考える言葉
聞け、話すな
自宅の書棚を整理していると、P・F・ドラッカー自身の著作とドラッカーに関連する本を合わせると100冊ほどの本があった。月に4~5冊ほど再読し、各要約文を作成したとしても2~3年はかかりそうだ…。新年早々、余暇の楽しみの一つができて、少し嬉しい気分である。
早速だが、『経営者の条件』の冒頭に、成果をあげる人たちが身につけている習慣として、次の「8つの習慣」を紹介している。
① なされるべきことを考える (優先順位をつけ、一点集中)
② 組織のことを考える (組織人としての自覚)
③ アクションプランをつくる (実行する)
④ 意思決定を行う (周知徹底させること)
⑤ コミュニケーションを行う (情報ニーズ)
⑥ 機会に焦点を合わせる (変化はチャンス)
⑦ 会議の生産性をあげる (事前に目的を明らかにすること)
⑧ 「私」でなく「われわれは」を考える (自分の都合に捉われない)
「彼らは、これら8つのうち最初の2つによって知るべきことを知り、次の5つによって成果をあげた。残りの一つによって組織内の全員に責任感をもたらした」という。
そして、これら「8つの習慣」にもう一つおまけを加えたいといって、“「聞け、話すな」”を掲げている。
習慣とは、天賦の才能ではない。「反復によって習得し、少ない心的努力で繰り返せる、固定した行動のこと」(広辞苑)である。
目標管理に基づいて行動計画書を作成し、PDCAサイクルを繰り返し、繰り返し実行することによって、「8つの習慣」は身につくものであると確信している。
ここに掲げる「8つの習慣」はいずれも納得させられる内容ばかりであったが、最もハッとさせられたのは、おまけで加えたという“「聞け、話すな」”という習慣であった。
職業柄、聞かれたことに答えること、講演を頼まれて話すことに慣れてしまい、回答力や講演力を鍛える努力ばかりに気がいっていたのだろう。“「聞け、話すな」”という言葉に触れて、ハッとさせられた若かりし頃のことを、今でも思い出す…。
磨くべきは回答力ではなく、質問力だと気付かされ、質問力に関する本を数冊買ってきて読み漁った。そして、話すことを控え、まず聞くことを心がけるようにした。効果はテキメンだった。相手の真意が理解できるようになったし、相手もまた、こちらの話しをよく聞いてくれるようになった。ホントに、“「聞け、話すな!」”である。
考える言葉
ストレッチ目標
先週末(13日)は、IG会計グループ『行動計画書』の発表会だった。
今年は、中期5ヵ年計画『Breakthorough10』(2020~2024年)の最終年度となる。そのせいもあるのだろう、各部門及び個人の目標はいずれも、かなりストレッチの効いたものになっている。聴いていて、とてもうれしい気分にさせられた…。
「ストレッチは人を成長させる」と考え、“ストレッチ目標”(Stretch targets energize)を提唱したのは、GEの最高経営責任者であったジャック・ウェルチ(1935~2020年)である。
“ストレッチ目標“とは、個人や組織において「背伸びして工夫することではじめて手が届く」ような難易度に設定された目標のことである。
ウェルチは、自分の能力の限界まで最大限の努力を重ね、さらにその先を目指すことに価値があると信じていた。不可能と思える目標も、達成しようと努力することで可能となることがあるし、たとえ目標が達成できなくとも、その目標を設定しなかった時よりもはるかによい結果に結びつく、と考えていた。
「星に届くまでストレッチせよ」が、それを象徴する言葉である。
この考え方に関しては、P・ドラッカーも同じ考え方をしていたようで次のような言葉を残している。
「多くを求めるならば、何も達成しない者と同じ程度の努力で、巨人にまで成長する」(『プロフェショナルの条件』)。
“ストレッチ目標”を設定する際のポイントとして次のような点が考えられる。
① 能力の見極め
② 個人に合わせた目標設定
③ 目標設定後のフォロー
④ ポジティブフィードバック
そして、“ストレッチ目標”を設定するメリットとしては、➀パフォーマンスの最大化、②達成感、③生産性の向上などがある。
今年度の基本方針である『逆境こそチャンス!~流れは必ず変わる』とは、まさに“ストレッチ目標”を掲げる絶好の機会だと考えている。
また、年齢や立場に関係なく、いつでも成長したいという欲求を持ち続けている以上はストレッチする機会がある。そのためにも、“ストレッチ目標”は誰にとっても大切なものだ。
今年一年もストレッチの効いた目標を掲げ、精進していきたいと考える。
考える言葉
継続学習
かつて「生涯学習(life‐long education)」の名のもとに、従来の学校教育中心の考え方を脱却し、社会人になってからも広く、長く、学習機会を持つことの重要性が盛んに言われるようになった時期があった。
理士という知的サービス業に関わっている者としては、新しい知識の習得は仕入れのようなものだから、専門書はもちろん一般書を読んだり、各種セミナーにも積極的に参加したり、継続的に学習をやり続けてきたつもりである。
だが、多くの社会人にとって、日常業務に追われ、夜のお付き合いもあるしで、帰宅してから机に向かい、新しいことを学ぶという時間がめっきり減った人が多いのではないだろうか。
P・F・ドラッカーは、「少年期や青年期に学んだことは、その後の人生においてそこから離陸すべきスタート台に過ぎなくなる」と述べ、“継続学習”や自己啓発の機会を持つことの重要性を説いている。
確かに、今の時代、AIの進化を始めとしてあまりに変化が激しく、せっかく学んで身につけた知識や経験がすぐに陳腐化してしまい、うかうかしていると時代に取り残されてしまうのも事実である。
では、このような時代環境の中で、私たちはどうすればいいのだろうか?ドラッカーは次の3つのこと挙げている。
① 日常生活の中に“継続学習”を組み込む
② 常により優れたことを行うように努める
③ 新しい仕事が要求するものは何かを考える
人生100年時代の到来がさかんに言われている。しかも、環境の変化が激しく、組織の寿命よりも人間の寿命の方が長い時代となる。
学校を卒業して企業に就職すれば、その後は終身雇用制によって定年まで安定した生活を送ることができるという制度は、すでに成り立たなくなっているのである。
また、ドラッカーは「教育は経験や知恵を与えることはできない」とし、「人は仕事を通して磨かれる」と述べている。
つまり、“継続学習”の最良の機会は仕事をする職場そのものにあるということである。共に働く者は、そのことを意識して協働行為を体系化していくべきだと考える。
IG会計グループでは、経営理念にも「互いに切磋琢磨する」ことを掲げ、“継続学習”の重要性を掲げて、「早朝勉強会」や月末・月初に「考える一日」を設けて、組織としても学習することを心がけている。
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