古田会計事務所

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今週の考える言葉「捨欲」

考える言葉

捨欲

   人間には、様々な欲がある。食欲、色欲、金欲、権力欲、名声欲、出世欲…人間は欲の塊であるともいえる。
 
   今もないわけではないが、若かりし頃、際限もない欲望に心が振り回されて、心穏やかではない日々があった。どうすれば、欲にかられた煩悩から抜けられるのか、宗教や哲学の本を読み漁ったことがあった。
 
   どの本読んでもその瞬間には、「なるほど!」と悟った気分になれるのだが、少しすると、新たな欲に取りつかれ、心が騒めく。捨てがたき煩悩のなせる業である。
 
   最近、書棚の整理をしているのだが、その時に目についた書物を読み直す機会が増えている。
 
   前々回で紹介した『中村天風 銀の言葉』(岬龍一郎 著)もその一つだ。その中に、次のような言葉が紹介してあったので、改めて紹介したい。
 
   『欲は捨てるな、欲を持て!“捨欲”などできないことで悩むな。欲望がなくて、何の人生ぞ。ただし「楽しい欲を持て!」』
 
   “捨欲”とは、仏教用語である。煩悩の根源となっている「欲」を捨てるという意味である。天風先生は「はたして人間は欲を本当に捨てられるのか?」と、この教えに疑問を投げかけている。
 
   そして、「できないことを、そもそもできるように説くのが詐欺だ」ともいう。そして、「釈迦もキリストもマホメットも、偽りを言っている」と手厳しい。
 
   それに、彼らが何年もかけて修行を積んだのも、みんな悟りたい、生きる辛さから救われたいと思う「欲」があったればこそではないか、と。
 
   「強い心を持ちたい、積極的な人生を歩みたいと思うから、それに近づく努力をするのだろう。それも立派な欲なのだ」と。
 
   だから、「大いに欲望と炎を燃やせ!」という。天風哲学の魅力の一つに、天風先生の言葉の歯切れのよさがあると思う。「ウン、これだ!」と納得してしまう言葉の強さを感じるのである。
 
   ただ、どんな欲望も炎も燃やせといっているわけではない。「欲望には大別して苦しい欲望と楽しい欲望の二つがある」という。もちろん、燃やすべきは、楽しい欲望である。では、楽しい欲望とは何か?
 
   それは、私利私欲を離れて、「人の喜びを自分の喜びとせよ!」ということである。
 
   世の中というのは自分一人で生きられないようにできている。
 
   だとすれば、自他非分離の価値観を学び、習得し、大いに楽しい欲望と炎を燃やし、自己形成していきたいと思う。