古田会計事務所

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今週の考える言葉「喜びの追求」

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喜びの追求

   もう、本田宗一郎氏(ホンダの創業者、1906~1991年)が逝去して30年は経つと思うが、書棚を整理しながら、本をめくっていると、氏の次の言葉に目がとまった。
 
   「私はたえず喜びを求めながら生きている。そのために苦労には精一杯に耐える努力を惜しまない」。
 
   人間であれば誰しも、喜びに満ちた人生を送りたいと願うだろう。その意味においては、ごく普通の願望だろう。
 
   だが、「たえず」と念を押されると、どうだろうか・・・。さらに「そのために苦労には精一杯耐える努力を惜しまない」とまで言われてしまうと、その言葉に氏の信念、生き様を感じざるを得ないのである。
  
   本田宗一郎といえば、豪放磊落、自由奔放などの表現をされることが多く、会社の算盤勘定や経営の舵取りは藤沢武夫氏に任せっきりで、大好きなモノづくりにハマっていたという。しかし、多くの人を魅了し、引き寄せる器の大きさがあったに違いない。
 
    彼がいう「喜び」とは、自らの好奇心を満たすことによって得られる「喜び」だったと思うし、さらに、自分のモノづくりの成果が世のため人のためになる、つまり他人の喜びと通じるという確信だったに違いない。
 
   氏の価値観(思考の枠組み)が「自利利他の精神」で培われていたことは、次の言葉においても自明であろう。
 
   「私は若い社員に、相手の人の心を理解する人間になってくれと話す。それが哲学だ」と。
 
   生前に、本田宗一郎氏と親交が深かった井深大氏(ソニーの創業者)は、彼の書籍『わが友本田宗一郎』の中で、本田氏を評して次のように述べている。
 
   「私が、本田さんを高く評価している点は、大きくいって二つある。ひとつは、技術者としての志の高さというか、完璧なエンジンづくりを目指した姿勢である。もうひとつは、会社のことだけでなく、広く世の中のことや、みんなが上手に幸せに暮らしていけることをつねに考え、ほんとうの意味での真理を自分でできることで実行し、一生を貫いた存在だった」という。
 
   「温故知新」という言葉があるが、本田宗一郎氏や井深大氏に関する本を読み直していると、今再読し、要約文を作成しているP・F・ドラッカーのマネジメント思考を、すでに実践し成果を出した経営者が日本にはたくさん存在していたことを、改めて思い知らされる。
 
   ドラッカーが生前、日本によく訪れて、日本びいきだったことが思い出される。
 

今週の考える言葉「二律背反性」

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二律背反性

   先週末(8月5日)、第93回MAPサロン(大手町サンケイプラザ)が開催され、久々に講演をさせてもらった。テーマは、『未来会計の真髄~未来からの逆算が会社を大きく変える』である。
 
   未来会計とは、「経営者の意思決定をサポートし、持続可能な未来を構築するに必要な会計の体系」をいう。つまり、「未来を創造するための会計」と表現してもいいだろう。その真髄を一言でいうと、「目標設定にある」といっても過言ではない。
 
   企業間の格差は、マネジメント力の差である。そして、「マネジメント力の差は目標設定の良否で決まる」と、P・F・ドラッカーも示唆している。
  
   事業における目標設定の視点は幾通りもあるが、ドラッカーは重要な視点として次の6つを挙げている。
 
 ① マーケティング
 ② イノベーション
 ③ 経営資源
 ④ 生産性
 ⑤ 社会的責任
 ⑥ 費用としての利益
 
   このように、事業を展開していく中で掲げる目標は一つではない、複数に及ぶことになる。そこで留意すべきことは、“二律背反性”の問題である。つまり、「こちらを立てれば、あちらが立たない」という、両立しない関係のことである。
 
   では、“二律背反性”の問題を解決し、緩和させるためにはどうしたらいいのだろうか。
 
   「迷ったら、原点に帰れ」という言葉がある。目標は、目的を達成するための手段・方法として設定されるものである。「目的は一つ、無数にある手段で争わず」という言葉がある。まさに、言い得て妙である。
 
   マネジメントの目的は、唯一、顧客の創造にあるとドラッカーは述べている。だとすれば、その目的に沿って、上記の6つの目標は相互補完し合う関係で設定される必要があるといえよう。
 
   以上のように、仮に“二律背反性”の問題が生じているとすれば、共有すべき目的を見失っている証拠であると考えて、対処すれば解決できると確信している。
 
   特に、マーケティング(現在の顧客)とイノベーション(未来の顧客)の二点に関しては、“二律背反性”の問題について十分に留意してかかるべきだと思う。
 

今週の考える言葉「数学力」

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数学力

   『IG後継者育成塾(第7期第4講)』(R4.7.22~23 in福岡)を終えたばかりである。今回のテーマは「決算書の見方・活かし方」で、“数字力”を磨くことの大切さを、二日間じっくりと学んで頂いた。
 
   日本資本主義の父・渋沢栄一氏は、『論語と算盤』の中で、「実業(算盤)と道徳(論語)が一致しなければ、富は永続できない」と述べている。また、京セラの稲盛和夫氏も、「会計が分からんで、正しい経営ができるのか」と示唆している。つまり、“数字力”は優れた経営者の一条件であるといっても過言ではないだろう。
 
   今、“数字力”は健全経営を行うためには不可欠な条件であると述べたが、“数字力”に強い経営者には次のような3つの特徴がある。
 
 ① 現状を正しく把握する力がある。(現状把握力)
 ② 問題を具体化する力がある。(問題提案力)
 ③ 目標(課題)を明確にする力がある。(目標達成力)
 
   経営者をはじめすべての利害関係者が最も知りたい財務的情報には、大きく二つあると思う。 一つは「儲かっているのかどうか」であり、もう一つは「潰れる心配がないのかどうか」であろう。
 
   当然ながら、企業の決算書は二つの関心事に応えられるような仕組みになっている。損益計算書(PL)を見れば、「儲かっているかどうか」が一目瞭然で把握できるようになっているし、「潰れる心配がないかどうか」は貸借対照表(BS)を見て分析すれば分かるようになっている。
 
   さらに、キャッシュフロー計算書(CF)を見れば、一定期間における資金の流れも把握できるようになっている。
 
   数字(会計)のプロであれば、その会社の決算書(できれば5期比較)を見せてもらえば、概ね、そこの会社の実態を把握できるし、どんな問題があるのか具体化できるし、問題解決のための具体的な目標(課題)を掲げることができる。
 
   では、“数字力”を養うための早道は何か?
 
   目標管理(「仮説」~「実践」~「検証」のサイクル)を徹底してやり続けることではないだろうか。
 
   「仮説」とは、将来の決算書がイメージできるまで考え抜くこと。「実践」とは、その決算書の数字を達成するための戦い。「検証」とは、結果としての決算書を読み解くことである。 
 
   不透明な時代である。経営者にとって、“数字力”は欠くことのできない要件である。
 

今週の考える言葉「5つの習慣」

考える言葉

5つの習慣

   今までに何度となく再読している書籍の一冊に、ドラッカーの『プロフェッショナルの原点』という本がある。
 
   冒頭の書き出しに、「本書のキーワードは、行動と成果である」と述べてある。そして、
 
   「成果をあげる人は、その知識の豊富さではなく、なされるべきことをなすことによってである」と明言してある。
 
   小生がこの本を何度となく手にとり、熟読する理由は、自己啓発の書として、また成果をあげる習慣を身につける訓練の書として、極めて有効な内容だからである。まさに、プロとしての原点に回帰できるのである。
 
   「本書は、成果をあげる習慣を身につけるための訓練の書である」と前置きし、成果をあげるには、次の「五つの習慣」を身につけることが必要である、と述べている。
 
 ① 時間をマネジメントする
 ② 貢献に焦点を合わせる
 ③ 強みを生かす
 ④ 重要なことに集中する
 ⑤ 効果的な意思決定を行う
 
   以上の五点のスキルについては、「時間、貢献、強み、集中、意思決定」とキーワードを明記し、いつでも思い出し、思考できるようにしている。
 
   ①の時間に関しては、まず大事なのは「汝の時間を知れ」である。時間を記録し、整理し、まとめるという三段階のプロセスが必要だ。そして、ムダを省いて、新たに生じた時間を④の重要なことに集中することだ。
 
   ②の貢献に関しては、自らに期待されている貢献は何かを問う。その時、大切なことは全体の成果への貢献と責任を意識することである。
 
   そして、しかる後に、③の自らの強み、上司や部下の強みを総動員することだ。成果をあげるのに大事なもう一つのスキルが⑤の効果的な意思決定である。大切なのは妥協をしないことだ。成果をあげる意思決定は意見の対立からもたらされることが多い。
 
   以上、成果をあげるための「五つの習慣」について考えてみた。
 
   しかし、大事なことは、実際に行うことである。「成果をあげるためのスキルは実際に使うことによって磨かれる。すべていかにあるべきかが問題ではなく、いかになすべきかの問題である」という。
 
   成果をあげてこそ、プロである。「五つの習慣」を体得したいと思う。

今週の考える言葉「フロー概念」

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フロー概念

 
   “フロー”といっても、経済学や会計学でいうところの「フロー(一定期間の増減額)」や「ストック(一定時点の残高)」の関係における“フロー”ではない。
 
   ハンガリー出身で、アメリカの心理学者であるミハイ・チクセントミハイ(1934~2021年)が提唱した“フロー概念”について考えてみたい。
 
   次の問いへの追求から、氏の研究はスタートする。
 
   「人が、その持てる力を最大限に発揮して、充実感を覚えるときというのは、どのような状況なのだろうか?」
 
   この問いに答えるために、チクセントミハイがとった方法は、様々なジャンルにおいて、仕事を愛し、活躍している人たちにひたすらインタビューをしていったという。そのとき、氏はあることに気づく。
 
   それは、かれらが、最高潮に仕事に「ノッテいる」ときに、その状態を表現する手段として、しばしば“フロー”という言葉を用いていたという。
 
   ここでいう“フロー”とは、「最高に集中していてなおかつリラックスしている状態。没頭」をいう。
 
   チクセントミハイは、“フロー状態”に入ると、次のような状況が発生するという。
 
 ① 過程のすべての段階に明確な目的・目標がある
 ② 行動に対する即座のフィードバックがある
 ③ 挑戦と能力が釣り合っている
 ④ 今やっていることに集中する(行為と意識の融合)
 ⑤ 気を散らすものが意識から締め出される
 ⑥ 失敗の不安がない
 ⑦ 自意識が消失する
 ⑧ 時間間隔が歪む
 ⑨ 活動が自己目的的になる(手段と目的の一体化)
  
   ここまで、チクセントミハイのいう“フロー概念”について検討してきたが、ひとつ気づいたことがある。
 
   IG会計グループが提唱している未来会計サービスは、循環モデルを徹底することによって生じるフローをつくり出す。まさに“フロー概念”ではないだろうか。
 
   リーダーはメンバーに対し「目標を明確にし」「適切なフィードバックを行い」「スキルを適合させる」仕組みをつくることの提案。まさに、フロー概念である。
 
   一人ひとりの自覚のもと、職場全体を“フロー状態”にしたいと思う。
 

今週の考える言葉「論理的思考」

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論理的思考

   経営者には、「論理的に物事を考える力、すなわち“論理的思考”が必要だ」と、しばしば耳にする。
 
   「経営とは真理と一体となった営みをいう」(『経営人間学講座』)の言葉通り、なぜかというと、経営は論理であり、論理を知らなければ、実践できないからだ。論理なき実践は、行き当たりばったりの試行錯誤になってしまう。
 
   “論理的思考”は、自らの実践の根拠として必要であると同時に、もう一つは他に対して説明する能力として、経営者にとって欠くことができない資質であろう。
 
   不透明な時代環境の中で舵取りをしなければならない経営者にとって、先見力や洞察力を養う必要があるというが、その資質を支えているのが“論理的思考”ではないだろうか。
 
   経営には、様々な論理があるだろう。戦略・戦術を考えるための論理、組織論やリーダーシップ論なども然りである。
 
   「経営を見る眼」(伊丹敬之著)では、そうした様々な論理に共通する基本論理として次の三つの論理が大切だとしている。
 
① カネの論理(経済の論理)
一般の企業は、市場経済の中で経済的目的を第一義的な目的としてつくられている。市場経済では、カネが購買力を決め、富の蓄積を決めている。ゆえに、カネの論理が経営の論理の中心にくる。
 
② 情報の論理(見えざる資産の論理)
企業の活動は、情報のやり取りと蓄積から成り立っているといえよう。市場における様々な情報のやり取りが学習につながり、それが情報蓄積を生み出している。
 
   ③ 感情の論理(人間力学の論理)
これは、人間くさいが、論理である。単に情緒だからわからないとか、心理だから計算できないからといって無視できないものである。
 
  これら三つの基本論理はしばしば、相互に矛盾するという。故に、総合判断をせざるを得なくなるという。
 
   さらに、経営判断においては環境を無視することはできない。経営の具体策を考えるとき、環境との絡み合いや環境条件の動き、変化も影響があることを考慮する必要があるだろう。環境の変化、ゆれ動きこそ常態である。
 
   経営には論理がある。方程式もある。そしてゆれ動きもある。そうした経営の要素を総合的に判断して考える、“論理的思考”が求められている。
 

今週の考える言葉「キーワード」

考える言葉

キーワード

   正しい経営をしているのかどうか、自己判断することは難しいものだ。なぜなら、人はそれぞれ、自らの価値観(思考の枠組)に知らず知らずにうちに支配されている生き物であるからだ。
 
   特に、上に立つ人ほど、確固たる信念というか、独自の価値観を培っている人が多いような気がする。それは決して悪いことではないが、一つ間違えると独善に陥りやすいこともある。
 
   そこで、自己チェックを行うための5つのキーワードを紹介したい。(『経営を見る眼』伊丹敬之著を参照)
 
① 当たり前スタンダード
誰が見ても当たり前の標準という意味である。その当たり前のことがきちんと実行できているだろうか。
 
② 神は細部に宿る
「経営者の仕事は大きな事を考えることと、小さな事に目を配ることだ」(松下幸之助)
「現場こそすべて」「一事が万事」「蟻の一穴」等々。
 
③ 人は性善なれども弱し
多くの低迷組織には、「ついついの甘えと錯覚と思い込み」が充満している。それを正すのは、容易ではない。
 
④ 六割で優良企業
「その企業に働く人の六割が、当たり前のことをきちんとやっていれば優良企業だ」と言えよう。この比率が七割にもなれば、超優良企業。普通の企業は五割以下だという。組織として狙うべきは、少し良いことを長期的に持続することが大切だ。
 
⑤ 目に見えないことこそ重要
経営はうわべではない。「目に見えないことこそ重要」、である。
 
   戦略で言えば、表面の行動ではなく、具体的な行動とその実行を支える資源が大切である。(技術やノウハウ、顧客の信頼、組織風土など見えざる資産)
 
   組織でいえば、経営システムではなく、その中で実行されるプロセスが大事である。
 
   人間でいえば、能力ではなく、価値観(考え方)が大切である。そして、経営者でいえば、口から出る言葉ではなく、背中が大切である。
 
   以上、自己チェックのための5つのキーワードを書き並べてみたが、当たり前と言えば、その通りである。しかし、経営に限らず、世の中は当たり前のことを置き去りにしていることが、実に多いような気がする…。
 

今週の考える言葉「リーダーのあり方」

考える言葉

リーダーのあり方

   これまでも、“リーダーシップ論”は何度ともなく取り上げてきた課題の一つである。改めて、考えてみたい。
 
   最近再読している本の中に、『経営を見る眼』(伊丹敬之 著)がある。経営の入門書として実によくまとめられたもので、今までも何度となく手に取り、読み直した本の一冊である。
 
   その中に、“リーダーのあり方”について書いてある箇所(第8~11章)があるので紹介をしたい。
 
   氏は、「経営とは、他人を通して事をなすこと」と定義し、だとすれば、経営の第一歩は、“リーダーのあり方”、つまり、「人を動かす、そして人が自ら動く」ということについてしっかりと考えるべきだという。それが、経営の本質だからだという。
 
   そして、そのためには「働く人たちの心の掌握、人心の統一が、企業組織リーダーの最大の仕事だ」ということになる。
 
   ここまで書いていて、ふと思い出した言葉がある。鉄鋼王として有名なアンドリュー・カーネギーの墓碑銘に書かれているという次の言葉だ。
 
   『己よりも賢明な人物を身辺に集める方法を心得た男、ここに眠る。』
 
   ヘンリー・フォードも、同様に、自分よりも賢明な人物を身辺に集めていたことを自負していた経営者の一人だったという。
 
   さらに著者は、「名経営者は、必ず名教育者だ」という。
 
   経営とは、「他人を通して事をなすことだ」。つまり、他人が「自ら事を行うように仕向ける」のが経営だとすれば、それは教育の本質と同じである。教育の本質は自学であり、自育なのである。
 
    その要諦とは、リーダーの要諦とは、次の三つのことをきちんと行うことだと言える。
 
① 部下たちに仕事全体の方向を指し示す。
② 部下たちが仕事をしたくなる、やりやすくなる環境を整備する。
③ その後は、彼ら自身が自分で仕事をやるプロセスを刺激する。応援する。
 
   他人を通して事をなすには、人を信じ、仕事を任せることから経営は始まる、とも思う。それが、出発点であると言えよう。
 
   アメリカの教育者、ウィリアム・ウォードの言葉に、次のような名言があるという。
 
    「凡庸な教師は、命令する。いい教師は、説明する。優れた教師は、範となる。偉大な教師は、心に火をつける」。
 
   「The great leader inspires」。リーダーとして、精進し続けたいと思う。
 

今週の考える言葉「位置と役割」

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位置と役割

   先週末(6月9~10日)、IG会計グループの『事務所見学会』が開催された。コロナで2年間ほど中断されていたので、久しぶりの開催である。コロナの影響を懸念していたが、全国から多くの会計人の参加があり、盛況であった。
 
   『見学会』の目的は、弊社で展開している『未来会計(MAS監査)サービス』について学び、各事務所においても事業化したいということであろう。
 
   『未来会計(MAS監査)サービス』に関していうと、すでに体系化され、モノの考え方や手法も確立しているので、誰もが学ぶことによってすぐに習得できるのではないかと思う。
 
   となると、成功するか否かの鍵を握るのは、「何のために」という目的意識とそれに伴う“位置と役割”であろう。
 
   ほとんど多くの会計事務所は、税務会計(過去会計)という本業があり、社会的な“位置と役割”を担ってきたという長い歴史がある。過去の取引を記録、整理し、税務申告をサポートするという仕事である。
 
   しかし今、多くの中小企業が求めているのは過去ではなく、不透明な未来にどう備えたらいいのかという助言である。
 
   小生は、「会計人は社会的インフラである」という使命のもと、社会のインフラとして中小企業の存続・発展を下支えしていくならば、中小企業の経営者の困りごとが変化した以上は、自らの“位置と役割”を変えていって然るべきである。だが、それができず、顧客のニーズの変化に応えきれない組織が多いような気がする。
 
   また、組織を構成するメンバー一人ひとりの“位置と役割”を明確にしておかなければならないと思う。
 
   会計事務所でいうと、従来の税務会計業務を担う部署・個人と未来会計業務を担う部署・個人は、業務内容に違いがあるようならば、“位置と役割”を明確にしておいた方が相互の貢献と責任が明確になり、コラボレーションしやすくなる。
 
   「組織とは協働行為の体系である」と定義づけるならば、その成立条件は次の3つである
 
 ① 目的の共有
 ② 貢献意欲
 ③ コミュニケーション
 
   これらの成立条件を明確に認識した上で、構成メンバーの一人ひとりが自らの“位置と役割”を自覚し、協力し合う組織は必ずや成功するであろう。
 

今週の考える言葉「自社の魅力」

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自社の魅力

   企業には、様々な利害関係者(ステークホルダー)が存在する。
 
   金銭的な利害関係が発生する顧客や株主そして取引先はもちろんだが、企業活動を行う上で関わるすべての人のことをいう。地域住民、官公庁、金融機関、そして従業員なども含まれる…。
 
   そのような利害関係者にとって、“自社の魅力”はどのように映っているのだろうか。
 
   様々な利害関係者が存在するが、その中でも顧客が関心を持っている“自社の魅力”とは何だろうか。
 
  どんな企業にも、お得意さんと呼ばれる顧客が存在するが、その人たちの顔を思い浮かべながら、次の質問に答えることによって、“自社の魅力”について考え、整理してみよう。
 
① 第一に、今までで最も高い評価を受けた仕事は何か?
② 第二に、それはこれからも高い評価を受けそうか?
③ 第三に、なぜそう思うのか?
④ 第四に、評価をさらに高めるために、どのような要素を追加すべきか?
⑤ 第五に、それを習得する方法は何か?
⑥ 第六に、実際に習得するにはどうすればよいか?
 
   どうだろう…。改めて問い直してみると、意外と曖昧な答えしか浮かばない得意先も多いのではないだろうか。
 
   「ずっと取引しているから」「近くで便利だから」「知人の紹介だったから」「各種交流会のメンバーだから」「他社にないサービスをしてくれるから」「対応が早いから」「何となく…」などだろうか…。
 
   いずれにしても、何らかの理由があって、多くの競合の中から、自社を選んでくれたのは間違いないと思う。それが価格でないとすれば、その理由は何か。その理由こそ、“自社の魅力”だと考える。
 
   “自社の魅力”とは、自社の強みでもある。
 
   そして、ドラッカーは経営戦略のベースには“自社の魅力”(強み)を据えて考えるべきだと助言している。
 
   経営戦略の構成要素とは、①市場・顧客、②商品・サービス、③流通ルートである。すなわち、これら3つの構成要素について、“自社の魅力”がどのように反映されているかどうか、検討してみることも大切であろう。
 
   もちろん、“自社の魅力”は、「顧客にとっての魅力」であることは当然のことである。
 

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