古田会計事務所

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今週の感がる言葉「置き去り」

考える言葉

置き去り

   先週の”考える言葉”シリーズで、『中村天風「勝ちぐせ」のセオリー』を紹介したが、その書の中で、「いつも自分をどこかに“置き去り”にしていないか」という問いかけをしている個所があったので紹介し、“置き去り”について考えてみたい。
 
   “置き去り”といえば、「放置」「置きっぱなし」「置き捨て」「ほったらかし」など、人や物をある場所に残したまま、その場を離れることを意味する。
 
   だが、天風がここで問いかけているのは、自分で自分自身を“置き去り”にするような生き方をしていないかどうか、という問いかけである。
 
   天風は諭す。
 
   「おまえはもう一度自分の人生を考え直さなければいけない。自分にとって本当に大切なものは何か。自分は今、何をなすべきか、そして何ができるのか」。
 
   つまり、自分が今までやってきたことは、ほとんどすべてが目先の仕事のことばかり……。休日はと言えば、ほとんどゴロ寝とわずかな家庭サービス。
 
   鳥や獣でもなく、せっかく人間として生まれてきたのだから、「それにふさわしい生き方、人間らしい中身の濃い生き方を考えろ」という。
 
   社会人になると誰もが、一定の仕事に就く。その時の姿勢の問題である。日々の仕事が追われるだけの道具になってしまうのか。それとも、会社は自分が向上し、進歩するための格好の場と捉え、仕事を自己成長のための手段として生きていくのか。
 
   天風の教えは、こういうことだ。
 
   「自分で理想を掲げ、目的を持ち、計画を立てて、自分自身が仕事を通して成長できる生き方をする。それは同時に人を喜ばせ、世の中の役に立つことでなければならない。それが天から自分に与えられた尊い使命なのだ。それを果たすために自分は生まれてきたのだ!」と。
 
   天風の教えは、まさに正論である。反論の余地もない…。だが、なかなか思うようにはいかない。どうすればいいのか。
 
   天風は言う。
 
   「どこまでもまず人間をつくれ。それから後が仕事だ」と。
 
   そのためには、心の態度をいかなる場合にも積極的であらしめること。これは換言すれば、「尊く、強く、正しく、清く生きる」ということである。
 
   仕事は生活のための手段であることは事実である。だが、そこにとどまっている限り、人間は向上も進歩もない。仕事は自己実現の手段としての役割も担っている。
 
   つい、目先の手段に捉われて、自己実現の手段としての役割があることを疎かにしてしまう。つまり、“置き去り”にしてしまいがちではないだろうか……。