古田会計事務所

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今週の考える言葉「キーワード」

考える言葉

キーワード

   正しい経営をしているのかどうか、自己判断することは難しいものだ。なぜなら、人はそれぞれ、自らの価値観(思考の枠組)に知らず知らずにうちに支配されている生き物であるからだ。
 
   特に、上に立つ人ほど、確固たる信念というか、独自の価値観を培っている人が多いような気がする。それは決して悪いことではないが、一つ間違えると独善に陥りやすいこともある。
 
   そこで、自己チェックを行うための5つのキーワードを紹介したい。(『経営を見る眼』伊丹敬之著を参照)
 
① 当たり前スタンダード
誰が見ても当たり前の標準という意味である。その当たり前のことがきちんと実行できているだろうか。
 
② 神は細部に宿る
「経営者の仕事は大きな事を考えることと、小さな事に目を配ることだ」(松下幸之助)
「現場こそすべて」「一事が万事」「蟻の一穴」等々。
 
③ 人は性善なれども弱し
多くの低迷組織には、「ついついの甘えと錯覚と思い込み」が充満している。それを正すのは、容易ではない。
 
④ 六割で優良企業
「その企業に働く人の六割が、当たり前のことをきちんとやっていれば優良企業だ」と言えよう。この比率が七割にもなれば、超優良企業。普通の企業は五割以下だという。組織として狙うべきは、少し良いことを長期的に持続することが大切だ。
 
⑤ 目に見えないことこそ重要
経営はうわべではない。「目に見えないことこそ重要」、である。
 
   戦略で言えば、表面の行動ではなく、具体的な行動とその実行を支える資源が大切である。(技術やノウハウ、顧客の信頼、組織風土など見えざる資産)
 
   組織でいえば、経営システムではなく、その中で実行されるプロセスが大事である。
 
   人間でいえば、能力ではなく、価値観(考え方)が大切である。そして、経営者でいえば、口から出る言葉ではなく、背中が大切である。
 
   以上、自己チェックのための5つのキーワードを書き並べてみたが、当たり前と言えば、その通りである。しかし、経営に限らず、世の中は当たり前のことを置き去りにしていることが、実に多いような気がする…。
 

今週の考える言葉「リーダーのあり方」

考える言葉

リーダーのあり方

   これまでも、“リーダーシップ論”は何度ともなく取り上げてきた課題の一つである。改めて、考えてみたい。
 
   最近再読している本の中に、『経営を見る眼』(伊丹敬之 著)がある。経営の入門書として実によくまとめられたもので、今までも何度となく手に取り、読み直した本の一冊である。
 
   その中に、“リーダーのあり方”について書いてある箇所(第8~11章)があるので紹介をしたい。
 
   氏は、「経営とは、他人を通して事をなすこと」と定義し、だとすれば、経営の第一歩は、“リーダーのあり方”、つまり、「人を動かす、そして人が自ら動く」ということについてしっかりと考えるべきだという。それが、経営の本質だからだという。
 
   そして、そのためには「働く人たちの心の掌握、人心の統一が、企業組織リーダーの最大の仕事だ」ということになる。
 
   ここまで書いていて、ふと思い出した言葉がある。鉄鋼王として有名なアンドリュー・カーネギーの墓碑銘に書かれているという次の言葉だ。
 
   『己よりも賢明な人物を身辺に集める方法を心得た男、ここに眠る。』
 
   ヘンリー・フォードも、同様に、自分よりも賢明な人物を身辺に集めていたことを自負していた経営者の一人だったという。
 
   さらに著者は、「名経営者は、必ず名教育者だ」という。
 
   経営とは、「他人を通して事をなすことだ」。つまり、他人が「自ら事を行うように仕向ける」のが経営だとすれば、それは教育の本質と同じである。教育の本質は自学であり、自育なのである。
 
    その要諦とは、リーダーの要諦とは、次の三つのことをきちんと行うことだと言える。
 
① 部下たちに仕事全体の方向を指し示す。
② 部下たちが仕事をしたくなる、やりやすくなる環境を整備する。
③ その後は、彼ら自身が自分で仕事をやるプロセスを刺激する。応援する。
 
   他人を通して事をなすには、人を信じ、仕事を任せることから経営は始まる、とも思う。それが、出発点であると言えよう。
 
   アメリカの教育者、ウィリアム・ウォードの言葉に、次のような名言があるという。
 
    「凡庸な教師は、命令する。いい教師は、説明する。優れた教師は、範となる。偉大な教師は、心に火をつける」。
 
   「The great leader inspires」。リーダーとして、精進し続けたいと思う。
 

今週の考える言葉「位置と役割」

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位置と役割

   先週末(6月9~10日)、IG会計グループの『事務所見学会』が開催された。コロナで2年間ほど中断されていたので、久しぶりの開催である。コロナの影響を懸念していたが、全国から多くの会計人の参加があり、盛況であった。
 
   『見学会』の目的は、弊社で展開している『未来会計(MAS監査)サービス』について学び、各事務所においても事業化したいということであろう。
 
   『未来会計(MAS監査)サービス』に関していうと、すでに体系化され、モノの考え方や手法も確立しているので、誰もが学ぶことによってすぐに習得できるのではないかと思う。
 
   となると、成功するか否かの鍵を握るのは、「何のために」という目的意識とそれに伴う“位置と役割”であろう。
 
   ほとんど多くの会計事務所は、税務会計(過去会計)という本業があり、社会的な“位置と役割”を担ってきたという長い歴史がある。過去の取引を記録、整理し、税務申告をサポートするという仕事である。
 
   しかし今、多くの中小企業が求めているのは過去ではなく、不透明な未来にどう備えたらいいのかという助言である。
 
   小生は、「会計人は社会的インフラである」という使命のもと、社会のインフラとして中小企業の存続・発展を下支えしていくならば、中小企業の経営者の困りごとが変化した以上は、自らの“位置と役割”を変えていって然るべきである。だが、それができず、顧客のニーズの変化に応えきれない組織が多いような気がする。
 
   また、組織を構成するメンバー一人ひとりの“位置と役割”を明確にしておかなければならないと思う。
 
   会計事務所でいうと、従来の税務会計業務を担う部署・個人と未来会計業務を担う部署・個人は、業務内容に違いがあるようならば、“位置と役割”を明確にしておいた方が相互の貢献と責任が明確になり、コラボレーションしやすくなる。
 
   「組織とは協働行為の体系である」と定義づけるならば、その成立条件は次の3つである
 
 ① 目的の共有
 ② 貢献意欲
 ③ コミュニケーション
 
   これらの成立条件を明確に認識した上で、構成メンバーの一人ひとりが自らの“位置と役割”を自覚し、協力し合う組織は必ずや成功するであろう。
 

今週の考える言葉「自社の魅力」

考える言葉

自社の魅力

   企業には、様々な利害関係者(ステークホルダー)が存在する。
 
   金銭的な利害関係が発生する顧客や株主そして取引先はもちろんだが、企業活動を行う上で関わるすべての人のことをいう。地域住民、官公庁、金融機関、そして従業員なども含まれる…。
 
   そのような利害関係者にとって、“自社の魅力”はどのように映っているのだろうか。
 
   様々な利害関係者が存在するが、その中でも顧客が関心を持っている“自社の魅力”とは何だろうか。
 
  どんな企業にも、お得意さんと呼ばれる顧客が存在するが、その人たちの顔を思い浮かべながら、次の質問に答えることによって、“自社の魅力”について考え、整理してみよう。
 
① 第一に、今までで最も高い評価を受けた仕事は何か?
② 第二に、それはこれからも高い評価を受けそうか?
③ 第三に、なぜそう思うのか?
④ 第四に、評価をさらに高めるために、どのような要素を追加すべきか?
⑤ 第五に、それを習得する方法は何か?
⑥ 第六に、実際に習得するにはどうすればよいか?
 
   どうだろう…。改めて問い直してみると、意外と曖昧な答えしか浮かばない得意先も多いのではないだろうか。
 
   「ずっと取引しているから」「近くで便利だから」「知人の紹介だったから」「各種交流会のメンバーだから」「他社にないサービスをしてくれるから」「対応が早いから」「何となく…」などだろうか…。
 
   いずれにしても、何らかの理由があって、多くの競合の中から、自社を選んでくれたのは間違いないと思う。それが価格でないとすれば、その理由は何か。その理由こそ、“自社の魅力”だと考える。
 
   “自社の魅力”とは、自社の強みでもある。
 
   そして、ドラッカーは経営戦略のベースには“自社の魅力”(強み)を据えて考えるべきだと助言している。
 
   経営戦略の構成要素とは、①市場・顧客、②商品・サービス、③流通ルートである。すなわち、これら3つの構成要素について、“自社の魅力”がどのように反映されているかどうか、検討してみることも大切であろう。
 
   もちろん、“自社の魅力”は、「顧客にとっての魅力」であることは当然のことである。
 

今週の考える言葉「八つの習慣」

考える言葉

八つの習慣

   以前に、「マネジメントとは、組織をして“成果”をあげさせるための道具、機能、機関である」という、ドラッカーが掲げたマネジメントの定義を紹介したことがある。
 
   今回は、成果を上げる人が必ず身につけているという“八つの習慣”について言及しているので紹介したい。
 
   性格、姿勢、価値観、強み、弱みのすべてが千差万別であったが、「成果をあげた人たちのほとんどが、次の“八つの習慣”を身につけていた」と、ドラッカーはいう。
 
① なされるべきことを考える
② 組織のことを考える
③ アクションプランをつくる
④ 意思決定を行う
⑤ コミュニケーションを行う
⑥ 機会に焦点を合わせる
⑦ 会議の生産性をあげる
⑧ 「私は」ではなく「われわれは」を考える
 
   これら“八つの習慣”については、何度も読み直し、日常的に習慣化できるように心がけて行動してきたが、今は確かに的を射た指摘であると確信している。
 
   ①の習慣について留意すべきは、何をしたいかではなく、「なされるべきこと」を考えることが成功の秘訣であるという。②の習慣は、個人としてではなく、先ずは組織人としての自覚を持つことの重要性をいっている。
 
   成果を上げる人たちは、①と②によって「何をなすべきか」をしっかりとイメージできたのであろう。そして、③以降が成果を上げるための行動を形づくる。
 
   ③の習慣は、行動を前提とした準備をいう。そのためには、④の意思決定、⑤のコミュニケーション、⑥の機会、⑦の会議の4つについて、一つひとつ十分に考え、検討する必要がある。
 
   そして、組織人としての自覚は、⑧の「私は」ではなく、つねに「われわれは」という視点で思考し、行動することによって習慣化される。
 
   習慣とは、そうすることが当たり前になっていることであるが、習慣化する秘訣は一つ、やり続けることである。
 
   上記に掲げた“八つの習慣”は、間違いなく成果につながる習慣だと実感している。今後も意識して、さらに磨きをかけ続けたいと思っている。
 

今週の考える言葉「ジェンダーギャップ」

考える言葉

ジェンダーギャップ

   今日の朝日新聞に記載されていた記事(歴史社会学者・小熊英二氏へのインタビュー記事)に、“ジェンダーギャップ”という言葉があった。“ジェンダーギャップ”とは、いわゆる「男女格差」のことである。
 
   昔から問題視されていたことも、言葉を言い換えると、違った響きを感じるのは不思議なものだ。
 
   日本は政治や経済などにおける“ジェンダーギャップ”が世界的にも大きい国だという。「男女格差」は、女性の社会進出化が進み、是正されていたと思っていたが、そう単純でもないらしい。(「ジェンダーギャップ指数」は、世界156ヶ国中120位)
 
   そういえば昨年、森喜朗元総理の「女性の多い会議は時間がかかる」発言が、物議を醸し出していたことを思い出した。
 
   小熊氏のデータ分析によると、大都市と地方で女性が置かれた状況が異なり、日本の女性は次の2種類の排除に直面しているという。
 
①「大都市郊外型」
この型では、女性の地方議員は比較的多いが、労働力率は低くなる。その理由は、大都市通勤圏は高所得の男性が多く、専業主婦になりやすい傾向がある。しかし、高学歴な女性が多いため市民運動を経て政治に進出する背景があるという。
 
②「地方圏型」
この型では、女性の労働力率は高いけれども、地縁や血縁に阻まれているせいか地方議員の女性比率は低い。
日本の女性労働力率は低くはないのだが、現場労働や非正規が多く、高賃金部門や上級管理職、政界など社会のコア部分に女性の進出ができていないという。
 
   少子高齢化という将来に対する大きな課題を抱えている日本にとって、“ジェンダーギャップ”だけの問題ではなく、地域格差や階級格差という問題を含めて、社会全体の構造的な問題として、統合的に、関係性思考で取り組んでいかなければならない社会的問題だと考える。
 
   つまり、部分の問題ではなく、全体の問題として捉え、それらを解決していこうとするならば、やはり、大切なことは「国としてのビジョン」を明確にすることであろう。
 
   21世紀世界における「日本のあるべき姿(使命・役割)はどうあるべきなのか」、そして「現状との差」を埋めるために、私たち日本人の持つ「強み」とは何か、どんな「成果」をもたらすことができるのか・・・。そうした社会構造的な問題と向き合うことによって、“ジェンダーギャップ”は、解消されてくるのだと考える。
 

今週の考える言葉「三つの成果」

考える言葉

三つの成果

   ピーター・F・ドラッカーは、マネジメントを「組織として“成果”をあげさせるための道具、機能、機関」であると定義した。
 
   つまりドラッカーのいうマネジメントは“成果”をあげることが大前提であり、“成果”をあげるための組織において共通して役立つ理論を体系化したものだといえよう。
 
   「主役は“成果”である」と、ドラッカーは『マネジメント』のまえがきで宣言しているように、ドラッカー思想を理解する上で、最も重要なキーワードだといえよう。
 
   ドラッカー思想に出会う前までは、「主役は努力」であったように思える。「一生懸命に努力した結果だから、しょうがない。諦めるしかない・・・」等々。
 
   しかし、ドラッカーの言葉に出合った時から、考え方を変えた。
 
   「“成果”が出なかったのは、努力が足りなかったからだ。あるいは、努力の方向性を間違えたからだ」と。そう考えることによって、検証の質が高まり、次のステップへの様々な気づきが得られるようになったと思う。
 
   目的と“成果”は、切っても切れない関係にあるといえる。
 
   目的は組織が進むべき方法を指し、“成果”はその過程で具体的に手にする結果をいう。
 
   マネジメントの目的は顧客の創造にあるが、そのために最善の努力を払うが、“成果”はその過程で具体的に手にする結果だといえる。
 
   ドラッカーは、多くの組織はミッションを持っており、それを実現するために、次の三つの領域の“成果”が必要だと指摘している。
 
① 直接の成果
② 価値への取組み
③ 人材の育成
 
   ここでいう、①の「直接の成果」とは、売上や利益、顧客数などをいう。これらは測定可能で、企業の標準的な評価尺度として不可欠なものである。
 
   ②の「価値への取組み」とは、顧客価値の継続的な創造を意味している。顧客が支持してくれる要因を突き止め、継続的にその価値を高めていくことである。
 
   そして、③の「人材の育成」は、組織の明日を考えれば避けて通れない重要な“成果”である。
 
   正しいマネジメントとは、これら“三つの領域の成果”を明確かつバランスよく定め、舵取りをしていくことに他ならないと思う。
 
   「“成果”は主役である」というドラッカーの言葉を改めて噛みしめてみたい。
 

今週の考える言葉「管理手段」

考える言葉

管理手段

   IGグループでは、創業の当初から、自律的で、主体的な人材に育ってもらうことを目的として、ドラッカーが提唱した「目標管理(MBO)」(Management by Objectives)を導入し、やり続けている。
 
   「目標管理(MBO)」というシステムを運用するときに、最も気をつけなければならないのは、「管理(control)」という言葉の意味の捉え方である。
 
   ドラッカーは、「管理」について次のように述べている。
 
   「“管理”という言葉はできるだけ避けたい。なぜなら、それは“支配”を想起させるからだ」と・・・。すなわち、「知的労働者を管理、監督することはできない」というのが、ドラッカーの信念である。
 
   さらに、ドラッカーの「成長」についての考え方は、次の通りである。
 
   「成長は、常に“自己啓発”によって行われる。企業が人の成長を請け負うなどということは法螺にすぎない。成長は一人ひとりの人間のものであり、その能力と努力に関わるものである」
 
   つまり、人間は誰でも“自己啓発(self‐development)”しようという意思を持っているという。そうであるならば、「人材育成の基本は、育てるのではなく、育つ環境を提供することである」という。
 
   育つ環境とは、“働きがい”をもてる環境と置き換えてもいいだろう。働きがいに関して、ドラッカーは次のように述べている。
 
   「働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには、①生産的な仕事、②フィードバック情報、③継続学習が不可欠である」と。
 
   つまり、責任は、働きがいの源泉である。つまり「責任を果たすことが働きがいを生むことになる」のである。
 
   そして、責任をもたせるための条件として、次の3つことを示唆している。
 
 ① 仕事を生産的なものにすること
 ② 成果についてフィードバックすること
 ③ 継続学習が不可欠
 
   以上のように考えると、“管理手段”を用いた方向づけは、一人ひとりの人間の「動機づけ」につながらなければならないということである。
 
   「仮説~実践~検証」という経営サイクルを用いたマネジメント手法を展開するにあたって、“管理手段”の意味を改めて問う必要があるだろう。「評価測定」の本質は、一人ひとりが自らを振り返り、自ら動機づけることにあると考える。
 

今週の考える言葉「無為のリスク」

考える言葉

無為のリスク

   最近、気になる言葉の一つにピーター・F・ドラッカーが示唆している“無為のリスク”がある。
 
   ドラッカーは次のように述べている。
 
   「事業においては、リスクを最小にすべく努めなければならない。だがリスクを避けることにとらわれるならば、結局は最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち“無為のリスク”を負う」(『創造する経営者』)。
 
   “無為のリスク”とは、未来や機会に挑戦しないリスクをいう。
 
   「現状維持は衰退である」と言われるほど変化の激しい今日、誰しもが変化というリスクから逃れることはできない。だがしかし、傍観者である人が意外と多いのではないかと危惧する。
 
   「何もしないということは、環境の変化に身を任せ、自ら陳腐化させられる道を選択しているのに等しい」という。つまり、結果として、不合理で最大のリスクを背負うことになると指摘している。
 
   そのためにも、ドラッカーは、意思決定に伴う“リスク”の性格を見極めるべきだとして、4つの“リスク”に分類している。
 
①「負うべきリスク」
事業の本質に付随する“リスク”で、携っている以上回避できない“リスク”。
 
②「負えるリスク」
機会の追求に失敗しても、企業の存続に影響がないレベルの“リスク”。
 
③「負えないリスク」
負える“リスク”の反対のもの。他に、成功を利用することができない“リスク”。
 
④「負わないことによるリスク」
無為のリスクの典型。革新的な機会を失い、自らを陳腐化させてしまう“リスク”。
 
   トップ経営者の本質は、組織の存続と発展のために「未来や機会に挑戦することだ」と考える。故に、トップの意思決定には不確実性に伴うリスクがつねに存在しているといっても決して過言ではない。
 
   「より大きなリスクを負担できるようにすることこそ、企業家としての成果を向上させる唯一の方法である」というドラッカーの金言を肝に銘じておきたい。
 
   そのために必要不可欠ものが利益の蓄積である。そして、その利益を得るためにはリスクを避けては通れないのである。
 
   “無為のリスク”とは、「ぬるま湯のカエル」のようなものだと、心得ておきたい。
 

今週の考える言葉「選択と集中」

考える言葉

選択と集中

   世の中には、仕事や勉強ができる人とそうでない人が存在する。
 
   「その差はどこから生じるのか?」と問われると、昔から、それは費やした時間の問題ではなく、“集中力”の差であるとよく聞かされたものである。
 
   現代社会最高の哲人の一人と称されたP・F・ドラッカーも“集中力”について、次のように述べている。
 
   「成果をあげるための秘訣を一つ挙げるならば、それは“集中”である」と…。
 
   確かに、自らの体験からいっても、仕事や勉強、読書、また遊びにおいてもそうだが、無我夢中になっていたときは、気づかないうちにあっという間に時間が過ぎていて、我に返ったときには、なんとも言えない充実感に満たされていたことがある。
 
   さて、今回のテーマである“選択と集中”について考えてみたい。
 
   ドラッカーが、マネジメントにおいて提唱している“選択と集中”とは、経営戦略を立てる際に欠くことのできない手法のことである。
 
   一般的にいう「集中」とは集中力の意味で使われることが多いが、マネジメントでいう“選択と集中”は、あるものを一つ選び(コア事業)、そこに経営資源を“集中”投入することをいう。
 
   二つの“集中”の違いは、「時間の長さ」である。前者の“集中”は多くが瞬間的で、長くてもせいぜい一日。だが、後者の“集中”は、持続的である。
 
   もちろん、ドラッカーがいう“選択と集中”での「集中」の意味は、後者、つまり一つのことを継続してやり続けるという意味である。
 
   “選択と集中”という考え方で、限りある経営資源を有効活用するときのポイントは二つあるという。
 
① 第一は、捨てること。
“集中”とは、多くの可能性を捨てることでもあり、あえて選ばないという勇気が必要とされるのである。
 
② 第二は、任せること。
人に任せるということは、自分にしかできない仕事だけが残り、それを極めることで卓越性が生まれることになる。ところが、人に任せることに不安をもつ人がいて、任せる勇気が必要となる。
 
   その意味で、選んで一つに決めることは勇気そのものであり、その一つをやり続けることは覚悟そのものだといえよう。まさに、ドラッカーがいうマネジメントにおける“選択と集中”とは、勇気と覚悟の結晶だと考える。
 

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