古田会計事務所

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今週の考える言葉「伝える力」

考える言葉

伝える力

   書棚の整理をしていると、もう数年前に購入していたものだが、『東大物理学者が教える「伝える力」の鍛え方』(上田正仁 著)という文庫本が目に止まった。
 
   恐らく移動中の機内で読んだのだろう・・・。読んだ形跡はあるのだが、内容が定かでなかったので読み直してみると、“伝える力”を鍛えることが人生をより深く生きることにつながり、いかに有用であるかを論理的に述べてあったので紹介したい。
 
   著者は以前、『「考える力」の鍛え方』についても本を出しているのだが、両者の違いについて、「考える」ことは自己完結できるのだが、「伝える」という行為は相手の存在が不可欠であることだ、と述べている。
 
   その違いをしっかり認識したうえで、“伝える力”を考える必要がある。つまり、「伝える」という行為は、伝えたい内容が他者によく理解されることが目的であり、大前提なのだ。
 
   それを踏まえた上で、“伝える力”には次の3段階のレベルがあるという。
 
 ① レベル1・・・「用事が足りる伝え方」(事実・用件・伝言など、マニュアル通りに伝えられるレベル)
 ② レベル2・・・「聞く気にさせる伝え方」(プレゼンテーション、意志表示など、考える力が必要なレベル)
 ③ レベル3・・・「人を動かす伝え方」(交渉など、創造力が必要なレベル)
 
   そして、最後に、レベルでは測れない永遠の課題として、「人を育てる伝え方」(教育、子育て、部下の指導など)にまで言及している。
 
   「考える力」を鍛えるカギは、自己完結できるので、自ら課題を見つけ、解決に至るまで諦めない人間力が問われる。
 
   一方、今回のテーマである“伝える力”の基本は、次のとおりである。
 
   先ず、最初に話の幹を伝え、枝葉は可能な限りきり落とすことと、それを相手の立場に立って伝える工夫にあるだろう。
 
   そのためには、
 ① 何を伝えるべきかを立ち止まって考えること。
 ② 相手の立場に立って考えること。
 ③ そして、それを自分自身の言葉で伝えること。
 
   以上3つのポイントを大切にしなければならないと考える。
 
   繰り返しになるが、“伝える力”を鍛えることは、ただ一つの正解を目指すスキルを学ぶことではなく、自分自身を見つめ直し、相手の立場に思いをはせる「人間力を養うことであると考える。
 

今週の考える言葉「読書」

考える言葉

読書

   多忙な日々を送っている現代人が、どうやって勉強の時間を作り出せばいいのか。
 
   そして、ようやく作り出した貴重な時間を、どのように使っていけばいいのか。
 
   最近読んだ、『時間がない人が学び続けるための知的インプット術』(三輪裕範 著)という本は、その点について、次の3つのポイントから解説してある良書である。
 
 ① 時間のつくり方
 ② 読むべき本の選び方
 ③ 新聞・雑誌の読み方
 
   今回は、②の「読むべき本の選び方」、つまり“読書”の効用について考えてみたい。
 
   著者は、「“読書”は勉強の王道」であるとし、その“読書”の目的は次の3点にあると述べている。
 
 ① 教養を深め人格を陶冶するため
 ② 新しい知識や情報を手に入れるため
 ③ 趣味や娯楽のため
 
   人から聞かれると、「趣味は、“読書”と旅行です」とオーム返しのように応えていたが、「勉強の王道」としての“読書”を、真の意味で趣味だと言えるようになったのは、学生の頃(21歳)、ある人との出会いがきっかけだったといえる
お金に余裕ができると、仲間たちとよく飲みに行った下宿先近くのスナックがあった。
 
   そこで、たまたま隣り合わせになったサラリーマン風の社会人客と、“読書”談議になったことがあった。
 
   「若いときの“読書”は、そのまま血肉となり人格形成に役立つから、できるだけたくさん読んだ方がいいよ」とアドバイスをもらったで、先輩の場合はどうなのかと聞くと、「この歳になると、知識は増えるけど、もう自分の血肉にはならない。でも、“読書”をした分だけいろいろな価値観を知ることができるので、付き合っている相手の事を良く理解できるようにはなる」と・・・。
 
   “読書”は、自己成長のためだけではなく、相手をよく理解するためにも大切な行為だということを、その時に気づかされたと思っている。そして、その時以来、「趣味は、読書です!」と確信を持っていえるようになったと思う。
 
   それと同時に、“読書”に対する心構えが変わったように思う。
 
   まず、本の選び方が変わった。というよりは、選ぶジャンルの幅ができたようだ。
 
   つまり、読書の目的が、③の趣味や娯楽というよりも、①と②の領域の本を選び、“読書”を勤しむようになったと思う。
 

今週の考える言葉「VRIO」

考える言葉

VRIO

   経営戦略のフレームワークに“VRIO”(ブリオ)分析というものがある。1991年のジェイ・B・バーニー(ユタ大学経営大学院教授)が提唱したフレームワークである。
 
   次の4つの頭文字を取ったもので、企業の経営資源の競争上の有効性を示すものである。
 
①Value(バリュー):経済的価値(顧客、社会)
②Rarity(レアリティ):希少性(他社の追随が困難)
③Inimitability(インイミテイビリティ):模倣困難性(老舗など)
④Organization(オーガニゼーション):組織(統合的な組織力)
 
   “VRIO分析”は、①~④の順に評価を行っていく。
 
   4つの項目すべてが、Yesであれば「持続的な競争優位」とみなされる。
 
   つまり、経営資源を最大限に活用できていると考えられる。そして、希少で模倣されにくい高価値の経営資産を有しており、そのフルパワーを引き出す組織が構築されていると、評価できるということだ。
 
   一方、すべてがNoであれば、「競争劣位」と判定される。
 
   つまり、企業が有している経営資源に価値すら見出せず、組織力においても他社との競争力がないという判定になるため、最悪の場合、事業存続の要否も考えたほうがいいだろう。
 
   “経営戦略”(management strategy)とは、企業において、その事業体が経営目的を達成できるようにするための方策全般のことである。
 
   その経営戦略を策定する場合において、その企業独自の強みや弱みについて分析するスキームとして、“VRIO”分析は極めて有効な手段として体系化されたものだという。
 
   IG会計グループで毎月、定期的に開催している『将軍の日』(中期五か年計画策定)は、企業の戦略を「考える一日」として、次のような手順で展開している。
 
①「自社分析」~自分を正しく知る
②「経営理念」~熱意と信念を持つ
③「5ヵ年数値計画」~前向きな数値を持つ
 
   そのすべてのプロセスにおいて、基本的には“VRIO”的な思考を行いながら、五年後のあるべき姿を描くようにしているのだが、今後はもっと“VRIO”という概念を意識的に前面に出して展開すると、より一層フレームワークが明確になり、戦略に対する問題意識が高まるのではないだろうかと考える。
 

今週の考える言葉「良馬」

考える言葉

良馬

   「良馬はうしろの草を喰わず」という中国の諺がある。
 
   「よい馬は、わざわざあともどりして、自分の足で踏んでしまった草は、けっして食べようとはしない。目の前にある新鮮な草を食べるために進んでいく」。
 
   つまり、過去にこだわっていたのでは、いつまでも前進できない。過去は過去、反省の材料にするのはよいが、あとはあっさり思い切って、未来に向かって努力していかなければならないという意味である。
 
   過去を振り返ってみると、「人生あきらめが肝心だ」と諭されたこともあったが、逆に「何事もあきらめてはいけない。道は開ける」と激励されたこともあった。どちらが真実なのかというと、どちらも正しかったように思う。
 
   「あきらめが肝心」というのは、「物事に執着しすぎるな」という戒めであり、「あきらめてはいけない」というのは、「物事を途中でほっぽり出すな」という戒めなのだ。
 
   過ぎ去ったことは、くよくよ思い煩っても仕方がない。きっぱりとあきらめてしまう態度が人生には必要であろう。
 
   だが、少しの反省もなく、その原因を何も考えずにあきらめるのはどうだろうか。あきらめも肝心だが、過去を振り返る余裕も欲しいところである。
  
   やはり、何事もそうであるが、その時々の臨機応変の対応こそが求められるのであろう。
 
   助言する人も、その当たりの状況判断をちゃんとなすべきだと思うが、もっと肝心なのは自分自身の決断である。
 
   中国の諺には、「千里の馬と伯楽」「塞翁が馬」など“良馬”に関わる話が出てくることが多い。古代中国のときから、人間と馬の関わりが歴史の一端を担っていたのだろう思う。
 
   さて、“良馬”に話を戻そう。
 
   「良馬はうしろの草を喰わず」という中国の諺に気を惹かれたのかというと、未来に向かって努力をしていかなければならないのに、それを怠ったとき、今までおこなってきた過去の努力(成果)で自己正当化してはならないと思っているからだ。
 
   たとえ、過去に優れた努力をやってきたとしても、それを未来に向かってしなければならない努力と相殺勘定にしてはならないと思うからだ。
 
   掲げる経営理念は永遠のものであり、達成すべきビジョンはその先にあるビジョンを達成するために描かれなければならないのである。
 
   IG式目標管理は、“良馬”として生きるためのシステムである。
 

今週の考える言葉「耳学問」

考える言葉

耳学問

   「経営者は“耳学問”の大家になれ」(『経営者を育てるアドラーの教え』岩井俊憲 著)という言葉がある。
 
   “耳学問”とは、若い頃からよく耳にした言葉である。“耳学問”の大家になるということは、耳がいつも開かれているということだ。読書をし、学校で受講するだけではなく、人の話をよく聴くことも学問だということだ。
 
   人には二種類あるとよく言われる。一つは「話し上手」で、もう一つは「聴き上手」だ。自分にとってどちらが得かというと、もちろん後者の聴き上手である。
 
   考えてみると、人は話をしてるときは、自分の知っていること(情報)を場に提供していることになるが、聴いているときはその逆である。他人の考えや情報を得ていることになる。
 
   “耳学問”の大家、つまり「聴き上手」には、次のようなメリットがあるという。
 
① 情報が豊かになる
② 確実に人に好かれる
③ 相手への理解が深まる
④ 部下がやる気を出す
 
   よく聴く人は、“耳学問”の大家になれるし、人に好かれるし、相手の問題解決の支援者になれるのだという。
 
   故・松下幸之助さんといえば、まさに“耳学問”の大家だったという。毎日が多忙をきわめる日々だったというが、部下たちの意見をテープレコーダーに吹き込んでもらい、車内や寝室などでも聴いていたという。
 
   アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの墓に刻んである、次の墓碑銘の言葉も有名である。
 
「己より賢きものを近づける術を知りたる者、ここに眠れり」。
 
    経営者はオールマイティである必要はない。部下の話をよく聴くことによって信頼され、人を動かすことができればいいのだ。
 
   帝王学の教科書といわれている『貞観政要』に出てくる唐の太宗のように、昔から優れたリーダーは、自分に諫言してくれる側近を置いていたという。今日、事業承継がさかんに言われているが、創業者から事業を引き継ぐ立場にある後継者にとって、“聴き上手”であることは自分の強みになりそうだ。
 
   また、今日の不透明かつ多様化した時代環境において、多くのことに対してスピード感をもって学ぶためにも、“耳学問”の大家でありたいと思う。
 

今週の考える言葉「心構え」

考える言葉

心構え

   「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず」 徳川家康の遺訓として有名な言葉である。
 
   その人生の重荷を半分にする方法があるという。その方法とは何だろうか?
 
   「天は自ら助くる者を助く」という言葉で有名な『自助論』(Self‐Help)の著者であるサミュエル・スマイルズ(S・Smiles、1812年12月23日生れで、英国の作家、医者)が書いた書物の一つに、『向上心』(Character)という名著がある。
  
   これも、書棚を整理しているときに、目に留まり、再読した本の一冊である。
 
   この本の一節に、「われわれには意志と行動の自由がある」という文章がある。この自由をどう使うか、つまり、“心構え”次第で、その人の人生は良くも悪くも決まるというのだ。
 
   「物事の明るい面を見るか、暗い面を見るか、われわれは自分で選ぶことができる」からである。人生は自分が選んだとおりに“姿”を変えてくれる。「この“心構え”が人生の重荷を半分にする」のだという。
 
   小生は、自分を楽観主義者だというつもりはないが、どちらかと言うと、楽観的に物事を考えるタイプである。
 
   「ピンチはチャンスだ!」と考えるのも、そうだ。これは、小さい頃、野球にはまっていたときに身についた習慣だと思う。不思議と、ピンチを乗り越えたあとに、必ずといってよいほどチャンスがやってくると経験から得たものであろう。
 
   なぜ、ピンチのあとには必ずチャンスが訪れるのか?今だと、はっきりと言える。それは、“心構え”が変わったのである。つまり、「今度は俺たちがチャンスを活かす番だ!」と、気分が高まってきたからである。
 
   これは、野球に限らず、チームプレーを行うスポーツをやった人であれば誰もが経験したことがあると思う。チームでやっていると、そのムードの高まり方が全然違うのである。
 
   仕事においても同じことがいえる。個人プレーのときよりも組織プレーで仕事をしているときが大きな成果を得られるのも、ムードの高まりにシナジー効果が生じているからだと思う。
 
   人生は、その人の“心構え”次第だという。但し、その“心構え”を支え、高めてくれるのは、同じ志を持って一緒に仕事をしている仲間たちであることに相違ない。
 
   そう考えると、職場環境はその人の“心構え”に大きな影響を与えているのだと思う。
 

今週の考える言葉「運命共同体」

考える言葉

運命共同体

   何かをなそうとするとき、その目的に共感し、集まった仲間たちのことを“運命共同体”と呼んだりする。つまり、運命をともにすることを相互に了解し合った複数の個人または団体をいう。
 
   “運命共同体”、ある本を読んでいたときに、ふと浮かんだ言葉である・・・。小生は、明確な目的意識を持って集まっている組織や団体はすべて“運命共同体”であると思っているが、自覚している人がどれほどいるだろうか?
 
   “運命共同体”をネットで調べてみると、「一蓮托生、不即不離、道連れ、腐れ縁、共存共栄」などの言葉が出てきた。本来、運命をともにすることとは、そんな感じなんだろうと思う。
 
   もっともグローバルな視点で捉えると、地球という場を共有している人類はみな“運命共同体”の関係にあるといえよう。
 
   その共有の場である地球に、世界的人口の増加や科学の発達に伴い、私たちの自由で気ままな行動を受容する限界が見えてきているという。前回においても述べたように、「採る、使う、捨てる」という使い捨ての考え方の限界である。
 
   健全な“運命共同体”を持続可能にしていくには、ネットワーク(関係性)とシステム(全体と部分)という考え方をベースに、次の3つの視点を忘れてはならない。
 
①過去~現在~未来(後世のニーズ)という時間の流れ
②組織の重要性(相互依存関係にあること)
③環境と変化への適応(新しい発想)
 
1.IG会計グループの基本理念は、まさに“運命共同体”的思考をベースに掲げたものである。
2.業界において常に先駆的役割を担い、品質の高い知的サービスを通じて、企業の繁栄に貢献する
3.われわれ相互の主体的価値を尊重し、互いに切磋琢磨する
 
   全人類の自己実現のために衆知を集めるキーワードは、“運命共同体”の一員として、常に先駆的役割を担うという勇気と責任を持つこと。メンバー1人ひとりが主体性を発揮し、切磋琢磨する関係性を保ち続けること。そして、世の中の進化・向上のために貢献できる人材として成長し続ける気概を持ちたいと思う。
 
   “運命共同体”意識を培い、出逢いの場を共有できた喜びを実感できるようなネットワークの輪を広げていけたらと思う。
 

今週の考える言葉「競争優位」

考える言葉

競争優位

   最近読み直している本に、『持続可能な未来へ』(ピーター・センゲ)がある。2010年初版なので、もう十数年経つが、何度読み返しても新たな気づきを提供してくれる良書である。
 
   工業化に象徴される20世紀の経済成長は、環境汚染や社会問題(貧富の差など)などの副作用をもたらした。まさに21世紀は、その繁栄の代償を払わざるを得ない状況にあるという。
 
   本書の問題提起は、繁栄の代償にどう対処し、個人と組織は「持続可能な未来を築くために」何をなすべきかを問うているのだ。
 
   そのためにまず、私たちに求められているのは、経済(すなわち、利益)を最優先する従来の考え方、価値観を改めることである。つまり、「採る、使う、捨てる」という使い捨ての考え方からの脱却である。
 
   世の中の価値観の変化は、「持続可能な未来のため」には、地球環境こそが何よりも大きな存在であり、そのなかに人間社会がある。そして、経済や産業などは、さらにずっと小さな存在にすぎず、環境と社会、両方の一部をなしている。
 
   私たちは「経済は自然の100%子会社のようなものであって、決してその逆ではない」という事実に目覚めるべきだという。
 
   確かに、社会が安定して活力がみなぎっていないかぎり、経済の健全性はあり得ないし、ビジネスもうまくいくはずがない。
 
   世の中の変化を踏まえ、そこに機会を見ることができる企業が、いつの時代にもリーダーシップを発揮し、“競争優位”に立ち、イノベーションや成長を左右してきた事実がある。
 
   今や、繁栄の代償である環境問題や社会問題にきちんと向き合うことが、私たちにとって“競争優位”を左右するテーマになっているのではないだろうか。
 
   そして、環境や社会は、「使い捨て」ではなく「循環型経済」の確立を求めているのである。すでに、多くの優良企業は、この考え方を重視し、自社の企業イメージ、ブランド力を高めるような戦略を描き、チャレンジしているという。
 
   「循環型経済」に取り組む真摯な姿勢が、競争優位を左右するというのだが、その仕組みを構築するには次の4つのポイント押さえる必要がある。
 
① 循環視点を持つこと(廃棄を前提にしない)、② 回収網を構築すること、
③ 他者との連携・協業を進めること、④ 社内外へ発信を行うこと。
 
   「持続可能な未来へ」の取り組みが、“競争優位”に働くのであれば一石二鳥である。
 

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