はたして人間は欲を本当に捨てられるのか?」と、この教えに疑問を投げかけている。
 
   そして、「できないことを、そもそもできるように説くのが詐欺だ」ともいう。そして、「釈迦もキリストもマホメットも、偽りを言っている」と手厳しい。
 
   それに、彼らが何年もかけて修行を積んだのも、みんな悟りたい、生きる辛さから救われたいと思う「欲」があったればこそではないか、と。
 
   「強い心を持ちたい、積極的な人生を歩みたいと思うから、それに近づく努力をするのだろう。それも立派な欲なのだ」と。
 
   だから、「大いに欲望と炎を燃やせ!」という。天風哲学の魅力の一つに、天風先生の言葉の歯切れのよさがあると思う。「ウン、これだ!」と納得してしまう言葉の強さを感じるのである。
 
   ただ、どんな欲望も炎も燃やせといっているわけではない。「欲望には大別して苦しい欲望と楽しい欲望の二つがある」という。もちろん、燃やすべきは、楽しい欲望である。では、楽しい欲望とは何か?
 
   それは、私利私欲を離れて、「人の喜びを自分の喜びとせよ!」ということである。
 
   世の中というのは自分一人で生きられないようにできている。
 
   だとすれば、自他非分離の価値観を学び、習得し、大いに楽しい欲望と炎を燃やし、自己形成していきたいと思う。
 

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