古田会計事務所

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今週の考える言葉「企業生命力」

考える言葉

企業生命力

   朝から書棚の整理をしていると、『企業生命力(The Living Company)』(アリー・デ・グース著)という本に目が止まった。もう20数年前に購入した本である。
 
   パラパラとめくってみると、至るところに赤線や書き込みがあり、当時に熟読した形跡がある。
 
   著者・アーリーがロイヤル・ダッチ・シェルに勤務していたときに、長寿企業について調査した成果をもとに書かれた書物である。
 
   本書の核心は、起業を生き物と考えてみたらどうなるのかという視点から、長寿企業の“企業生命力”ついて研究し、熟慮されたものである。
 
   数百年永続する企業とは、どんな企業だろうか。綿密な研究の結果、当該企業の成功原因に、次の4つの主要な共通要素が発見できたという。
 
(1) 長寿企業は、環境に敏感である
経営環境との調和を維持する。常に触覚を鋭敏に働かせ、周辺の動きに合わせて行動を起こす。変化と適応に対して強烈な意欲を持ち、その意志を強力に貫く姿勢がある。
 
(2) 長寿企業は、強い結束力があり、また強力な独自性が見られる。
いかに多角化が進んでも、従業員は会社と一心同体。強固な団結。組織全体の健康状態を最優先する。
 
(3) 長寿企業は、寛大である
「権力の分散化」を図り、できるだけ干渉をせず、活動面で大幅な自由度が認められていた。
 
(4) 資金調達で保守的である
慎ましく倹約し、むやみに資本をリスクに晒さない。余分なカネはタンスにしまっておく習慣があった。手元に現金があれば行動に制約されることなく、柔軟性と独立性が維持できると考えていた。無駄を省き、内部留保を高める。
 
   絶えざる変化の波にもまれながらも長期間にわたって存続する企業とは、変化に対するマネジメントの達人をトップに据える企業に他ならない。組織は、機械ではなく、学習して成長し続ける生命体のようなものだと捉えて、「学習する組織」という言葉を生み出しだのは、アーリーである。
 
   私たちは今、変化の激しい時代環境の中に生きている。その変化にどう適応し、存続発展していくか。そのためには、上記の長寿企業としての“企業生命力”に関して、明確な意識を持って経営に取り組む必要がある、と改めて思う。
 

今週の考える言葉「トランプ関税」

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トランプ関税

   トランプ大統領が発した、“トランプ関税”が世界経済を揺るがしている。どんな影響・問題があるのか、考えてみたい。
 
   関税とは、一般に「輸入品に課される税」として定義されている。そして、その関税の目的は、次の二つにある。
 
国のお金を増やす
   外国から輸入されるものに関税をかけることで国にお金が入る。国(政府)の収入が増えるので、そのお金を使って国の経済をよくするために使おうという目的がある。
 
国の産業を守る
   外国から物を輸入するときに政府からお金を取られる。つまり輸入する企業や個人にとってはお金をたくさん払わないとその国にモノを入れられないということになる。
 
   今回の“トランプ関税”政策で得をするのは、主としてアメリカ国内の製造業者や鉄鋼・アルミ産業だという記事があった。関税をかけることで、外国製品よりアメリカ製品が有利になり、国内の雇用や生産が守られる、という仕組みである。
 
   まず、一般的には米国の関税引き上げにより、輸入物価の上昇による価格転嫁からインフレが起こり、インフレ懸念から長期金利が上昇するというのが基本的なロジックである。関税政策だけに着目すると、企業にとって、輸入価格の高騰と長期金利の上昇による資金調達の制限からデメリットのほうが多く見られる。
 
   さて、“トランプ関税対策”として、政府が行う国内産業や国民生活に対する総合対策案として、次のようなことを掲げている。 
企業に資金繰りや雇用維持への支援などが柱になる。
 
「緊急対策パッケージ」 
 
 ① 相談体制の整備
 ② 企業の資金繰り支援の強化
 ③ 雇用維持と人材育成
 ④ 国内消費の喚起
 ⑤ 産業構造の転換と競争力強化 
 
   企業支援については、5月以降、中小企業向けの融資について金利引き下げの対象を広げることを検討すること、「雇用調整助成金」の支給要件の緩和を検討すること、納税猶予すること、などが含まれているようだ。
 
   いずれにしても、今回の“トランプ関税”は前例にない動向である。それによって、世界及び国内の経済がどう動いていくのか、予断を許さない状況にあると言えよう。
 
   あらゆるセーフティネットへの情報をしっかりと得る心構えが必要であろう。
 

今週の考える言葉「風格」

考える言葉

風格

   久々に、安岡正篤の著書に触れていると、「人間の“風格”を養う!」という言葉が目に留まり、再読した。
 
   “風格”とは、「その人の容姿や態度に現れる品格。味わい。趣」のことである。
 
   氏は、「四十五十にして聞こゆること無くば、斯(こ)れまた畏(おそ)るるに足らざるのみ」(論語)という孔子の言葉を引用して、次のように述べている。
 
   「四十、五十歳になってもその人の“風格”が出てこないのは、志を立てて勉学することを怠ってきたからなのだ」と。
 
   そして、安岡正篤は“風格”を養うために「六中観(りくちゅうかん)」を説いている。
 
   「忙中有閑、苦中有楽、死中有活、壺中有天、意中有人、腹中有書」。
 
   つまり、
 
①どんなに忙しい中にあっても、閑(ひま)をつくって楽しむ教養と知性がなくてはならないし、
 
②苦しい中にあっても楽しみをつくって心の余裕を持たなくてはならない。
 
③絶体絶命のピンチに陥ってもあきらめることなく活路を見出す知略を湧き起こさなければならないし、
 
④壺のような狭いところに押し込められても、希望を持って天を仰ぎ、勇気を奮い起こして戦わなければならない。
 
⑤そしていつも尊敬できる人に私淑し、
 
⑥聖賢の書を座右に置いて修養に努めなくては人間として徳を磨くことはできないのである。
   
   人生には確かにいくつかの好機がある。しかし、好機だけを狙って人生がうまくいくとは限らない。
 
   人生に油断は禁物である。寸陰を惜しんで人間学を学び、自分の人格力を高めて、視点を高くする努力をしていかなければならない。
 
   よく言われてきたことだが、日本の戦後の教育は知識偏重型で、頭でっかちな人が多く、実践できていなかったり行動が伴わなわなかったりする人が多いと指摘されてきた。つまり、言行不一致では、“風格”を養うことはできない。
 
   やはり、“風格”を養うには志を立てて、自らの価値観を高める努力を怠っては成らないのだと思う。
 
① 雰囲気に余裕があり、振る舞いが謙虚。
② 信があって、何があっても動じない。
③ 強い信念を持って、大きな夢を追いかけている。
④ リーダー的な存在で、包容力がある。
 
   “風格”が漂う人って、そんな感じだろうか。
 

今週の考える言葉「社風」

考える言葉

社風

   職業柄、いろんな業種、業態の企業の経営者や社員の方々と触れ、会話を交わす機会がある。その時、ふと気づかされるのが“社風”の違いである。
 
   “社風”とは、「その企業の雰囲気や特徴」のこと。
 
   企業の内での人間関係を基本とした働く環境のことを意味する。空気感というか、感覚的に要素も大きいだろう。
 
   人間に例えると「人柄」に当てはまる。勤勉で、まじめ人とか、人見知りをしないとかいった「性格」、仕事よりプライベートを重視したいなどの「価値観」から成り立つ、その人の雰囲気のようなものである。
 
   ある会社の社長と接し、その物腰の柔らかさで、いつも他者の話には傾聴する姿勢を見ていて、感心させられる方がいる。そして、驚かされるのは、その会社の社員の人たちが皆、同じような雰囲気を醸し出していることだ。やはり、これは“社風”と言えるだろう。
 
   ふと、思う。自社の“社風”というものをしっかりと考えたり、社内で話し合ったりしたことはあるだろうか。
 
   朝礼や全体会議のときに、経営理念の唱和はしているが、それが“社風”としてどんな形で、浸透しているか、皆で語り合ったことはないのではないだろうか。
 
   “社風”は、「組織風土」や「組織文化」から影響を受けているというが、“社風”の例としては、次のようなものが挙げられるだろう。
 
 ① 互いに尊重し合い、率直に意見を言い合える。
 ② 穏やかで、のんびりしている。
 ③ 上下の差別なく、意見できる。
 ④ 社員全員が仲よしで、楽しそうだ。
 ⑤ 雰囲気が明るい。
 ⑥ 体育会系のノリがある。
 ⑦ 積極的で、チャレンジ精神が旺盛である。
 
   社風は、人間に例えると「人柄」だと言えよう。つまり、その人の思考や行動のベースとなっている価値観である。
 
   IG会計グループとしての“社風”、組織として共有している価値観とは何か、改めて考えてみよう。
 
   「先駆的な役割担う」、「主体性を発揮する」、「切磋琢磨し合う」、「自己実現に衆知を集める」などを、IG経営理念として謳っているが、どれだけ“社風”といえるほど根付いているか、常に意識して行動していきたいと考える。
 

今週の感がる言葉「伴走支援」

考える言葉

伴走支援

   昨今、“伴走支援”という言葉を見聞きする。
 
   中小企業庁の「経営力再構築 “伴走支援”ガイドライン」によると、その理論的な柱となったのは、アメリカの心理学者であるエドガー・H・シャイン(1928~2023年)が提唱した「プロセス・コンサルテーション」の考え方だという。
 
   では、“伴走支援”とは何か?
 
   「経営者との“対話と傾聴”を通じて、経営者に企業の本質的な課題への“気づき”を促し、“内発的な動機付け”により社内の潜在力を発揮させ、企業による課題解決を支援することにより企業の“自己変革力の向上、自走化の促進”を図っていく支援方法である」(中小企業庁のガイドライン)とある。
 
   つまり、簡単にいうと、“伴走支援”とは「経営者の聞き役となり、経営者の心が動いて行くことに寄り添うことで前向きな方向につながり、経営者の勇気と力を引き出していく」ということであろう。
 
   その結果、企業の「自己変革力の向上、自走化の促進」を目指す支援方法である。“伴走支援”の肝は、「聞き役」に徹することができるかどうかである。
 
   従来の経営コンサルティングの手法は、どちらかというと「課題解決型支援」と呼ばれる手法で、その企業の抱えている問題を解決してあげるのが目的であった。
 
   企業の目先の課題への御用聞きを行い、その解決方法を提案し、それに企業が受動的に対応していくというやり方である。
 
   一方、“伴走支援”とは、「課題設定型支援」と呼ばれている手法で、「聞き役」に徹し、経営者に本質的な経営課題に気づかせ、当事者意識を持ち、課題解決へ能動的に行動していくように働きかけていく手法である。
 
   「中小企業白書」(20222年度版)は、自己変革の障害として次の5つを挙げている。
 
① 見えない(企業内部の可視化ができていない)
② 向き合わない(経営者が現実を直視しない)
③ 実行できない(組織内部のしがらみや経営者の心理的障害)
④ 付いてこない(現場の巻き込みが不十分)
⑤ 足りない(課題解決のための経験や知見が足りない)
 
   この5つの障害を乗り越えるためには、自分の殻を破って、外部の能力を活用する必要がある。
 
   その時、必要なのが信頼できる“伴走支援者”である。その立場を担えるのは、われわれ税理士を始め士業に携わる人達ではないかと思う。
 
   “伴走支援”の肝、「対話と傾聴」、つまり「聞き役」に徹することを心がけたいと思う。
 

今週の考える言葉「ブランド力(brand)」

考える言葉

ブランド力(brand)

   先週(3月19~23日)は、日本M&A協会の国際会議で、タイのバンコクへ行ってきた。主催は㈱日本M&Aセンターである。1994年の第一回会議(上海)以来、30年にわたり毎年開催されており、おかげで世界の多くの有名都市に訪れる機会を得、見聞を広げることができている。
 
   最近、海外に行って感ずることがある。日本という国の“ブランド力”(brand)は、強まっているのだろうか。それとも……。
 
   一昔前だったら、海外に行ってお店に入ると、「あなた日本人?」と聞かれ、「はい」と答えると……、離れない!
 
   数年前だが、シドニーに行って感じたことだが、お店入っても、寄ってこない。日本語でしゃべりかけて来た店員がいたので、振り返ると、東京から来たワーキングホリデーの若い女性。話を聞くと、「時給3000円」で働いているという。東京で働いてもせいぜい1500円なので、シドニーで働いたほうが、割がいいという。
 
   思うに、今、日本はいつ潰れてもおかしくない中小企業がたくさんあるという。
 
 ① 自己資本比率が20%未満の会社
 ② 借入金の償還に10年以上かかる会社
 
   上記に当てはまるとしたら、真剣に自社の収益力を高めるためにどうしたらいいのかを、早急に考える必要があると思う。
 
   利益創出の構造は、「利益=売上×利益率-固定費」と明確である。つまり、収益力を高めるためのパターンは、次の5つである。
 
 ① 高く売れる(単価が高い)~高製品力
 ② たくさん売れる~高生産性
 ③ 安く仕入・外注する~外部購入費安
 ④ 人件費が少ない~低人件費
 ⑤ 固定経費が少ない~固定経費安
 
   自社の“ブランド力”を高めるためには、やはり、他社との差別化ができる状態であるかどうかだろう。そのためには、先ずは自社の収益力を高める努力を怠らないことであろう。
 
   “ブランド力”を高めることによって、企業には同業他社との差別化、付加価値の向上、値決め決定権が得られる。また、自社内の意思統一と社員モチベーションの向上につながるし、ビジネスパートナーの協力、採用活動の効率化などが期待できる。
 
   消費者・顧客にとっては、探索コストの低減やリスク回避というメリットを享受できることになるだろう。ブランド力を高める意識を持ちたいと考える。
 

今週の考える言葉「王道」

考える言葉

王道

   「姑息な手段に振り回されず、“王道”を貫け!」
 
   かつて、バタバタしていて、つい目先の利益に目が眩み、不用意に心が動かされようとしたとき、誰彼となく口にした言葉である。
 
   書棚にあった、『企業発展の礎となる経営理念の研究』(佐々木直 著)を読み直していると、宮内義彦氏の言葉として、次のような内容のことを紹介してあった。
 
   「宝くじを当てるような気持ちで経営を行うのではなく、“王道”を歩んで、誰にも負けないサービス・商品を作りあげることです。そして、経営は自分の責任でやることです」と。
 
   ここにある“王道”という言葉に触れて、チャレンジ精神に溢れていた若き頃、よく口にした言葉だったな、と思い出した次第である。
 
   少し、気になり、ネットで調べてみた…。
 
   「①儒教で理想とした、有徳の君主が仁義に基づいて国を治める正道。②royal roadの訳語。安易な道。近道」
 
   つまり、“王道”には二つの意味があり、使う意味によって由来が異なるという。
 
   1つは、政治的な意味で「王道」を用いる場合、由来は中国の儒教で、中国戦国時代の学者である孟子(もうし)が唱えた説です。王道とは力で統治する覇道と対照的な、仁愛によって統治する政道のことを表す。
 
   もう一つは、「遠回りせずに済む最も適した方法」のことで、「近道」「安易」と似た意味である。エジプトの王が問いかけたことに対する数学者の答え、「There is no royal road to learning」(学問には王道はない)という言葉が由来である。そこから「royal road」が「近道」として使われるようになったという。
 
   小生は、どちらかというと、①の正道という意味で使ったようだ。しかし、「あーでもない、こうでもない」と悩むよりは、“王道”を選んだほうが結果、近道となるので一緒のことかなと、思う。
 
   宮内義彦氏が言うように、意識して「“王道”を歩むこと」、また「“王道”を貫く」という考えは、世の中が多様化している今日的な状況において、極めて大切なことのような気がする。
久し振りに、“王道”という言葉に触れ、気になったことがある。それは、悩む機会が少なくなったのではないか…。言葉を換えていうと、新しいことにチャレンジする機会が少なくなった。
 
   この世の真理は、何事においても進化向上していけるものだという。この真理を常に忘れず、切磋琢磨し続けることこそが、“王道”への心得ではないだろうか。
 

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