今週の感がる言葉「伴走支援」
考える言葉
伴走支援
昨今、“伴走支援”という言葉を見聞きする。
中小企業庁の「経営力再構築 “伴走支援”ガイドライン」によると、その理論的な柱となったのは、アメリカの心理学者であるエドガー・H・シャイン(1928~2023年)が提唱した「プロセス・コンサルテーション」の考え方だという。
では、“伴走支援”とは何か?
「経営者との“対話と傾聴”を通じて、経営者に企業の本質的な課題への“気づき”を促し、“内発的な動機付け”により社内の潜在力を発揮させ、企業による課題解決を支援することにより企業の“自己変革力の向上、自走化の促進”を図っていく支援方法である」(中小企業庁のガイドライン)とある。
つまり、簡単にいうと、“伴走支援”とは「経営者の聞き役となり、経営者の心が動いて行くことに寄り添うことで前向きな方向につながり、経営者の勇気と力を引き出していく」ということであろう。
その結果、企業の「自己変革力の向上、自走化の促進」を目指す支援方法である。“伴走支援”の肝は、「聞き役」に徹することができるかどうかである。
従来の経営コンサルティングの手法は、どちらかというと「課題解決型支援」と呼ばれる手法で、その企業の抱えている問題を解決してあげるのが目的であった。
企業の目先の課題への御用聞きを行い、その解決方法を提案し、それに企業が受動的に対応していくというやり方である。
一方、“伴走支援”とは、「課題設定型支援」と呼ばれている手法で、「聞き役」に徹し、経営者に本質的な経営課題に気づかせ、当事者意識を持ち、課題解決へ能動的に行動していくように働きかけていく手法である。
「中小企業白書」(20222年度版)は、自己変革の障害として次の5つを挙げている。
① 見えない(企業内部の可視化ができていない)
② 向き合わない(経営者が現実を直視しない)
③ 実行できない(組織内部のしがらみや経営者の心理的障害)
④ 付いてこない(現場の巻き込みが不十分)
⑤ 足りない(課題解決のための経験や知見が足りない)
この5つの障害を乗り越えるためには、自分の殻を破って、外部の能力を活用する必要がある。
その時、必要なのが信頼できる“伴走支援者”である。その立場を担えるのは、われわれ税理士を始め士業に携わる人達ではないかと思う。
“伴走支援”の肝、「対話と傾聴」、つまり「聞き役」に徹することを心がけたいと思う。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」