古田会計事務所

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今週の考える言葉「目的発想法」

考える言葉

目的発想法

   これも書棚を整理していたときに、目についた一冊である。もう20年近く前に購入し読んだ本であるが、次の一節が目に止まり、再読している…。
 
   「みなさん、地球上でいちばん開発が遅れているところはどこでしょうか」(『目的発想法』村上哲大 著)。
 
   著者は、それが「広大無辺の未開発領域が、頭の使い方(方法)の中に」として、発想・思考法・行動の仕方など人間行動のすべてにおける「方法の領域」だとし、それを最善にする方法として、“目的発想法”を提唱している。
 
   “目的発想法”とは何か?著者は次のように定義している。
 
   「物事のすべてを目的と手段で発想する方法技術」であり、つまり、「人が生きて何かを考え、何かをやろうとするとき、それらのすべてにつき、目的は最善・明確か、手段は最適か、を問う発想法」である。
 
   そして、その発想法の前提条件として、次の3つの前提を置いている。
 
 ① 仕事を含めて人生すべては問題解決行動の連続であるという前提
 ② 仕事、経営を含めて人生のすべては目的手段の体系であるという前提
 ③ 人生の100%は方法でなされているという前提
 
   なぜ、この本を再読しようと思ったのかというと、「会計を経営に活かす」という観点から、IG会計グループが創業当初から提案してきた「未来会計サービス」の考え方と多分に重なるからである。
 
   経営者とはつねに問題と向き合っている人のことであり、その問題を解決するためのお手伝いをするのが、我々会計人の使命であるという考え方に基づいて「未来会計サービス」を体系化している。
 
   経営者の抱えている問題を明確にするために先ず、「あるべき姿(目的)」を描いてもらう。そして、現状との差を捉えることによって、問題を特定する。さらに、特定された問題を解決するために何を為すべきか(手段)、を一緒に考える。
 
   それら一連の流れをしっかりと考えてもらうのが『将軍の日(中期5か年計画策定セミナー)』である。つまり、経営の目的と手段を具体化するための一日である。
 
   そして、単年度計画に落とし込んで「仮説~実践~検証」を月次展開するのが「未来会計サービス」である。そのサービスを受けている企業の90%が黒字企業であることを考えると、“目的発想法”が「仕事や人生の究極の成功法則」であることが容易に理解できる。
 
   「目的は明確か、手段は最適か」をつねに問いかけるように心掛けたいと思う。
 

今週の考える言葉「2025年問題」

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2025年問題

   “2025年問題”とは、約800万人いる「団塊の世代」(1947年から1949年生まれ)が後期高齢者(75歳)になることで、国民の4人に一人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えることにより予測される、一連の問題をいう。
 
   具体的には、① 労働力の不足、② 医療による医師不足、③ 介護の問題、④ 社会保障費の増大、⑤ 空き家・マンション問題などが挙げられる。
 
   さらに、中小企業の経営者にとっては、事業承継問題が大きな課題として取り沙汰されている。今回は、この点に焦点を絞って考えてみたい。
 
   “2025年問題”のついて考えるとき、次の二つの視点からとらえる必要があると考える。
 
① 先ずは、事業を誰に継がせるか(出口戦略)。
② 次に、承継後の成長戦略をどう描くか(新成長戦略)
 
   ちょうど先日、㈱日本M&Aセンター主催のセミナーが福岡で開催され、講師として話す機会があったので、その内容について触れてみたい。
 
   “2025年問題”は、事業承継に関しても一つの大きな転換期になるという前提で、この問題に、会計事務所はどう関わっていくべきかというテーマで、M&A戦略は極めて有効な手段として検討すべきであると述べた。
 
   ①の出口戦略(売り)とは、トップが高齢化し、後継者不在の企業に対して提案するM&A戦略であり、その際の課題は、次の3点である。
 
 * 買い手が見つかるかどうか
 * 言い値で売れるかどうか
 * 残る従業員の処遇は万全か
 
   そのための準備が必要となる。
 
   ②の新成長戦略(買い)とは、事業承継後の新たな成長戦略をいかに確立するかの手段として提案するM&A戦略であり、次の3点を考慮すべきである。
 
新しいエリアへの進出
新しい業種(多角化)への進出
人材の確保と育成
「市場、製品やサービス、人材」を充実させ、新たな成長戦略の糸口をつくる必要がある。
 
   IG会計グループでは、上記のようなM&A戦略も含めて、将来のことをじっくり考える一日として「将軍の日」を定期開催している。
 

今週の考える言葉「NN構想の会」

考える言葉

NN構想の会

   数人の方から、「今年は、NN構想の全国大会はどうするのか?」という問合わせが入っていたが、先日(4月13日)のNN理事会で、リアルで開催することが決定したのでその内容についてお知らせしたい。
 
   開催方法については、オンラインか、ハイブリッドかなどの意見も出たが、やはり皆が一堂に会し、顔を突き合わせて交流を図ることにこそ、NNの意義があるということで意見が一致した。
 
   日時は9月7、8日(木・金)の二日間で、場所は椿山荘を予定している。基調講演の講師など未確定の部分もあるが、第23回大会テーマは『セルフマネジメントの徹底~健全な判断力を磨く』で決定した。
 
   そこで、大会テーマについて少し説明を加えながら考えてみたい。
 
   「セルフマネジメント(self‐management)」とは、「自己管理」を意味し、目的や目標を達成するために自分自身の感情や行動を管理することをいう。
 
   世の中が多様化し、またコロナ禍で、テレワークの普及や働き方改革などの影響を受けて、「セルフマネジメント」の重要性が改めて注目されている。
 
   IG会計グループでは創業当初から「IG式目標管理システム」の徹底により、主体的な人材の育成を課題として取り組んできた。まさに、セルフマネジメントができる人材の育成である。
 
   「セルフマネジメント」を磨くのに必要なことをいくつか考えてみたい。
 
① 将来の夢・志を明確に描くこと
② 成果が出るまでやり続ける耐久力
③ その時々に求められる集中力
④ 喜怒哀楽の感情とうまく付き合うこと
⑤ キャリア形成に必要な主体的なプランニング作成力
 
   最近、ワタミの創業者である渡邉美樹さんと、デザイナーのコシノジュンコさんのお二人の講演を聴く機会を得たが、畑は違うが共通して言えることは、お二人とも「セルフマネジメント」に非常に長けている人だという印象を受けた。
 
   今秋に開催される“NN構想の会(第23回)”まで、まだ時間があるが、多くの支持団体や関係者の方々の協力を得て、これからの経営環境の中で問われるであろう、「セルフマネジメント」について、じっくりと考える時間と空間を提供できる二日間にしたいと考えている。
 
   皆様からもアイデアや助言があれば、ぜひ事務局へご一報ください!
 

今週の考える言葉「徳」

考える言葉


   久しぶりに、ワタミの渡邉美樹氏の講演(MAPサロン主催)を聴く機会を得た。
 
   いつものことながら、氏の志の高さとその実行力に感服させられながら聴き入ってしまった。
 
   『withコロナ時代を生き抜く経営とは?』というテーマで90分間、持論を熱く語ってくれた。一言でいうと、どんなに苦しい状況下でも、夢・志を高く持って、やり続けることの大切さを、さわやかな口調で語って頂いたと思う。
 
   今回、氏の講演を聴きながら、以前に読んだ『論語と算盤』(渋沢栄一著)の内容が思い浮かんだ。帰宅し、書棚から本を取り出して読んでみると、符合することが多々あり、改めて氏の凄さを確信した。
 
   その凄さとは、学んだことを即実践し、自らの血肉にしているところだと思う。
 
   『論語と算盤』は、折に触れて何度も読み直している本の一つであるが、少し内容について触れてみたい。
 
   『論語と算盤』は一言でいうと、「道理と事実と利益は必ず一致するもの」であることを前提に、渋沢栄一の信条とするところを語り綴ったものであろう。
 
   「モノの豊かさとは、大きな欲望を抱いて経済活動を行ってやろうという気概がなければ、進展していかないものだ」という。
 
   ゆえに、「実業とは、多くの人に、モノが行きわたるようにするなりわいなのだ」という。そして、「国の富をなす根源とは何かといえば、社会の基本的な道徳を基盤とした正しい素性の富なのだ」と述べている。
 
   この考え方をベースに、『論語』と『算盤』というかけ離れたものを統合させたのが『論語と算盤』という思想だったのであろう。
 
   資本主義は、利潤追求という欲望をエンジンとして前に進んでいく一面がある。しかし、そのエンジンはしばしば暴走し、大きな惨事を引き起こしていく。まさに、日本のバブル期がそうであった。
 
   だからこそ渋沢は、その暴走に歯止めをかける枠組みが必要だと考えたのである。その手段が『論語』の教えであったのだ。
 
   事業の存続・発展には、利潤の追求は欠かせないものだ。しかし、持続的な成長を成し遂げるには、もう一つの要件が必要だ。それが、“徳”を積むという習慣であると考える。
 
   渡邉氏は、それを、自分の本分を見極め、夢・志を立て、その実現のために覚悟を決めるのが唯一の策だと熱く語っている。
 

今週の考える言葉「伝える力」

考える言葉

伝える力

   書棚の整理をしていると、もう数年前に購入していたものだが、『東大物理学者が教える「伝える力」の鍛え方』(上田正仁 著)という文庫本が目に止まった。
 
   恐らく移動中の機内で読んだのだろう・・・。読んだ形跡はあるのだが、内容が定かでなかったので読み直してみると、“伝える力”を鍛えることが人生をより深く生きることにつながり、いかに有用であるかを論理的に述べてあったので紹介したい。
 
   著者は以前、『「考える力」の鍛え方』についても本を出しているのだが、両者の違いについて、「考える」ことは自己完結できるのだが、「伝える」という行為は相手の存在が不可欠であることだ、と述べている。
 
   その違いをしっかり認識したうえで、“伝える力”を考える必要がある。つまり、「伝える」という行為は、伝えたい内容が他者によく理解されることが目的であり、大前提なのだ。
 
   それを踏まえた上で、“伝える力”には次の3段階のレベルがあるという。
 
 ① レベル1・・・「用事が足りる伝え方」(事実・用件・伝言など、マニュアル通りに伝えられるレベル)
 ② レベル2・・・「聞く気にさせる伝え方」(プレゼンテーション、意志表示など、考える力が必要なレベル)
 ③ レベル3・・・「人を動かす伝え方」(交渉など、創造力が必要なレベル)
 
   そして、最後に、レベルでは測れない永遠の課題として、「人を育てる伝え方」(教育、子育て、部下の指導など)にまで言及している。
 
   「考える力」を鍛えるカギは、自己完結できるので、自ら課題を見つけ、解決に至るまで諦めない人間力が問われる。
 
   一方、今回のテーマである“伝える力”の基本は、次のとおりである。
 
   先ず、最初に話の幹を伝え、枝葉は可能な限りきり落とすことと、それを相手の立場に立って伝える工夫にあるだろう。
 
   そのためには、
 ① 何を伝えるべきかを立ち止まって考えること。
 ② 相手の立場に立って考えること。
 ③ そして、それを自分自身の言葉で伝えること。
 
   以上3つのポイントを大切にしなければならないと考える。
 
   繰り返しになるが、“伝える力”を鍛えることは、ただ一つの正解を目指すスキルを学ぶことではなく、自分自身を見つめ直し、相手の立場に思いをはせる「人間力を養うことであると考える。
 

今週の考える言葉「読書」

考える言葉

読書

   多忙な日々を送っている現代人が、どうやって勉強の時間を作り出せばいいのか。
 
   そして、ようやく作り出した貴重な時間を、どのように使っていけばいいのか。
 
   最近読んだ、『時間がない人が学び続けるための知的インプット術』(三輪裕範 著)という本は、その点について、次の3つのポイントから解説してある良書である。
 
 ① 時間のつくり方
 ② 読むべき本の選び方
 ③ 新聞・雑誌の読み方
 
   今回は、②の「読むべき本の選び方」、つまり“読書”の効用について考えてみたい。
 
   著者は、「“読書”は勉強の王道」であるとし、その“読書”の目的は次の3点にあると述べている。
 
 ① 教養を深め人格を陶冶するため
 ② 新しい知識や情報を手に入れるため
 ③ 趣味や娯楽のため
 
   人から聞かれると、「趣味は、“読書”と旅行です」とオーム返しのように応えていたが、「勉強の王道」としての“読書”を、真の意味で趣味だと言えるようになったのは、学生の頃(21歳)、ある人との出会いがきっかけだったといえる
お金に余裕ができると、仲間たちとよく飲みに行った下宿先近くのスナックがあった。
 
   そこで、たまたま隣り合わせになったサラリーマン風の社会人客と、“読書”談議になったことがあった。
 
   「若いときの“読書”は、そのまま血肉となり人格形成に役立つから、できるだけたくさん読んだ方がいいよ」とアドバイスをもらったで、先輩の場合はどうなのかと聞くと、「この歳になると、知識は増えるけど、もう自分の血肉にはならない。でも、“読書”をした分だけいろいろな価値観を知ることができるので、付き合っている相手の事を良く理解できるようにはなる」と・・・。
 
   “読書”は、自己成長のためだけではなく、相手をよく理解するためにも大切な行為だということを、その時に気づかされたと思っている。そして、その時以来、「趣味は、読書です!」と確信を持っていえるようになったと思う。
 
   それと同時に、“読書”に対する心構えが変わったように思う。
 
   まず、本の選び方が変わった。というよりは、選ぶジャンルの幅ができたようだ。
 
   つまり、読書の目的が、③の趣味や娯楽というよりも、①と②の領域の本を選び、“読書”を勤しむようになったと思う。
 

今週の考える言葉「VRIO」

考える言葉

VRIO

   経営戦略のフレームワークに“VRIO”(ブリオ)分析というものがある。1991年のジェイ・B・バーニー(ユタ大学経営大学院教授)が提唱したフレームワークである。
 
   次の4つの頭文字を取ったもので、企業の経営資源の競争上の有効性を示すものである。
 
①Value(バリュー):経済的価値(顧客、社会)
②Rarity(レアリティ):希少性(他社の追随が困難)
③Inimitability(インイミテイビリティ):模倣困難性(老舗など)
④Organization(オーガニゼーション):組織(統合的な組織力)
 
   “VRIO分析”は、①~④の順に評価を行っていく。
 
   4つの項目すべてが、Yesであれば「持続的な競争優位」とみなされる。
 
   つまり、経営資源を最大限に活用できていると考えられる。そして、希少で模倣されにくい高価値の経営資産を有しており、そのフルパワーを引き出す組織が構築されていると、評価できるということだ。
 
   一方、すべてがNoであれば、「競争劣位」と判定される。
 
   つまり、企業が有している経営資源に価値すら見出せず、組織力においても他社との競争力がないという判定になるため、最悪の場合、事業存続の要否も考えたほうがいいだろう。
 
   “経営戦略”(management strategy)とは、企業において、その事業体が経営目的を達成できるようにするための方策全般のことである。
 
   その経営戦略を策定する場合において、その企業独自の強みや弱みについて分析するスキームとして、“VRIO”分析は極めて有効な手段として体系化されたものだという。
 
   IG会計グループで毎月、定期的に開催している『将軍の日』(中期五か年計画策定)は、企業の戦略を「考える一日」として、次のような手順で展開している。
 
①「自社分析」~自分を正しく知る
②「経営理念」~熱意と信念を持つ
③「5ヵ年数値計画」~前向きな数値を持つ
 
   そのすべてのプロセスにおいて、基本的には“VRIO”的な思考を行いながら、五年後のあるべき姿を描くようにしているのだが、今後はもっと“VRIO”という概念を意識的に前面に出して展開すると、より一層フレームワークが明確になり、戦略に対する問題意識が高まるのではないだろうかと考える。
 

今週の考える言葉「良馬」

考える言葉

良馬

   「良馬はうしろの草を喰わず」という中国の諺がある。
 
   「よい馬は、わざわざあともどりして、自分の足で踏んでしまった草は、けっして食べようとはしない。目の前にある新鮮な草を食べるために進んでいく」。
 
   つまり、過去にこだわっていたのでは、いつまでも前進できない。過去は過去、反省の材料にするのはよいが、あとはあっさり思い切って、未来に向かって努力していかなければならないという意味である。
 
   過去を振り返ってみると、「人生あきらめが肝心だ」と諭されたこともあったが、逆に「何事もあきらめてはいけない。道は開ける」と激励されたこともあった。どちらが真実なのかというと、どちらも正しかったように思う。
 
   「あきらめが肝心」というのは、「物事に執着しすぎるな」という戒めであり、「あきらめてはいけない」というのは、「物事を途中でほっぽり出すな」という戒めなのだ。
 
   過ぎ去ったことは、くよくよ思い煩っても仕方がない。きっぱりとあきらめてしまう態度が人生には必要であろう。
 
   だが、少しの反省もなく、その原因を何も考えずにあきらめるのはどうだろうか。あきらめも肝心だが、過去を振り返る余裕も欲しいところである。
  
   やはり、何事もそうであるが、その時々の臨機応変の対応こそが求められるのであろう。
 
   助言する人も、その当たりの状況判断をちゃんとなすべきだと思うが、もっと肝心なのは自分自身の決断である。
 
   中国の諺には、「千里の馬と伯楽」「塞翁が馬」など“良馬”に関わる話が出てくることが多い。古代中国のときから、人間と馬の関わりが歴史の一端を担っていたのだろう思う。
 
   さて、“良馬”に話を戻そう。
 
   「良馬はうしろの草を喰わず」という中国の諺に気を惹かれたのかというと、未来に向かって努力をしていかなければならないのに、それを怠ったとき、今までおこなってきた過去の努力(成果)で自己正当化してはならないと思っているからだ。
 
   たとえ、過去に優れた努力をやってきたとしても、それを未来に向かってしなければならない努力と相殺勘定にしてはならないと思うからだ。
 
   掲げる経営理念は永遠のものであり、達成すべきビジョンはその先にあるビジョンを達成するために描かれなければならないのである。
 
   IG式目標管理は、“良馬”として生きるためのシステムである。
 

今週の考える言葉「耳学問」

考える言葉

耳学問

   「経営者は“耳学問”の大家になれ」(『経営者を育てるアドラーの教え』岩井俊憲 著)という言葉がある。
 
   “耳学問”とは、若い頃からよく耳にした言葉である。“耳学問”の大家になるということは、耳がいつも開かれているということだ。読書をし、学校で受講するだけではなく、人の話をよく聴くことも学問だということだ。
 
   人には二種類あるとよく言われる。一つは「話し上手」で、もう一つは「聴き上手」だ。自分にとってどちらが得かというと、もちろん後者の聴き上手である。
 
   考えてみると、人は話をしてるときは、自分の知っていること(情報)を場に提供していることになるが、聴いているときはその逆である。他人の考えや情報を得ていることになる。
 
   “耳学問”の大家、つまり「聴き上手」には、次のようなメリットがあるという。
 
① 情報が豊かになる
② 確実に人に好かれる
③ 相手への理解が深まる
④ 部下がやる気を出す
 
   よく聴く人は、“耳学問”の大家になれるし、人に好かれるし、相手の問題解決の支援者になれるのだという。
 
   故・松下幸之助さんといえば、まさに“耳学問”の大家だったという。毎日が多忙をきわめる日々だったというが、部下たちの意見をテープレコーダーに吹き込んでもらい、車内や寝室などでも聴いていたという。
 
   アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの墓に刻んである、次の墓碑銘の言葉も有名である。
 
「己より賢きものを近づける術を知りたる者、ここに眠れり」。
 
    経営者はオールマイティである必要はない。部下の話をよく聴くことによって信頼され、人を動かすことができればいいのだ。
 
   帝王学の教科書といわれている『貞観政要』に出てくる唐の太宗のように、昔から優れたリーダーは、自分に諫言してくれる側近を置いていたという。今日、事業承継がさかんに言われているが、創業者から事業を引き継ぐ立場にある後継者にとって、“聴き上手”であることは自分の強みになりそうだ。
 
   また、今日の不透明かつ多様化した時代環境において、多くのことに対してスピード感をもって学ぶためにも、“耳学問”の大家でありたいと思う。
 

今週の考える言葉「心構え」

考える言葉

心構え

   「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず」 徳川家康の遺訓として有名な言葉である。
 
   その人生の重荷を半分にする方法があるという。その方法とは何だろうか?
 
   「天は自ら助くる者を助く」という言葉で有名な『自助論』(Self‐Help)の著者であるサミュエル・スマイルズ(S・Smiles、1812年12月23日生れで、英国の作家、医者)が書いた書物の一つに、『向上心』(Character)という名著がある。
  
   これも、書棚を整理しているときに、目に留まり、再読した本の一冊である。
 
   この本の一節に、「われわれには意志と行動の自由がある」という文章がある。この自由をどう使うか、つまり、“心構え”次第で、その人の人生は良くも悪くも決まるというのだ。
 
   「物事の明るい面を見るか、暗い面を見るか、われわれは自分で選ぶことができる」からである。人生は自分が選んだとおりに“姿”を変えてくれる。「この“心構え”が人生の重荷を半分にする」のだという。
 
   小生は、自分を楽観主義者だというつもりはないが、どちらかと言うと、楽観的に物事を考えるタイプである。
 
   「ピンチはチャンスだ!」と考えるのも、そうだ。これは、小さい頃、野球にはまっていたときに身についた習慣だと思う。不思議と、ピンチを乗り越えたあとに、必ずといってよいほどチャンスがやってくると経験から得たものであろう。
 
   なぜ、ピンチのあとには必ずチャンスが訪れるのか?今だと、はっきりと言える。それは、“心構え”が変わったのである。つまり、「今度は俺たちがチャンスを活かす番だ!」と、気分が高まってきたからである。
 
   これは、野球に限らず、チームプレーを行うスポーツをやった人であれば誰もが経験したことがあると思う。チームでやっていると、そのムードの高まり方が全然違うのである。
 
   仕事においても同じことがいえる。個人プレーのときよりも組織プレーで仕事をしているときが大きな成果を得られるのも、ムードの高まりにシナジー効果が生じているからだと思う。
 
   人生は、その人の“心構え”次第だという。但し、その“心構え”を支え、高めてくれるのは、同じ志を持って一緒に仕事をしている仲間たちであることに相違ない。
 
   そう考えると、職場環境はその人の“心構え”に大きな影響を与えているのだと思う。
 

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