今週の考える言葉「五危」
							
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						五危 
どうも『孫子』にハマってしまったようだ。今回も『孫子の兵法』から、考える言葉のテーマを選んでみた。
「将に五危あり。必死は殺され、必生は虜にされ、忿速は侮られ、廉潔は辱しめられ、愛民は煩さる」(九篇第八)
孫子は、「将とは、智・信・仁・勇・厳なり」と述べ、人の上に立つ者はこの五つの資質を具えていなければならないという、有名な言葉である。
問題は、強みとされる資質でも、ある一方向にのみ凝り固まると、「過ぎたるはなお及ばざるが如し」で、強みも過ぎたれば弱点になってしまう、という。
次に掲げる“五危”は、この五つの資質が行き過ぎたものである。
① 第一は「必死(ひっし)」
向こう見ずで退くことを知らない。必死になると、思慮の浅い勇ばかりとなり、かえって敵の術中にはまる。
② 第二は「必生(ひつせい)」
臆病で闘志がないリーダーである。生きようと思い定めること。消極的になってしまい、チャンスを見逃してしまう。前例のあることしか認めようとせず、自ら意思決定しようとしない。
③ 第三は「忿速(ふんそく)」
忿速とは、短期、怒りっぽい、という意味。闘争心むき出しで、冷静な判断ができなくなる。挑発に乗せられやすく、すぐに頭がカッとなるタイプ。
徳川家康は「怒りは敵と思え」と、怒ることは身を滅ぼすもとであるから敵と思って慎めるべきだと遺訓したという。
④ 第四は「廉潔(れんけつ)」
常に清廉潔白であることは立派だが、これも行き過ぎると、生きにくくなってしまう。「かくあるべき」ときれいごとばかり並べて、融通のきかない堅物になるのがオチ。「清濁併せのむ」くらいの図太さも必要だ。
⑤ 第五は「愛民(あいみん)」
仁が行き過ぎれば「愛民」となる。子どもに愛情を注ぐ、部下に愛情をもって接する。それ自体は素晴らしい。ただ愛情が過ぎれば、その人間を甘やかしてダメにしてしまう恐れがある。また自分自身も優柔不断に陥りやすくなる。
以上五つが、孫子の言う“五危”である。
「強みは弱みの、弱みは強みの裏返し」という。
“五危”をもって、常にいつでも振り返りを行い、己を律するようにしたいと思う。
転載元:IG会計グループ 「考える言葉」





