古田会計事務所

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今週の考える言葉「信頼」

考える言葉

信頼

   連休中に、『経営者を育てるアドラーの教え』(岩井俊憲 著)という本を再読したが、その中に“信頼”について書かれていたので紹介したい。
 
   アルフレッド・アドラー(1870~1937年)は、オーストリア出身の精神科医、心理学者で、フロイトおよびユングと並んで現代のパーソナリティ理論や心理療法を確立した一人である。「人は目的のもとに生きている、幸せになるには勇気を持つ」というテーマからなるアドラー心理学を創始した。
 
   著者は、アドラー心理学が次の3つの視点から、経営者にとって人間観構築のためのモチベーションになるとしている。
 
   ①経営者としての人間観の確立
「人間をどう見るとか」という人間観において、「人間を肯定的に見て、人間には無限の可能性がある」と説いている。
 
   ②未来志向の視点を持つこと
「過去の原因を問わず、未来に向けて何ができるかを模索するもの」である。
 
   ③「勇気づけ」で組織を元気にすること
「人間の可能性を信じることによって、社内コミュニケーションがよくなり、モチベーションが上がる」としている。
 
   アドラー心理学は人間を肯定的に見ようとするので、一人ひとりの可能性を引き出すのに非常に効果的なのである。
 
   「令和は再構築の時代である」と言われているが、そのためには経営者にも経営マインドの再構築が求められるという。
 
   その時の大きな課題として、「恐怖・不信・軽蔑」という恐怖による支配から卒業し、「尊敬・“信頼”・共感・協力」といったものに基づく人間関係へとものの考え方、価値観を変えることができるかどうかである。
 
   4つのキーワードの中で、“信頼”について考えてみたい。
 
   経営者が社員をいかに“信頼”するか・・・。その時大切なことは、「期待」だという。
 
   アドラーはあらゆる形で否定的な人間観を捨て、肯定的な人間観を持つことを強調している。否定的に見られがちな劣等感についても「健全な向上心につながるきっかけになる」と言っている。
 
   アドラー心理学は非常にポジティブである。アドラーは、未来に向けて進化しようとする人間の意思に“信頼”を置き、それを肯定している。
 
   そして、「“信頼”は人間を前に進ませる大きな力となる」という。
 

今週の考える言葉「人生の法則」

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人生の法則

   専門書の中でよく使われる言葉に、「法則」というのがある。
 
   いわゆるビジネスモデルでもそうが、一定のモデル(仕組み)の前提には必ず基本的な考え方、つまり法則と呼ばれるものが存在しているといえる。
 
   法則とは、「一定の条件下で、事物の間に成立する普遍的、必然的関係」をいう。(「因果の法則」「遺伝の法則」など)周囲の優れた経営者をよく観察すると、自らが関わる事業において機能している法則なるものを自らのルールとして認識し、意思決定している人が多いことに気づかされるだろう。
 
   十数年前に購入していた書籍、『史上最強の人生戦略マニュアル』(フィリップ・マグロー 著、勝間和代 訳)を再読している。
 
   その中に、「誰もが自分自身の人生に責任がある」にも関わらず、自分自身の人生と真剣に向き合わず、自分をダマして、自己欺瞞の中で生きているのではないかと問題提起をしている。
 
   そして、自分自身の人生に主体的に関わり、生きていくためには、自らの人生戦略(LIFE Strategies)を描くべきだと説いている。さらに、そのためには人生戦略に必要不可欠な“人生の法則”を学ぶべきだとし、次の10の法則を紹介している。
 
①人生の法則❶ 「ものがわかっているか、いないか」
②人生の法則❷ 「人生の責任は自分にある」
③人生の法則❸ 「人はうまくいくことをする」
④人生の法則❹ 「自分が認めていないことは変えられない」
⑤人生の法則❺ 「人生は行動に報いる」
⑥人生の法則❻ 「事実なんてない。あるのは認識だけ」
⑦人生の法則❼ 「人生は管理するもの。癒すものではない」
⑧人生の法則❽ 「私たちは自分の扱い方を人に教えている」
⑨人生の法則❾ 「許しには力がある」
⑩人生の法則❿ 「自分が求めているものを知り、要求する」
以上である。さすが、法則!なかなか味わいの内容である。
 
   著書の中では、10法則の他に、人生戦略達成のための「目標設定の仕方」や「成功のための要素」などが書かれてある。
 
   結構なボリューム(p429)と内容の濃さがあり、読み応えがある本である。良かったら、一読願いたいと思う。
 

今週の考える言葉「自己の強み」

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自己の強み

   P・F・ドラッカーによると、「歴史上の偉人は、自己をマネジメントしたからこそ、偉業を成し遂げた」のだと言う。
 
   「自己をマネジメントする」ということは、「“自己の強み”、仕事の仕方、価値観を知ること」であるが、今回は“自己の強み”について、少し考えてみたい。
 
   日本の歴史において、江戸時代は「士農工商」という制度があって、生まれながらにして、地位も仕事も決まっていた時代であった。ところが今日では、誰でも選択の自由
がある。したがって、自己の適所がどこであるかを知るために、“自己の強み”を知っておく必要がある。
 
   では、“自己の強み”を知るには、どうすればいいだろうか。
 
   ドラッカーの教えを体系化した『IG式目標管理システム』を活用し、「仮設~実践~検証」のサイクルを徹底実践することに尽きると、私は考える。
 
   その中でも、フィードバック分析とその機能をしっかりと活用することが大切だろう。そして、フィードバック分析をやり続けることによって、次の通りやるべきことが明らかになってくる。
 
 ① 明らかになった強みに集中すること。(成果への集中)
 ② その強みをさらに伸ばすこと。(スキルや知識の研鑽)
 ③ 知的傲慢を知り、正すこと。(無知の元凶)
 ④ 自己の欠陥、成果の妨げになっていることを改めること。(自己反省)
 ⑤ 人への接し方を改めること。(潤滑油としての意識)
 ⑥ できないことはしないこと。(己自身を知ること)
 ⑦ 強みに集中すること。(無駄な努力をしないこと)
 
   アメリカの心理学者ターシャ・ユーリック氏は、次のように述べている。
 
   「95%の人は自己認識ができていると思っているが、実際には10~15%の人しか正しい自己認識をしていない」という驚きの統計を明らかにしている。つまり、約9割の人が、自分自身に対して客観的な視点を持てていないということである。
 
   特に気を付けるべきは、「年齢と自己認識は正比例する」という迷信だという。実は、
年齢を重ね、経験豊富な人ほど、自己の能力に対する評価が甘いという研究結果があるそうだ。
 
   「敵を知り己を知れば百戦危うからず」(孫氏)という諺がある。他人の言葉に謙虚に耳を傾け、“自己の強み”を正しく知ること。そして、その強みで相手の弱みをかばってあげるような仕事の仕方、価値観を身につけていきたいと思う。
 

今週の考える言葉「寝そべり族」

考える言葉

寝そべり族

 
   最近のことだと思うが、中国で「躺平族(タンピン)・“寝そべり族”」と呼ばれる人々の生き方が、共感を呼んでいるという。
 
   「タンピン」とは、「だらっと寝そべる」という意味らしい。今年春から流行り始めた言葉で、仕事や結婚、出産に積極的でなく、物欲が少ない若者たちを指すという。
 
   SNSに「私ものんびり泳ぐ魚のように生きたい」と書き込まれるなど共感が広がり、わずか数か月でほとんどの中国人が知る単語となったそうだ。
 
   高度経済成長が続いてきた中、激しい競争社会や発展がもたらした価値観の多様化が背景にあるようだが、中国メディアは今後の中国の経済成長を阻害しかねないとして警鐘を鳴らしているそうだ。
 
   この新聞記事(朝日)を読みながら、フッと30年前の日本の状況を思い出した。
 
   『若者・アパシーの時代~急増する無気力とその背景』(稲村博 著)という本がバブル経済真っ盛りの1989年に出版されている。
 
    アパシーとはドイツ語で、「外界からの刺激に無感覚になること」を意味する概念だそうで、1960年代の米国で生まれたという。つまり、経済的豊かさのみを追求する過程で、どこの国においても起こり得る現象だと言える。
 
   中国メディアでは、「“寝そべり族”は恥だ」と切り捨て、「“寝そべり族”は経済発展に不利だ」という論評を掲載しているという。
 
   中国政府によると、2013年に結婚を届け出た夫婦は1347万組いたが20年には813万組にまで減少。出生数の減少にも歯止めがかからず、20年の出生数は約1200万人でピーク時の半分以下だという。
 
   “寝そべり族”という社会現象の本質には、「教育のあり方」にあるのではないかと考える。
 
   経済的、物理的な成長を追求するあまり、専門的な知識や経験ばかりを重視する能力主義的な教育への偏重があった・・・。人間にとってもっと大切な、「何のために」という目的を思考する考え方、つまり価値観教育が欠如していた結果だと思う。
 
   これは、国に限ったことではない。企業においてもそうだと思う。成長と発展にはバランスが必要だ。ただ単に、売上や利益といった業績の向上・発展も成し遂げたとしても、人材のスキルアップ向上だけで、ものの考え方、価値観教育を置き去りにしていたのでは、“寝そべり族”が増えてきて、仕事の価値は損なわれてくるに違いない。
 
   コロナ騒動で不安的な環境にある今こそ、人間としての原点に立ち返って、正しい価値判断ができる人材教育に力を注ぐときであると考える。
 

今週の考える言葉「GRIT」

考える言葉

GRIT

   “GRIT”とは、「やり抜く力」のことをいう。
 
   ① 度胸(Guts)、② 復元力(Resilience)、③ 自発性(Initiative)、④ 執念(Tenacity)の頭文字を取ったもので、アンジェラ・ダックワース教授(ペンシルベニア大の心理学者)が提唱した概念であり、IQ(知能指数)よりも人々の成功に寄与するとされている。
 
   小生は、「未来会計=MAS監査の事業化」などの講演で、その成功の秘訣を問われると、必ず、「成果が出るまで、やり続けることだ」と答えている。まさに、教授がいうところの“GRIT”がポイントだと言える。
 
   ドイツの詩人・ゲーテ(1749.8.28~1832.3.22)は、様々な名言を残しているが、次のような言葉がある。
 
   「人間にとってもっとも尊ぶべきことは、はっきりと自覚した目的を持つことと決断、さらに実行である」。
 
   目的を明確にして、決断・実行すること。つまり、“GRIT”(=やり抜く力)である。では、“GRIT”を伸ばすためにはどうすればいいのだろうか?
 
   次のようなことが考えられる。
 ①興味があることに打ち込む
 ②入念な計画を立てる(短期だけでなく、長期目標も)
 ③失敗を恐れずチャレンジし続ける
 ④小さな成功体験を積み重ねる
 ⑤言い訳をしない
 ⑥“GRIT”がある人のいる環境に身を置く
 ⑦励まし合えるパートナーを持つ
 
   “GRIT”(=やり抜く力)は、冒頭で述べたように、アメリカでは現在、教育界や産業界をはじめ、さまざまな分野で反響を呼んでいるという。SDGs(持続可能な開発目標)もそうであるが、“GRIT”は今の時代環境において求められる価値観の一つなのだろうと思う。
 
   良い“GRIT”を形成する要素として、次のような言葉が挙げられる。
 
   ①情熱、② 幸福感、③ 目標設定、④ 自制心、⑤ リスクテーキング、⑥ 謙虚さ、⑦ 粘り強さ、⑧ 忍耐。
 
   「IG式目標管理」を徹底して実践するとき、いずれも大事にしている要素である。さて、あなたの“GRIT”はどんな要素で支えられていますか。
 

今週の考える言葉「SDGs」

考える言葉

SDGs

   “SDGs”(エスディージーズ)とは、「Sustainable Development Goals」という英語の頭文字を取った略称である。「持続可能な開発目標」と訳されている。
 “SDGs”は、2015年9月25日の第70回国連総会で採決された、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」という文書の中にある。日本語では、外務省のホームページに掲載されている。
 
   “SDGs”が採択されてから5~6年経つのだが、コロナが蔓延したせいもあるのだろうか、“SDGs”に関心を持ち始め、研究している企業が増えているという。小生もその一人であるが・・・。
 
   アフターコロナ後、「時代環境はどう変わるのか?」「その結果、企業はどのような経営課題と向き合うことになるか?」などと、経営計画を策定するにあたっての要件を考えているうちに、“SDGs”の中にこそ、企業が取り組むべき課題、その答えがあるのではないかと確信したからだ。
 
   “SDGs”は、持続可能な世界のための「17の目標(ゴール)と169のターゲット」(外務省のホームページ参照のこと)からなっている。
 
   17の目標には、「こういうふうに行動し、こんな状態になりたい」という内容が書かれており、未来像を描いているという意味で、「ビジョン」である。そして、それを実現するために、具体的にどうしたらよいかという「行動目標」が169のターゲットだと考えてよいだろう。
 
   では、多くの経営者が“SDGs”に関心を示す理由は何だろうか?次の3つの魅力を感じているからであろう。
 
①新事業開発や既存事業の拡大につながりそうだ。
   (利益の原動力)
 
②新たな人材獲得のための武器になりそうだ。(若い世代の関心)
 
③コミュニケーションツールとして有効だ。
   (国際的な共通目標、「御旗」の効果)
 
   このように、企業の成長戦略を描くときに大変参考になるのだが、カギとなる考え方は「持続可能性(サステナビリティ)」であると考える。
 
   故に、“SDGs”に取り組もうとするとき、「自社の持続可能性を支える強みとは何か?」を、まず検討してみる必要がある。
 
   そしてその上で、「17の目標と169のターゲット」の中から、自社の強みを活かせるテーマを抽出するとよいだろう。つまり、あれもこれもではなく、「やること」と「やらないこと」をしっかりと検討し、選択することが大切だと思う。
 
   私たち人類が「共有すべき未来」のためにも、“SDGs”に深く関心を持ちたいと思う。
 

今週の考える言葉「経営戦略」

考える言葉

経営戦略

   「戦略性が問われる時代」だという。「ウィズコロナ」を生き抜き、「アフターコロナ」を生き延びるために、その方向性を見極めるための“経営戦略”をどう描くか、問われているのである。
 
   今回は、その“経営戦略”について考えてみたい。
 
   今や中小企業といえども、多角化展開をしているところが増えてきている。「アフターコロナ」の時代においては、その傾向がもっと高まっていくことであろう。その関係もあって、“経営戦略”は大きく次の二つに分けて考え、つくるべきであるという。
 
(1)全社戦略(Corporate‐Level Strategy)
(2)個別事業戦略(Business‐Level Strategy)
 
   ここでは先ず、(1)の全社戦略を重点的に考えてみよう。
 
   全社戦略(コーポレート・ストラテジー)とは、全社的視点で考える戦略であり、トップマネジメントである社長が中心となって取り組むべき戦略である。その取り組むべき内容として、次のような事が考えられる。
①全社としての事業ドメインの設定とマネジメント
②全社ビジョンの作成と徹底
③全社組織の設計と運営
④全社ガバナンスの仕組みの構築と実行
⑤全社人材マネジメント
⑥株主マネジメントと企業価値の向上
⑦事業ポートフォリオ・マネジメント、事業間の資源再配分、事業間のシナジー・マネジメント
 
   以上である。各項目共一つひとつ、踏み込んで検討すべき内容であるが、今回は全社戦略の骨子として紹介するに留めて置きたい。
 
   さて、もう一つ(2)の個別事業戦略についても少し触れておきたい。個別事業戦略を考える場合、次の4つのポイントに関して検討することになる。
①「顧客は誰か」(対象顧客の絞り込み)
②「提供価値は何か」(主要顧客に対してどのような価値を提供するのか)
③「競合は誰か」(競合他社を知ること)
④「自社の強みは何か」(競合他社に比べて、どのような優位性を構築するか)
 
   “経営戦略”は、全社戦略と個別事業戦略の違いを十分に認識した上で、相互のバランスを考慮しつつ、実行可能性を追求していかなければならないと思う。
 

今週の考える言葉「値上げ」

考える言葉

値上げ

   20年以上続いているデフレ不況下で予期せぬコロナ騒動・・・。コロナ後の経済環境はどうなるのであろうか、と懸念している経営者が多いと思う。
 
   一番の懸念材料は、景気の停滞・低迷状態の加速化で、さらにマーケットの二極化が進むのではないだろうか、ということである。つまり、上流層(高所得者や資産保有者層)と、下流層(低所得者層)にである。これは、国内の消費の大部分を占めていた中間層の下層化も意味することでもある。
 
   この社会構造の変化は、経営者にとって如何ともし難いことだ。問題は、この構造変化に対してどう対処するかである。
 
   一番やってはならないことは、社会のデフレ化現象に惑わされて、安易に低価格戦略(値下げ)に舵取りをすることだ。値下げというのは、利益を犠牲して売上をつくる行為である。目先に追われ、未来を損なう行為ともいえよう。
 
   では、どうしたらいいのだろうか? まずは、腹を決める!
 
   「正しい企業努力を行うためにも、“値上げ”をしよう」と・・・。値段を上げることこそ正しい企業努力だと考える。つまり、“値上げ”によって会社全体が儲かる体質に変わるのである。
①“値上げ”によって、高収益体質の変わり、社内に余裕が生まれる。
②客層が良くなる。(値段より信頼や安心での顧客)
③余裕が生まれ、さらに付加価値な情報を加えることができる。
④経営者に時間的余裕が生まれ、未来を創るための時間ができる。
 
   さらに知っておきたいことは、消費には次の「4つのタイプ」(動機づけ、判断基準)があるということを認識しておこう。
①「安いから買う」消費
②「高いから安心、信頼が置ける」消費
③「モノではなく、コトを買う」消費
④「自分らしさを買う」消費
 
   これらの「4つのタイプ」からも分かるように、今や消費者行動は「値段の安さ」だけで消費を決めていないということである。
値下げをするということは、自社の取り扱う商品・サービスに自信持っていない証拠だと思われても仕方がないと思う。
デフレ不況下の今こそ、“値上げ”に挑戦しよう。正しい企業努力をし、企業価値を高めるためにも、“値上げ”することを考えよう。
 

今週の考える言葉「競争優位」

考える言葉

競争優位

   今なお、出口がはっきりしないコロナ騒動であるが、コロナ後の時代環境の変化に対して様々な憶測や見解が飛び交うようになった。
 
   ”考える言葉”シリーズ(21‐20)のテーマとして取り上げた「レスの時代」もその一つである。
 
   それと、もう一つよく見聞するのは「差別化」である。
 
   要するに、強い者が生き延びて、弱い者は淘汰されるという競争社会の激化が明確になるのではないかという見解である。人口減少等で経済規模が縮小する中で、あらゆる業界において企業の統廃合が進むのは想像に難くないが、コロナ騒動がその流れを後押し、加速化するのではないかという・・・。
 
   言うまでもなく、いつの時代においても、経営とは戦いである。戦いである以上は、勝たなければ生存できないのは至極当然である。
 
   そこで改めて問うべきは、“競争優位”の源泉についてである。歴史的に捉えても、次の4つの要素が考えられる。
 
① 資本力(大量生産・販売力)
モノ不足の時代(1960~1980年代)、高度経済成長期は資本力がある企業が圧倒的に優位であった。
 
② マーケティング(顧客のニーズや課題への対応力)
80年代から経済が高度化し、顧客ニーズの多様化が進む。競争優位の源泉としてマーケティングの重要性が問われるようになった。
 
③ シーズやウォンツ(顧客の潜在ニーズを掘り起こす力)
2010年代、SNSなどの普及で、B2C市場でユーザーのシーズやウォンツを捉え、
自社の強みを活かせるかどうか。自社の強みに特化することが経営戦略上重要となる。
 
④ ブランド(企業としての信頼性)
そして「アフターコロナ」の2020年代、コロナウィルスという未知の体験をしたことにより、経済面やデザイン面だけでなく、環境面、衛生面、自分の価値観に合うかなど、多面的に物事を見るようになるだろう。
企業が社会的存在として信頼できるかどうかまで踏み込んで選ぶようになるだろう。それは企業としての信頼であり、ブランド力だといえよう。
 
   以上、“競争優位”の源泉について検討してみたが、特に企業としてのブランド(信頼性)を高めるための働きかけを常に心がけていくべきであろうと考える。
 

今週の考える言葉「対立」

考える言葉

対立

   十人十色というように、人それぞれの価値観がある。つまり、考え方や好みなど各人それぞれちがう。それゆえに、同じ職場環境で仕事をしていたとしても、意見の食い違いが生じ、“対立”してしまうことも多々ある。
 
   “対立”といえば、ついネガティブに捉えがちであるが、”考える言葉”シリーズ(21‐18)の中で紹介した書物、『未来を共創する経営チームをつくる』(鈴木義幸 著)では、「経営チーム」を進化させるために心得の一つに“対立”の重要性を説いてあった。
 
   なぜ、“対立”が組織の進化にとって重要となるのか?その点に著者の意見を踏まえながら、考えてみたい。
 
   まず、その著者は“対立”について次のように述べている。
 
   「より洗練されたチーム(組織)は、対立をクリエイティブなアウトプットを出す源として、しっかり位置づけ、活用しています」と。
 
   そして、チームにおける“対立”の捉え方を3段階に分けている。
 
   ①第一段階:むき出しのエゴ同士の“対立”
第一の段階の“対立”は、それぞれが自分のことを中心に考えていて、エゴが高まっている状態である。ここでは、“対立”は敵意を生み出すもので、創造を生むものにはならない。
 
   ②第二段階:“対立”はお互いの違い
第二の段階の“対立”は、お互いの意識が自分よりもチームに向かっている状態なので、意見の“対立”が起こっても、それはお互いの違いとして認識される。
 
   そして、お互いが相手との違いから、新しい視点を学び、その視点を自分の中に取り入れながら、アイデアをバージョンアップさせていくのである。
 
   第一段階目のときより、はるかに効果的な“対立”が起きているが、それは偶発的に起きるものであって、チームの中で意図的に起こされているものではない。
 
   ③第三段階:創造のために“対立”する
この段階になると、チームの中で、リーダーが意図して創造のために“対立”を起こすようになる。このようなチームでは、“対立”は創造のための手段として認識されている。だから、できる限り、視点の違いを場に出して、それを創造的に統合することで、お互いのアイデアをブラッシュアップしようとする。
 
   以上であるが、“対立”をこのよう視点から捉え直すことができれば、お互いに妙な遠慮をすることなく、真摯にぶつかり合っていけるのではないだろうか。
 
   “対立”を恐れず、一切手加減をせずに、本音でぶつかり合うIG文化をつくろう。
 

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