5月の税務カレンダー
税務カレンダー


無為のリスク
最近、気になる言葉の一つにピーター・F・ドラッカーが示唆している“無為のリスク”がある。
ドラッカーは次のように述べている。
「事業においては、リスクを最小にすべく努めなければならない。だがリスクを避けることにとらわれるならば、結局は最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち“無為のリスク”を負う」(『創造する経営者』)。
“無為のリスク”とは、未来や機会に挑戦しないリスクをいう。
「現状維持は衰退である」と言われるほど変化の激しい今日、誰しもが変化というリスクから逃れることはできない。だがしかし、傍観者である人が意外と多いのではないかと危惧する。
「何もしないということは、環境の変化に身を任せ、自ら陳腐化させられる道を選択しているのに等しい」という。つまり、結果として、不合理で最大のリスクを背負うことになると指摘している。
そのためにも、ドラッカーは、意思決定に伴う“リスク”の性格を見極めるべきだとして、4つの“リスク”に分類している。
①「負うべきリスク」
事業の本質に付随する“リスク”で、携っている以上回避できない“リスク”。
②「負えるリスク」
機会の追求に失敗しても、企業の存続に影響がないレベルの“リスク”。
③「負えないリスク」
負える“リスク”の反対のもの。他に、成功を利用することができない“リスク”。
④「負わないことによるリスク」
無為のリスクの典型。革新的な機会を失い、自らを陳腐化させてしまう“リスク”。
トップ経営者の本質は、組織の存続と発展のために「未来や機会に挑戦することだ」と考える。故に、トップの意思決定には不確実性に伴うリスクがつねに存在しているといっても決して過言ではない。
「より大きなリスクを負担できるようにすることこそ、企業家としての成果を向上させる唯一の方法である」というドラッカーの金言を肝に銘じておきたい。
そのために必要不可欠ものが利益の蓄積である。そして、その利益を得るためにはリスクを避けては通れないのである。
“無為のリスク”とは、「ぬるま湯のカエル」のようなものだと、心得ておきたい。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
選択と集中
世の中には、仕事や勉強ができる人とそうでない人が存在する。
「その差はどこから生じるのか?」と問われると、昔から、それは費やした時間の問題ではなく、“集中力”の差であるとよく聞かされたものである。
現代社会最高の哲人の一人と称されたP・F・ドラッカーも“集中力”について、次のように述べている。
「成果をあげるための秘訣を一つ挙げるならば、それは“集中”である」と…。
確かに、自らの体験からいっても、仕事や勉強、読書、また遊びにおいてもそうだが、無我夢中になっていたときは、気づかないうちにあっという間に時間が過ぎていて、我に返ったときには、なんとも言えない充実感に満たされていたことがある。
さて、今回のテーマである“選択と集中”について考えてみたい。
ドラッカーが、マネジメントにおいて提唱している“選択と集中”とは、経営戦略を立てる際に欠くことのできない手法のことである。
一般的にいう「集中」とは集中力の意味で使われることが多いが、マネジメントでいう“選択と集中”は、あるものを一つ選び(コア事業)、そこに経営資源を“集中”投入することをいう。
二つの“集中”の違いは、「時間の長さ」である。前者の“集中”は多くが瞬間的で、長くてもせいぜい一日。だが、後者の“集中”は、持続的である。
もちろん、ドラッカーがいう“選択と集中”での「集中」の意味は、後者、つまり一つのことを継続してやり続けるという意味である。
“選択と集中”という考え方で、限りある経営資源を有効活用するときのポイントは二つあるという。
① 第一は、捨てること。
“集中”とは、多くの可能性を捨てることでもあり、あえて選ばないという勇気が必要とされるのである。
② 第二は、任せること。
人に任せるということは、自分にしかできない仕事だけが残り、それを極めることで卓越性が生まれることになる。ところが、人に任せることに不安をもつ人がいて、任せる勇気が必要となる。
その意味で、選んで一つに決めることは勇気そのものであり、その一つをやり続けることは覚悟そのものだといえよう。まさに、ドラッカーがいうマネジメントにおける“選択と集中”とは、勇気と覚悟の結晶だと考える。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
GDP
日本経済の長期低迷が言われてから久しい。
「失われた10年」が20年となり、今や30年を過ぎた。日本はこれから「失われた40年あるいは50年」を歩きはじめるのではないかという経済評論家もいる。
この30年で日本はどんな変化を遂げたのだろうか?次の主な統計上の数字を見てみよう。
①日経平均株価…3万8000円台から2万9000円台へ。
②ドル円相場…1ドル=140円台から120円台へ。
③名目GDP…462兆円(1990年度)から553兆円(2021年度)へ。
④一人あたりの名目GDP…342万円から441万円へ。
⑤人口…1億2325万人から1億2618万人へ。
⑥政府債務…250兆円から1200兆円へ。(GDPの2倍超)
⑦企業の内部留保…163兆円から463兆円へ。
そこで注目したいのはGDP…。GDPとは、「Gross Domestic Product」の略で、「国内総生産」のことをいう。1年間など、一定期間内に国内で産出された付加価値の総額で、国の経済活動状況を示している。
名目GDP(553兆円)は、中国に抜かれたものの世界で第3位ある。問題は、一人あたりの名目DGP(441万円)で、世界で第25位である。つまり、人口によって経済大国としての基盤が作られてきたことを意味していると言えよう。
考えてみると、戦後の工業化による日本の経済復興をベースで支えてきたのは、地方からの集団就職、若手の労働人口(低賃金)だったと言える。そして、終身雇用制と年功序列型賃金での安定した雇用体制であった。
しかし、少子高齢化など、世の中の構造がガラリと変わった以上、過去の成功体験は全く通用しないのが今の世の中である。
また、政府債務が250兆円から1200兆円と4倍強に増えている。恐らく、景気対策のために公共投資などに使われたものと推測するが、思った以上の成果につながっていないことは明白である。
グローバル化した時代環境の中では、一国の経済政策だけでは大きな結果にはつながらないということだろう。
やはり、国を支えている国民、企業がみんなで自らイノベーションを断行し、自らの生産性を高めるために、知恵を絞り、努力をすることが大事だと考える。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
先見力
「先が読めない時代である」といわれるようになって久しい。
あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来予測が難しい状況にあることから、「VUCA時代」と呼ばれている。
さらに、新型コロナウィルスの流行という想定外の出来事もあり、一層不安を募らせている感がある。「100年に一度のパンデミックだ」とも言われているようだが、いよいよ、『断絶の時代』が到来したのだろう。
ドラッカーがいう『断絶の時代』とは、連続性、連綿性のない飛躍としての時代変化を言う。そんな時代環境の中で未来への予兆を、的確に読み取るのは、それなりの“先見力”が要求される。
では、その“先見力”を磨き、高めるためにはどうしたらいいのだろうか。「苦しいときのドラッカー頼み」といこう。
ドラッカーの鋭い“先見力”は、次の6つの源泉にあるという。
①マクロ(経済)とミクロ(経営)との両方に強いこと
言葉を変えていうと、全体と部分の関係性を見抜ける観察力があるかどうかであろう。
②歴史通であること
古今東西の歴史に対する該博な知識、教訓の読取りの甚深さがあること。
③グローバル的な思考であること
グローバルとは、「地球的な、全世界的な広がり」「普遍性を持った」という意味である。
④マルチ人間の特徴を存分に発揮すること
近視眼的ではなく、多角的な視野に立つことである。確かに、ドラッカーはジャーナリスト、投資銀行のエコノミスト、大学の教授など、多角的に闊歩している。
⑤あくなき統合への執念があること
統合への執念のためには、狭い視野に捉われず、大局観を養う必要がある。
⑥流行の中に不易を見抜けること
移りゆくものの中に、移りゆかざるものを観ることであろう。
見えにくい未来を観るための“先見力”・・・。過去の延長線上に未来がない乱世において、「分析予測型」の手法だけでは通用しないのである。未来を「洞察創造する」“先見力”が求められている。
ドラッカーはいう、「未来はすでに始まっている」と・・・。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
フィードバック分析
私たちは生きていく中で、様々な経験をする。
その経験を次の機会に生かすために必要な方法として、“フィードバック分析”がよく知られている。
その“フィードバック分析”について、ピーター・F・ドラッカーはその著作『プロフェッショナルの条件』の中で、次のように述べている。
「強みを知る方法は一つしかない。“フィードバック分析”である。何かをすると決めたならば、何を期待するかをただちに書きとめておく。9か月後、1年後に、その期待と実際の結果を照合する。私自身、これを50年続けている。そのたびに驚かされている。これを行うならば誰もが同じように驚かされる」と…。
IG会計グループでは、未来会計(=MAS監査)の実践を通して、自社の目標管理の徹底を行っている。そのプロセスである「仮説~実践~検証」において“フィードバック分析”の大切さは、身に染みてよく分かる。
“フィードバック分析”の効用としては、次のようなことがいえよう。
① 「強み」への集中
② 「強み」の培養
③ 知的傲慢の矯正
④ 成果の阻害要因を知る
⑤ 人への対し方を知る
⑥ できないことに気づく
⑦ できないことを捨てる
目標と実績の差異(ギャップ)の分析、つまり“フィードバック分析”によって、人や組織にとって何が強みであって何が不得手なのかを把握できる。そしてそこから、これから伸ばしていくものや補っていくものを把握し、改善・改革につなげていく。
これを継続的に行うことによって、成長し続けると同時に、成果をより大きなものとすることができるようになる。
“フィードバック分析”とは、究極のセルフマネジメントとにほかならない。着眼すべきは、自らの「強み」である。まさに、「汝自身を知れ」である。
IG会計グループでは、すべての企業経営者に未来会計の重要性を説き、経営計画の作成を勧めている。だが、その成果に対しては格差が生じている。その原因はどこにあるのだろうか?
いろいろ考えられるが、その一番の原因は“フィードバック分析”の良否にあると思う。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
劣後順位
IG会計グループでは、「仮説~実践~検証」のサイクルを徹底させるために月末・月初の二日間を「考える一日」と称し、各自の一ヵ月間の仕事ぶりを反省し、今後優先してやるべき仕事の棚卸を行っている。
これは、「IG式目標管理システム」を組織文化として根づかせるために必要な時間の確保でもある。そのため、この二日間には、日常業務を持ち込まないというコンセンサスが重要である。
業務日報において、日々の業務について、「どんな仕事に対して、どれだけの時間を費やしたか」、各自の時間の使い方の記録があるので、自分の仕事ぶりについて徹底分析できるようになっている。
まず、月末に予実の差異分析を行い、次月以降になすべき仕事の棚卸を行い、予定表を作成する。この予定表を作成する際の視点について、P・F・ドラッカーはさすがという指摘をしている。
ドラッカーは、「重要な仕事に集中するためには、まず仕事に“劣後順位”をつける必要がある」と説いている。“劣後順位”とは、成果がそれほど上がらない仕事、つまり「退けるべき仕事」の順位をつけることである。
われわれは、よく「効率的に仕事をするためには、優先順位をつけなさい」と指導をしたり、受けたりする。
ドラッカーは、手順が違うという。次の手順で行うべきだという。
① 優先順位をつける前に、まずは“劣後順位”をつける
② 仕事をふるいにかけて重要な物を残す
③ 残った仕事の中で優先順位をつける
ハッとさせられる指摘である。確かにその通りだと考える。
“劣後順位”をつけないまま、優先順位をつけても、根本的な時間の浪費は解決できないと思う。
“劣後順位”とは、「廃棄すべき勇気を持て!」というドラッカーの助言である。
われわれは、経験を積めば積むほど、仕事が増えて、それを抱え込んでしまう傾向にある。そして、時間がないと嘆く・・・。
“劣後順位”をつける知恵と勇気を持つと、時間という大切な経営資源を持てるようになる。そして、有意義な時間の使い方を学ぶようになる。
① 過去より未来を選ぶ。② 課題ではなく機会に着目する。そして③ 無難より変革を重視する。そんな時間の使い方をしたいと思う。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
人生100年時代
“少子高齢化”といえば、日本を含め先進国諸国において、出生率の低下による人口減少に伴う様々な問題が取り沙汰されることが多かったと思う。
例えば、生産労働力の減少に伴う経済成長率の低迷、年金制度の崩壊、医療費の高騰、医療・介護業界の人手不足、そして国力の低下など…。
2008年(1億2808万人)をピークに人口減少が始まった日本では、2021年度1億2610万人だった人口が2055年8993万人に減少すると見込まれており、今後の34年間で3600万以上減少することになる。
P・F・ドラッカーは、「未来予測は不確実性が高く、不可能である」と指摘しているが、「すでに起こった未来を探し、本業の外部変化を見よ」と述べている。“少子高齢化”に伴う人口減少は、まさに「すでに起こった未来」だといえよう。
今まで私たち企業人は、人口が増加することを前提にして戦略を立ててきたが、これからは「人口減少の戦略」に切り替える必要があるのだろう。
労働問題を解決する方法として、「大量移民の受け入れ」なども取り沙汰されているが、民族や文化、宗教の違いなどから生じる社会問題などもあり、具体的な対策にまで及んでいないようだ。
そして、最近よく耳にするのが「第二の人生」の問題…。“人生100年時代”だといわれているが、定年退職後をいかに過ごすか?が課題になるという。
定年後10~15年だった余生が、“人生100年時代”には20~30年に延びるわけだ。今まで働いてきた以上の自由な時間がある。単に余生と割り切るには勿体ない…。
これについて、ドラッカーは「定年になったときに抜け殻にならないために、セカンド・キャリアへの準備を現役の時にしておくように」と、次の3つの方法をあげている。
① キャリアの転換をする
② 「第二の仕事」を持つ
③ 篤志(とくし)家になること
しかし、ドラッカーは「誰でも成功するわけではない」という。第二の人生で全員が成功することはあり得ないのだ。
能力やスキルや資格の取得だけではなく、成功するには人間としての器を磨く、つまりものの考え方、価値観を高める努力も必要だという。
“人生100年時代”、第二の人生を豊かにするには、世のため人のために尽くすという、ボランティア精神(社会貢献など)が問われるのではないだろうか。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」
自分らしさ
自分の人生、誰もが“自分らしく”生きたいと願っているのではないだろうか?
そう問われると恐らく、誰もが「そうですね、“自分らしく”生きたいですね・・・」と答えるに違いない。
それにも関わらず、“自分らしさ”を損なった行為をしてしまう・・・。その原因は、虚栄心であったり、自己防衛本能であったりで、自己欺瞞的な態度に陥ってしまうからであろう。つまり、“自分らしさ”を損なってしまう大きな要因は自己欺瞞だといえよう。
自己欺瞞とは、自分の本心に嘘をついて、無理に自分を正当化する行為である。
欺瞞とは「あざむく」=嘘をつく・反するという意味であるが、それを自己に行うと、自己欺瞞になる。まさに、自滅行為そのものである。
自己欺瞞に陥った人の心理的な特徴として次のような点が指摘されている。
① 自覚がない
② 弱い自分を認めたくない
③ 自分を認めてもらいたい(承認欲求)
④ 他人より自分が優位でないと気が済まない
⑤ 強迫観念が強い
⑥ 思い込みが激しい
自己欺瞞に陥る人には上記のような特徴が見られるのであるが、一番の特徴は「自覚がない」ことであろう。つまり、無自覚のまま、自己欺瞞に陥っていることが多い。
“自分らしさ”というが、どんな人でも、他人から見た自分と、自分自身の評価には大きな隔たりがあるということを知っていく必要があると思う。
自分が他人に対してどんな印象を与えているかを常に自省する必要があるが、同時に他人からどう思われているかを知ることも大事だ。だが、自分にとって耳障りが悪いことには素直になれないものだ。
そこで大切なことが、「有意義な人生を送りたければ、人生の師を持て!」という言葉である。どんなに耳障りが悪いことでも、真に尊敬するその人のいうことであれば素直に、謙虚になれるような人・・・。
技術や経験などの能力的な側面ではなく、自分の人生の尺度そのもの、価値観のレベルを高めてくれる師匠である。
小生が考える“自分らしさ”とは、自他非分離の統合の価値観をベースに、自分の強みを十分に活かせる生き方ができたときの自分であると考えたい。今年のテーマである「ハイブリット思考」とは、そんな“自分らしさ”の組合せから生まれると思う。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」