古田会計事務所

〒640-8392 和歌山市中之島303-14 OK.OFFICE

お気軽にお電話ください

TEL.073-474-2212

今週の考える言葉「徂徠訓」

考える言葉

徂徠訓

   荻生徂徠(1666~1728)は、江戸中期の儒学者で、名君の誉れ高い徳川吉宗の知恵袋として活躍した人物である。
 
   『ドラッカーに学ぶ人間学』(佐藤等 著)を再読していると、徂徠の手によると伝えられている“徂徠訓”の記載があったので、その内容を紹介したい。
(現代に生きる徂徠の知恵)
 
 一 人の長所を始めより知らんと求むべからず。人を用いて始めて長所の現るるものなり。
(まずは現場でどんな働きをしてくれるのかを試すのが先決)
 
 二 人はその長所のみを取らば即ち可なり。短所を知るを要せず。
(「強み」を伸ばすことが大切だ」
 
 三 己が好みに合う者のみを用うる勿れ。
(自分の好みに合う者だけをひいきにするな)
 
 四 小過を咎める要なし。ただ事を大切になさば可なり。
(小さな失敗を責める必要はない。真面目に取り組む姿勢があればよい)
 
五 用うる上は、その事を十分に委(ゆだ)ぬべし。
(何かをさせるなら、十分に権限移譲をせよ)
 
六 上にある者、下の者と才知を争うべからず。
(部下と同じ土俵で勝ち負けを争うな)
 
七 人材は必ず一癖あるものなり。器材なるが故なり。癖を捨てるべからず。
(クセを捨てると、「器」そのものが成り立たなくなる)
 
八 かくして、良く用うれば事に適し、時に応ずるほどの人物は必ずこれあり。
(以上のことを踏まえて人を用いれば、才能を開花させる人物が、必ずや現れる)
 
   以上であるが、著者がなぜ“徂徠訓”を引用したのか、が良く分かった。ドラッカーの説くところと、驚くほど共通点が多いのである。
 
   “徂徠訓”のこれらの教えから、人材育成とは「人を見つけることではなく、人を育てることである」ということが学ぶことができる。
 
   最近はずっと、書棚にある書物を整理しつつ、ふと気になった本を再読する機会が多いのだが、その時々の関心の視点が違うことに気づかされる。
 
   一通り目を通して読んでいるはずなのに、最初読んだ時にはあまり印象に残っていなかった個所が改めて読み直すと、関心の的になっていることが多いような気がする。
 
   現代に生きる徂徠の知恵である“徂徠訓”、メモに書き留めて再読できるようにしておきたいと思う。