古田会計事務所

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今週の考える言葉「ジェンダーギャップ」

考える言葉

ジェンダーギャップ

   今日の朝日新聞に記載されていた記事(歴史社会学者・小熊英二氏へのインタビュー記事)に、“ジェンダーギャップ”という言葉があった。“ジェンダーギャップ”とは、いわゆる「男女格差」のことである。
 
   昔から問題視されていたことも、言葉を言い換えると、違った響きを感じるのは不思議なものだ。
 
   日本は政治や経済などにおける“ジェンダーギャップ”が世界的にも大きい国だという。「男女格差」は、女性の社会進出化が進み、是正されていたと思っていたが、そう単純でもないらしい。(「ジェンダーギャップ指数」は、世界156ヶ国中120位)
 
   そういえば昨年、森喜朗元総理の「女性の多い会議は時間がかかる」発言が、物議を醸し出していたことを思い出した。
 
   小熊氏のデータ分析によると、大都市と地方で女性が置かれた状況が異なり、日本の女性は次の2種類の排除に直面しているという。
 
①「大都市郊外型」
この型では、女性の地方議員は比較的多いが、労働力率は低くなる。その理由は、大都市通勤圏は高所得の男性が多く、専業主婦になりやすい傾向がある。しかし、高学歴な女性が多いため市民運動を経て政治に進出する背景があるという。
 
②「地方圏型」
この型では、女性の労働力率は高いけれども、地縁や血縁に阻まれているせいか地方議員の女性比率は低い。
日本の女性労働力率は低くはないのだが、現場労働や非正規が多く、高賃金部門や上級管理職、政界など社会のコア部分に女性の進出ができていないという。
 
   少子高齢化という将来に対する大きな課題を抱えている日本にとって、“ジェンダーギャップ”だけの問題ではなく、地域格差や階級格差という問題を含めて、社会全体の構造的な問題として、統合的に、関係性思考で取り組んでいかなければならない社会的問題だと考える。
 
   つまり、部分の問題ではなく、全体の問題として捉え、それらを解決していこうとするならば、やはり、大切なことは「国としてのビジョン」を明確にすることであろう。
 
   21世紀世界における「日本のあるべき姿(使命・役割)はどうあるべきなのか」、そして「現状との差」を埋めるために、私たち日本人の持つ「強み」とは何か、どんな「成果」をもたらすことができるのか・・・。そうした社会構造的な問題と向き合うことによって、“ジェンダーギャップ”は、解消されてくるのだと考える。
 

今週の考える言葉「三つの成果」

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三つの成果

   ピーター・F・ドラッカーは、マネジメントを「組織として“成果”をあげさせるための道具、機能、機関」であると定義した。
 
   つまりドラッカーのいうマネジメントは“成果”をあげることが大前提であり、“成果”をあげるための組織において共通して役立つ理論を体系化したものだといえよう。
 
   「主役は“成果”である」と、ドラッカーは『マネジメント』のまえがきで宣言しているように、ドラッカー思想を理解する上で、最も重要なキーワードだといえよう。
 
   ドラッカー思想に出会う前までは、「主役は努力」であったように思える。「一生懸命に努力した結果だから、しょうがない。諦めるしかない・・・」等々。
 
   しかし、ドラッカーの言葉に出合った時から、考え方を変えた。
 
   「“成果”が出なかったのは、努力が足りなかったからだ。あるいは、努力の方向性を間違えたからだ」と。そう考えることによって、検証の質が高まり、次のステップへの様々な気づきが得られるようになったと思う。
 
   目的と“成果”は、切っても切れない関係にあるといえる。
 
   目的は組織が進むべき方法を指し、“成果”はその過程で具体的に手にする結果をいう。
 
   マネジメントの目的は顧客の創造にあるが、そのために最善の努力を払うが、“成果”はその過程で具体的に手にする結果だといえる。
 
   ドラッカーは、多くの組織はミッションを持っており、それを実現するために、次の三つの領域の“成果”が必要だと指摘している。
 
① 直接の成果
② 価値への取組み
③ 人材の育成
 
   ここでいう、①の「直接の成果」とは、売上や利益、顧客数などをいう。これらは測定可能で、企業の標準的な評価尺度として不可欠なものである。
 
   ②の「価値への取組み」とは、顧客価値の継続的な創造を意味している。顧客が支持してくれる要因を突き止め、継続的にその価値を高めていくことである。
 
   そして、③の「人材の育成」は、組織の明日を考えれば避けて通れない重要な“成果”である。
 
   正しいマネジメントとは、これら“三つの領域の成果”を明確かつバランスよく定め、舵取りをしていくことに他ならないと思う。
 
   「“成果”は主役である」というドラッカーの言葉を改めて噛みしめてみたい。
 

今週の考える言葉「管理手段」

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管理手段

   IGグループでは、創業の当初から、自律的で、主体的な人材に育ってもらうことを目的として、ドラッカーが提唱した「目標管理(MBO)」(Management by Objectives)を導入し、やり続けている。
 
   「目標管理(MBO)」というシステムを運用するときに、最も気をつけなければならないのは、「管理(control)」という言葉の意味の捉え方である。
 
   ドラッカーは、「管理」について次のように述べている。
 
   「“管理”という言葉はできるだけ避けたい。なぜなら、それは“支配”を想起させるからだ」と・・・。すなわち、「知的労働者を管理、監督することはできない」というのが、ドラッカーの信念である。
 
   さらに、ドラッカーの「成長」についての考え方は、次の通りである。
 
   「成長は、常に“自己啓発”によって行われる。企業が人の成長を請け負うなどということは法螺にすぎない。成長は一人ひとりの人間のものであり、その能力と努力に関わるものである」
 
   つまり、人間は誰でも“自己啓発(self‐development)”しようという意思を持っているという。そうであるならば、「人材育成の基本は、育てるのではなく、育つ環境を提供することである」という。
 
   育つ環境とは、“働きがい”をもてる環境と置き換えてもいいだろう。働きがいに関して、ドラッカーは次のように述べている。
 
   「働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには、①生産的な仕事、②フィードバック情報、③継続学習が不可欠である」と。
 
   つまり、責任は、働きがいの源泉である。つまり「責任を果たすことが働きがいを生むことになる」のである。
 
   そして、責任をもたせるための条件として、次の3つことを示唆している。
 
 ① 仕事を生産的なものにすること
 ② 成果についてフィードバックすること
 ③ 継続学習が不可欠
 
   以上のように考えると、“管理手段”を用いた方向づけは、一人ひとりの人間の「動機づけ」につながらなければならないということである。
 
   「仮説~実践~検証」という経営サイクルを用いたマネジメント手法を展開するにあたって、“管理手段”の意味を改めて問う必要があるだろう。「評価測定」の本質は、一人ひとりが自らを振り返り、自ら動機づけることにあると考える。
 

今週の考える言葉「無為のリスク」

考える言葉

無為のリスク

   最近、気になる言葉の一つにピーター・F・ドラッカーが示唆している“無為のリスク”がある。
 
   ドラッカーは次のように述べている。
 
   「事業においては、リスクを最小にすべく努めなければならない。だがリスクを避けることにとらわれるならば、結局は最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち“無為のリスク”を負う」(『創造する経営者』)。
 
   “無為のリスク”とは、未来や機会に挑戦しないリスクをいう。
 
   「現状維持は衰退である」と言われるほど変化の激しい今日、誰しもが変化というリスクから逃れることはできない。だがしかし、傍観者である人が意外と多いのではないかと危惧する。
 
   「何もしないということは、環境の変化に身を任せ、自ら陳腐化させられる道を選択しているのに等しい」という。つまり、結果として、不合理で最大のリスクを背負うことになると指摘している。
 
   そのためにも、ドラッカーは、意思決定に伴う“リスク”の性格を見極めるべきだとして、4つの“リスク”に分類している。
 
①「負うべきリスク」
事業の本質に付随する“リスク”で、携っている以上回避できない“リスク”。
 
②「負えるリスク」
機会の追求に失敗しても、企業の存続に影響がないレベルの“リスク”。
 
③「負えないリスク」
負える“リスク”の反対のもの。他に、成功を利用することができない“リスク”。
 
④「負わないことによるリスク」
無為のリスクの典型。革新的な機会を失い、自らを陳腐化させてしまう“リスク”。
 
   トップ経営者の本質は、組織の存続と発展のために「未来や機会に挑戦することだ」と考える。故に、トップの意思決定には不確実性に伴うリスクがつねに存在しているといっても決して過言ではない。
 
   「より大きなリスクを負担できるようにすることこそ、企業家としての成果を向上させる唯一の方法である」というドラッカーの金言を肝に銘じておきたい。
 
   そのために必要不可欠ものが利益の蓄積である。そして、その利益を得るためにはリスクを避けては通れないのである。
 
   “無為のリスク”とは、「ぬるま湯のカエル」のようなものだと、心得ておきたい。
 

今週の考える言葉「選択と集中」

考える言葉

選択と集中

   世の中には、仕事や勉強ができる人とそうでない人が存在する。
 
   「その差はどこから生じるのか?」と問われると、昔から、それは費やした時間の問題ではなく、“集中力”の差であるとよく聞かされたものである。
 
   現代社会最高の哲人の一人と称されたP・F・ドラッカーも“集中力”について、次のように述べている。
 
   「成果をあげるための秘訣を一つ挙げるならば、それは“集中”である」と…。
 
   確かに、自らの体験からいっても、仕事や勉強、読書、また遊びにおいてもそうだが、無我夢中になっていたときは、気づかないうちにあっという間に時間が過ぎていて、我に返ったときには、なんとも言えない充実感に満たされていたことがある。
 
   さて、今回のテーマである“選択と集中”について考えてみたい。
 
   ドラッカーが、マネジメントにおいて提唱している“選択と集中”とは、経営戦略を立てる際に欠くことのできない手法のことである。
 
   一般的にいう「集中」とは集中力の意味で使われることが多いが、マネジメントでいう“選択と集中”は、あるものを一つ選び(コア事業)、そこに経営資源を“集中”投入することをいう。
 
   二つの“集中”の違いは、「時間の長さ」である。前者の“集中”は多くが瞬間的で、長くてもせいぜい一日。だが、後者の“集中”は、持続的である。
 
   もちろん、ドラッカーがいう“選択と集中”での「集中」の意味は、後者、つまり一つのことを継続してやり続けるという意味である。
 
   “選択と集中”という考え方で、限りある経営資源を有効活用するときのポイントは二つあるという。
 
① 第一は、捨てること。
“集中”とは、多くの可能性を捨てることでもあり、あえて選ばないという勇気が必要とされるのである。
 
② 第二は、任せること。
人に任せるということは、自分にしかできない仕事だけが残り、それを極めることで卓越性が生まれることになる。ところが、人に任せることに不安をもつ人がいて、任せる勇気が必要となる。
 
   その意味で、選んで一つに決めることは勇気そのものであり、その一つをやり続けることは覚悟そのものだといえよう。まさに、ドラッカーがいうマネジメントにおける“選択と集中”とは、勇気と覚悟の結晶だと考える。
 

今週の考える言葉「GDP」

考える言葉

GDP

   日本経済の長期低迷が言われてから久しい。
 
   「失われた10年」が20年となり、今や30年を過ぎた。日本はこれから「失われた40年あるいは50年」を歩きはじめるのではないかという経済評論家もいる。
 
   この30年で日本はどんな変化を遂げたのだろうか?次の主な統計上の数字を見てみよう。
 
①日経平均株価…3万8000円台から2万9000円台へ。
 
②ドル円相場…1ドル=140円台から120円台へ。
 
③名目GDP…462兆円(1990年度)から553兆円(2021年度)へ。
 
④一人あたりの名目GDP…342万円から441万円へ。
 
⑤人口…1億2325万人から1億2618万人へ。
 
⑥政府債務…250兆円から1200兆円へ。(GDPの2倍超)
 
⑦企業の内部留保…163兆円から463兆円へ。
 
   そこで注目したいのはGDP…。GDPとは、「Gross Domestic Product」の略で、「国内総生産」のことをいう。1年間など、一定期間内に国内で産出された付加価値の総額で、国の経済活動状況を示している。
 
   名目GDP(553兆円)は、中国に抜かれたものの世界で第3位ある。問題は、一人あたりの名目DGP(441万円)で、世界で第25位である。つまり、人口によって経済大国としての基盤が作られてきたことを意味していると言えよう。
 
   考えてみると、戦後の工業化による日本の経済復興をベースで支えてきたのは、地方からの集団就職、若手の労働人口(低賃金)だったと言える。そして、終身雇用制と年功序列型賃金での安定した雇用体制であった。
 
   しかし、少子高齢化など、世の中の構造がガラリと変わった以上、過去の成功体験は全く通用しないのが今の世の中である。
 
   また、政府債務が250兆円から1200兆円と4倍強に増えている。恐らく、景気対策のために公共投資などに使われたものと推測するが、思った以上の成果につながっていないことは明白である。
 
   グローバル化した時代環境の中では、一国の経済政策だけでは大きな結果にはつながらないということだろう。
 
   やはり、国を支えている国民、企業がみんなで自らイノベーションを断行し、自らの生産性を高めるために、知恵を絞り、努力をすることが大事だと考える。
 

今週の考える言葉「先見力」

考える言葉

先見力

   「先が読めない時代である」といわれるようになって久しい。
 
   あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来予測が難しい状況にあることから、「VUCA時代」と呼ばれている。
 
   さらに、新型コロナウィルスの流行という想定外の出来事もあり、一層不安を募らせている感がある。「100年に一度のパンデミックだ」とも言われているようだが、いよいよ、『断絶の時代』が到来したのだろう。
 
   ドラッカーがいう『断絶の時代』とは、連続性、連綿性のない飛躍としての時代変化を言う。そんな時代環境の中で未来への予兆を、的確に読み取るのは、それなりの“先見力”が要求される。
 
   では、その“先見力”を磨き、高めるためにはどうしたらいいのだろうか。「苦しいときのドラッカー頼み」といこう。
 
   ドラッカーの鋭い“先見力”は、次の6つの源泉にあるという。
 
①マクロ(経済)とミクロ(経営)との両方に強いこと
言葉を変えていうと、全体と部分の関係性を見抜ける観察力があるかどうかであろう。
 
②歴史通であること
古今東西の歴史に対する該博な知識、教訓の読取りの甚深さがあること。
 
③グローバル的な思考であること
グローバルとは、「地球的な、全世界的な広がり」「普遍性を持った」という意味である。
 
④マルチ人間の特徴を存分に発揮すること
近視眼的ではなく、多角的な視野に立つことである。確かに、ドラッカーはジャーナリスト、投資銀行のエコノミスト、大学の教授など、多角的に闊歩している。
 
⑤あくなき統合への執念があること
統合への執念のためには、狭い視野に捉われず、大局観を養う必要がある。
 
⑥流行の中に不易を見抜けること
移りゆくものの中に、移りゆかざるものを観ることであろう。
   
   見えにくい未来を観るための“先見力”・・・。過去の延長線上に未来がない乱世において、「分析予測型」の手法だけでは通用しないのである。未来を「洞察創造する」“先見力”が求められている。
 
   ドラッカーはいう、「未来はすでに始まっている」と・・・。
 

今週の考える言葉「フィードバック分析」

考える言葉

フィードバック分析

 
   私たちは生きていく中で、様々な経験をする。
 
   その経験を次の機会に生かすために必要な方法として、“フィードバック分析”がよく知られている。
 
   その“フィードバック分析”について、ピーター・F・ドラッカーはその著作『プロフェッショナルの条件』の中で、次のように述べている。
 
   「強みを知る方法は一つしかない。“フィードバック分析”である。何かをすると決めたならば、何を期待するかをただちに書きとめておく。9か月後、1年後に、その期待と実際の結果を照合する。私自身、これを50年続けている。そのたびに驚かされている。これを行うならば誰もが同じように驚かされる」と…。
 
   IG会計グループでは、未来会計(=MAS監査)の実践を通して、自社の目標管理の徹底を行っている。そのプロセスである「仮説~実践~検証」において“フィードバック分析”の大切さは、身に染みてよく分かる。
 
   “フィードバック分析”の効用としては、次のようなことがいえよう。
 
 ① 「強み」への集中
 ② 「強み」の培養
 ③ 知的傲慢の矯正
 ④ 成果の阻害要因を知る
 ⑤ 人への対し方を知る
 ⑥ できないことに気づく
 ⑦ できないことを捨てる
 
   目標と実績の差異(ギャップ)の分析、つまり“フィードバック分析”によって、人や組織にとって何が強みであって何が不得手なのかを把握できる。そしてそこから、これから伸ばしていくものや補っていくものを把握し、改善・改革につなげていく。
 
   これを継続的に行うことによって、成長し続けると同時に、成果をより大きなものとすることができるようになる。
 
   “フィードバック分析”とは、究極のセルフマネジメントとにほかならない。着眼すべきは、自らの「強み」である。まさに、「汝自身を知れ」である。
 
   IG会計グループでは、すべての企業経営者に未来会計の重要性を説き、経営計画の作成を勧めている。だが、その成果に対しては格差が生じている。その原因はどこにあるのだろうか?
 
   いろいろ考えられるが、その一番の原因は“フィードバック分析”の良否にあると思う。
 

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