6月の税務カレンダー
税務カレンダー


BS経営
“BS経営”という言葉をご存じだろうか。いうまでもなく、決算書には次の三表(財務三表という)がある。
① 「P/L(損益計算書)」
② 「B/S(貸借対照表)」
③ 「C/F(キャッシュフロー計算書)」
多くの経営者には、「P/Lなら分かるが、B/Sはちょっと苦手」という人が多い。
経営者にとって、自分の会社が儲かっているのか損しているのかは最も関心が高いことなので、その計算をしている「P/L」に関心を示すのは分からないことでもない。だが、中長期的な視点から経営を考えようとするならば、「B/S」をしっかり理解し、活用する必要があるだろう。
“BS経営”とは、「B/S」をしっかりと理解し、経営に活かそうという提案である。「B/S」とは、会社の財政状態を示した表であるが、資金をどのように調達し、運用しているか、その結果、どれくらい利益を稼ぎ出して、「自己資本の充実」につながったかを明らかにしてくれる。
そして、“BS経営”の目的は、自己資本をいかに充実させるか目指すことであり、そのための何をなすべきかを徹底して考え、実行することである。戦後の日本経済において、企業の発展の決め手は「売上と利益の規模の拡大」だと考えられていた。しかし今や、この考え方だけでは企業の舵取りは難しい。バブル崩壊後の「失われた30年」という現実を見れば、一目瞭然である。
IG会計グループでは、毎月二回、「将軍の日(中期五ヵ年計画策定セミナー)」を開催しているが、参加されている経営者の殆どが、損益を中心とした計画を策定しているケースが多い。結果として分析予測型の目標設定になってしまっている。
そこで、視点を、あるべき理想の「B/S」を思い描くことから始めたらどうだろう。
納税後の純利益志向で自己資本の充実を目指す考え方である。
自己資本の充実を目標に掲げると、年々の純利益の積み上げが必要となるので、自ずと中長期的な視点(5~10年、あるいは20年)が生まれてくる。変化の激しい時代環境だからこそ、「長い目で、多面的に、根本的に」物事を観て、意思決定する必要が、経営者に求められている。
自己資本の充実をテーマとする“BS経営”はまさに、長期ビジョンに立った計画の策定であり、小さくても健全な企業体質を目指す経営だといえる。変化対応力は、売上の規模ではなく、自己資本の充実によって保障されるのである。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
洞察力
変化が激しい今日的な環境において、経営者に求められる資質としてよく、① 洞察力、② 判断力、③ 実行力の三つが挙げられる。
今回、その“洞察力”について考えてみたい。
“洞察力”とは、「物事の本質を見抜く力」だという。言葉を変えていうと、「見えていない部分」まで見抜いていく力だといえよう。確かにそう考えると、今の時代環境には
必要な資質の一つであるといえよう。 “洞察力”のある人って、どんな特徴があるだろうか。
① 客観的な視点から多角的に見るとこができる
② 相手の仕草や言葉に敏感で、用心深い
③ あまりしゃべらず、人をよく観察している
④ 直観力に優れ、勘がよく当たる
⑤ 自分の感情を上手くコントロールできる
などがある。
では、“洞察力”を鍛えるためにはどんな心がけが必要だろうか。
① 日頃から周囲をよく観察すること
② 自分の先入観で物事を捉えないこと
③ 過去の失敗や経験を記録し、分析すること
④ 新しい価値観も素直に受け入れること
⑤ 「なぜ」を問う習慣を身につけること
⑥ 何事にもチャレンジして経験を積むこと
などが挙げられるが、大切なことは、何事にも問題意識をもって取り組むことだと言えるだろう。
冒頭に述べたように、変化が激しく、先行きが不透明な時代である。見えないものを感じ取り、本質を見抜く“洞察力”は、ますます重要なスキルとなってくだろう。もちろん、すぐに習得できるものではないので、日々心掛けて積み重ね、少しずつ鍛えていくしかないと思う。
さらに大切なことは、身につけた“洞察力”をどう生かすかの問題がある。
“洞察力”を高めるメリットとして、問題解決能力の向上につながるし、コミュニケーション能力の向上につながることは間違いない・・・。
もう一つ加えておきたい重要なことは、その洞察力をもって相手の立場を熟知し、思いやる心を持つことだ。それによって、人間関係が良好になり、生産的になれる。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
未来会計
IG会計グループは創業当初から、“未来会計”の伝道師としての役割・使命を担う覚悟でずっとやってきたのだが、早いもので40年近くなる。
その“未来会計”について、改めて少し考えてみたい。
先ずその定義だが、“未来会計”とは、「経営者の意思決定をサポートし、思い描く未来(あるべき姿)を構築するために必要な管理会計の体系」をいう。
端的に言うと、「目的意識を持って経営するための仕組みづくり」である。
目的とは「成し遂げようとして目指す未来の姿」であり、その目的を達成するための手段・方法を具体化して、行動に及ぶまでの仕組みをつくることである。
稲盛和夫氏の有名な言葉の一つに、「会計がわからんで経営ができるか」というのがあるが、ここでいう会計とはまさに“未来会計”のことをいっているのだと思う。
現に、氏が目指す「アメーバ経営」の目的として次の5つを述べているが、その中に“未来会計”の重要性も掲げてある。
① 正しい経営
② 経緯実態を正確かつタイムリーに把握する「管理会計制度(=“未来会計”)」
③ 経営の重責を担う「共同経営者」を多数育成する仕組み
④ 「全員参加型経営の実現」
⑤ 「ガラス張り経営」
“未来会計”の重要性を述べてあるといったが、「アメーバ経営」の目的を具現化する最善の手法こそが“未来会計”であるといっても、決して過言ではないという気がするのだが…。
仕事を通しての実感であるが、経営者とは常に問題と向き合っている人だと思う。だが、その問題が向き合うだけの価値があるのかどうかが正しく判断されているかどうかとなると疑わしいところがある。
さらに、複雑化、多様化した今日的経済環境の中において、一層正しく問題と向き合うことが難しくなっているようだ。
では、問題と正しく向き合うためにはどうしたらよいのだろうか…。
「何のために経営をしているのか」、つまり、目的を明確にすることから始めるべきだと考える。なぜなら、目的とは、「成し遂げようとして目指す未来の姿(=課題)」そのものだからである。
小生自身、未来会計にずっと取り組んできて感じることであるが、何事を行うにしても必ず、「何のために」という目的を問う習い性が身についたように思う。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
目的発想法
これも書棚を整理していたときに、目についた一冊である。もう20年近く前に購入し読んだ本であるが、次の一節が目に止まり、再読している…。
「みなさん、地球上でいちばん開発が遅れているところはどこでしょうか」(『目的発想法』村上哲大 著)。
著者は、それが「広大無辺の未開発領域が、頭の使い方(方法)の中に」として、発想・思考法・行動の仕方など人間行動のすべてにおける「方法の領域」だとし、それを最善にする方法として、“目的発想法”を提唱している。
“目的発想法”とは何か?著者は次のように定義している。
「物事のすべてを目的と手段で発想する方法技術」であり、つまり、「人が生きて何かを考え、何かをやろうとするとき、それらのすべてにつき、目的は最善・明確か、手段は最適か、を問う発想法」である。
そして、その発想法の前提条件として、次の3つの前提を置いている。
① 仕事を含めて人生すべては問題解決行動の連続であるという前提
② 仕事、経営を含めて人生のすべては目的手段の体系であるという前提
③ 人生の100%は方法でなされているという前提
なぜ、この本を再読しようと思ったのかというと、「会計を経営に活かす」という観点から、IG会計グループが創業当初から提案してきた「未来会計サービス」の考え方と多分に重なるからである。
経営者とはつねに問題と向き合っている人のことであり、その問題を解決するためのお手伝いをするのが、我々会計人の使命であるという考え方に基づいて「未来会計サービス」を体系化している。
経営者の抱えている問題を明確にするために先ず、「あるべき姿(目的)」を描いてもらう。そして、現状との差を捉えることによって、問題を特定する。さらに、特定された問題を解決するために何を為すべきか(手段)、を一緒に考える。
それら一連の流れをしっかりと考えてもらうのが『将軍の日(中期5か年計画策定セミナー)』である。つまり、経営の目的と手段を具体化するための一日である。
そして、単年度計画に落とし込んで「仮説~実践~検証」を月次展開するのが「未来会計サービス」である。そのサービスを受けている企業の90%が黒字企業であることを考えると、“目的発想法”が「仕事や人生の究極の成功法則」であることが容易に理解できる。
「目的は明確か、手段は最適か」をつねに問いかけるように心掛けたいと思う。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」

2025年問題
“2025年問題”とは、約800万人いる「団塊の世代」(1947年から1949年生まれ)が後期高齢者(75歳)になることで、国民の4人に一人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えることにより予測される、一連の問題をいう。
具体的には、① 労働力の不足、② 医療による医師不足、③ 介護の問題、④ 社会保障費の増大、⑤ 空き家・マンション問題などが挙げられる。
さらに、中小企業の経営者にとっては、事業承継問題が大きな課題として取り沙汰されている。今回は、この点に焦点を絞って考えてみたい。
“2025年問題”のついて考えるとき、次の二つの視点からとらえる必要があると考える。
① 先ずは、事業を誰に継がせるか(出口戦略)。
② 次に、承継後の成長戦略をどう描くか(新成長戦略)
ちょうど先日、㈱日本M&Aセンター主催のセミナーが福岡で開催され、講師として話す機会があったので、その内容について触れてみたい。
“2025年問題”は、事業承継に関しても一つの大きな転換期になるという前提で、この問題に、会計事務所はどう関わっていくべきかというテーマで、M&A戦略は極めて有効な手段として検討すべきであると述べた。
①の出口戦略(売り)とは、トップが高齢化し、後継者不在の企業に対して提案するM&A戦略であり、その際の課題は、次の3点である。
* 買い手が見つかるかどうか
* 言い値で売れるかどうか
* 残る従業員の処遇は万全か
そのための準備が必要となる。
②の新成長戦略(買い)とは、事業承継後の新たな成長戦略をいかに確立するかの手段として提案するM&A戦略であり、次の3点を考慮すべきである。
新しいエリアへの進出
新しい業種(多角化)への進出
人材の確保と育成
「市場、製品やサービス、人材」を充実させ、新たな成長戦略の糸口をつくる必要がある。
IG会計グループでは、上記のようなM&A戦略も含めて、将来のことをじっくり考える一日として「将軍の日」を定期開催している。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
NN構想の会
数人の方から、「今年は、NN構想の全国大会はどうするのか?」という問合わせが入っていたが、先日(4月13日)のNN理事会で、リアルで開催することが決定したのでその内容についてお知らせしたい。
開催方法については、オンラインか、ハイブリッドかなどの意見も出たが、やはり皆が一堂に会し、顔を突き合わせて交流を図ることにこそ、NNの意義があるということで意見が一致した。
日時は9月7、8日(木・金)の二日間で、場所は椿山荘を予定している。基調講演の講師など未確定の部分もあるが、第23回大会テーマは『セルフマネジメントの徹底~健全な判断力を磨く』で決定した。
そこで、大会テーマについて少し説明を加えながら考えてみたい。
「セルフマネジメント(self‐management)」とは、「自己管理」を意味し、目的や目標を達成するために自分自身の感情や行動を管理することをいう。
世の中が多様化し、またコロナ禍で、テレワークの普及や働き方改革などの影響を受けて、「セルフマネジメント」の重要性が改めて注目されている。
IG会計グループでは創業当初から「IG式目標管理システム」の徹底により、主体的な人材の育成を課題として取り組んできた。まさに、セルフマネジメントができる人材の育成である。
「セルフマネジメント」を磨くのに必要なことをいくつか考えてみたい。
① 将来の夢・志を明確に描くこと
② 成果が出るまでやり続ける耐久力
③ その時々に求められる集中力
④ 喜怒哀楽の感情とうまく付き合うこと
⑤ キャリア形成に必要な主体的なプランニング作成力
最近、ワタミの創業者である渡邉美樹さんと、デザイナーのコシノジュンコさんのお二人の講演を聴く機会を得たが、畑は違うが共通して言えることは、お二人とも「セルフマネジメント」に非常に長けている人だという印象を受けた。
今秋に開催される“NN構想の会(第23回)”まで、まだ時間があるが、多くの支持団体や関係者の方々の協力を得て、これからの経営環境の中で問われるであろう、「セルフマネジメント」について、じっくりと考える時間と空間を提供できる二日間にしたいと考えている。
皆様からもアイデアや助言があれば、ぜひ事務局へご一報ください!
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
徳
久しぶりに、ワタミの渡邉美樹氏の講演(MAPサロン主催)を聴く機会を得た。
いつものことながら、氏の志の高さとその実行力に感服させられながら聴き入ってしまった。
『withコロナ時代を生き抜く経営とは?』というテーマで90分間、持論を熱く語ってくれた。一言でいうと、どんなに苦しい状況下でも、夢・志を高く持って、やり続けることの大切さを、さわやかな口調で語って頂いたと思う。
今回、氏の講演を聴きながら、以前に読んだ『論語と算盤』(渋沢栄一著)の内容が思い浮かんだ。帰宅し、書棚から本を取り出して読んでみると、符合することが多々あり、改めて氏の凄さを確信した。
その凄さとは、学んだことを即実践し、自らの血肉にしているところだと思う。
『論語と算盤』は、折に触れて何度も読み直している本の一つであるが、少し内容について触れてみたい。
『論語と算盤』は一言でいうと、「道理と事実と利益は必ず一致するもの」であることを前提に、渋沢栄一の信条とするところを語り綴ったものであろう。
「モノの豊かさとは、大きな欲望を抱いて経済活動を行ってやろうという気概がなければ、進展していかないものだ」という。
ゆえに、「実業とは、多くの人に、モノが行きわたるようにするなりわいなのだ」という。そして、「国の富をなす根源とは何かといえば、社会の基本的な道徳を基盤とした正しい素性の富なのだ」と述べている。
この考え方をベースに、『論語』と『算盤』というかけ離れたものを統合させたのが『論語と算盤』という思想だったのであろう。
資本主義は、利潤追求という欲望をエンジンとして前に進んでいく一面がある。しかし、そのエンジンはしばしば暴走し、大きな惨事を引き起こしていく。まさに、日本のバブル期がそうであった。
だからこそ渋沢は、その暴走に歯止めをかける枠組みが必要だと考えたのである。その手段が『論語』の教えであったのだ。
事業の存続・発展には、利潤の追求は欠かせないものだ。しかし、持続的な成長を成し遂げるには、もう一つの要件が必要だ。それが、“徳”を積むという習慣であると考える。
渡邉氏は、それを、自分の本分を見極め、夢・志を立て、その実現のために覚悟を決めるのが唯一の策だと熱く語っている。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
伝える力
書棚の整理をしていると、もう数年前に購入していたものだが、『東大物理学者が教える「伝える力」の鍛え方』(上田正仁 著)という文庫本が目に止まった。
恐らく移動中の機内で読んだのだろう・・・。読んだ形跡はあるのだが、内容が定かでなかったので読み直してみると、“伝える力”を鍛えることが人生をより深く生きることにつながり、いかに有用であるかを論理的に述べてあったので紹介したい。
著者は以前、『「考える力」の鍛え方』についても本を出しているのだが、両者の違いについて、「考える」ことは自己完結できるのだが、「伝える」という行為は相手の存在が不可欠であることだ、と述べている。
その違いをしっかり認識したうえで、“伝える力”を考える必要がある。つまり、「伝える」という行為は、伝えたい内容が他者によく理解されることが目的であり、大前提なのだ。
それを踏まえた上で、“伝える力”には次の3段階のレベルがあるという。
① レベル1・・・「用事が足りる伝え方」(事実・用件・伝言など、マニュアル通りに伝えられるレベル)
② レベル2・・・「聞く気にさせる伝え方」(プレゼンテーション、意志表示など、考える力が必要なレベル)
③ レベル3・・・「人を動かす伝え方」(交渉など、創造力が必要なレベル)
そして、最後に、レベルでは測れない永遠の課題として、「人を育てる伝え方」(教育、子育て、部下の指導など)にまで言及している。
「考える力」を鍛えるカギは、自己完結できるので、自ら課題を見つけ、解決に至るまで諦めない人間力が問われる。
一方、今回のテーマである“伝える力”の基本は、次のとおりである。
先ず、最初に話の幹を伝え、枝葉は可能な限りきり落とすことと、それを相手の立場に立って伝える工夫にあるだろう。
そのためには、
① 何を伝えるべきかを立ち止まって考えること。
② 相手の立場に立って考えること。
③ そして、それを自分自身の言葉で伝えること。
以上3つのポイントを大切にしなければならないと考える。
繰り返しになるが、“伝える力”を鍛えることは、ただ一つの正解を目指すスキルを学ぶことではなく、自分自身を見つめ直し、相手の立場に思いをはせる「人間力を養うことであると考える。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」