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今週の考える言葉「四焉(しえん)」

考える言葉

四焉(しえん)

   東洋の儒学の古典の一つである『礼記(らいき)』の中の「学記」に次の一節がある。
 
   「君子の学におけるや、焉(これ)を蔵し、焉を脩し、焉に息し、焉に游ぶ」
 
   「これは学問の過程、道筋というか、学問の内容・在り方を説いたもので、四つ挙げてあるところから、学記の“四焉”という」(『人間学のすすめ』安岡正篤 著)。
 
   つまり、
 
 ① 学問というものはまず蔵さなければならない、出さずに自分の内にいれておかなければならない。見せびらかすものではない。(蔵する)
 
 ② しかし、蔵してカビが生えたり、ホコリがたかっては仕方ないので、そこは一つ脩めなければならない。整えて立派に磨く必要はある。(脩める)
 
 ③ 学問は心を整えるためにするのだから、疲れ、病んではいけない。そこで、息、休養が大事である。(息する)
 
 ④ 息をするように学問をする。学問も呼吸も同じである。と同時にその学問に遊ぶ。
 
  学問の中に遊ぶということ、ゆったりと学問の中に遊んで、自分で哲学し、信仰することである。(遊ぶ)
 
   この本を手に取り、読んだのは、もう30年程前である。当時、独立開業して10年程経った頃だと思う。食うためにがむしゃらに働いてきたのだが、少し余裕ができて考えると、何のために独立開業したのかという、原点の目的を見失ってしまったような気がしていたからだ。
 
   そんな時だったからであろう、『人間学』という題目、言葉に惹かれ、読み入り心酔し、その後、安岡先生の本を十数冊読み漁ったことを思い出した。
 
   『人間学』とは、人間が本来備えている徳性(人を愛する、尊敬する、忍耐する、正直、勤勉、誠実、恩を感じ、恩に報いるなど)を養っていくための学問をいう』と一節が目を引いたのだ。
 
   そのとき、ハッと気づかされたことがあった。
 
   もちろん、仕事に役立つ専門的知識を磨き、クライアントの役に立つための読書も大切であるが、自分自身の人間性を高めるために読書という視点が薄れていたような気がしたのだ。自らの人間性を高めるためには、深く考えること、哲学が必要だと感じ、学生時代に読んでいた、デカルトやニーチェなどの哲学書を必死に読み直した。
 
   そんなときに出逢ったのが、竹内日祥上人が主催する『経営人間学講座』であった。人間の価値観には、次元があるという教えから始まり、低い価値観とは“分離思考”であり、高い価値観とは統合の思考(自他非分離の思考)、「出逢った相手は自分である」と自覚できるか…。それは、私が生まれ変わった瞬間でもあった。