古田会計事務所

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今週の考える言葉「ドメイン」

考える言葉

ドメイン

   “ドメイン(domain)”とは、組織体の活動の領域・フィールドことで、事業“ドメイン”ともいう。
 
   小生が独立開業したのが1984年で、40年ほど前になるが、その頃の日本経済は戦後の高度成長期を終え、市場が成熟化し、安定成長・低成長期にあったと言われていた。
 
   そんな経済環境であったからだろう、「企業は新たな成長戦略を描くには、“ドメイン”の見直し、再構築が必要だ」ということをよく見聞きしたものだ。
 
   企業は“ドメイン”の設定により、戦う領域を設定し、組織活動の指針とする。ゆえに、
 
   “ドメイン”は、企業の方向性を示す上で、非常に重要な意味を持つ。そして、“ドメイン”設定のミスが、企業の凋落の原因となった事例として、アメリカ鉄道会社のことがよく挙げられていたものだ。
 
   アメリカ鉄道会社の凋落の原因は何か。それは、市場が衰退したからではなかったと…。人の移動の面でも物の移送の面でも、事実、輸送に対する社会のニーズは急成長を続けるなかで鉄道の凋落が起こったのである。自動車やトラックなどの代替輸送手段に需要を奪われたというよりも、伸び続けていた需要に鉄道会社自身が上手く対応できなかったために起こったのである。
 
   この例は、鉄道会社が自らの事業を「輸送事業」と考えるのではなく「鉄道事業」と考えたために自分の顧客を他に追いやってしまったというのだ。
 
   アメリカの鉄道業界が衰退したのは自分たちの事業を“鉄道”というサービスでだけしか考えていなかったのが、その理由であった。つまり、輸送を目的と考えずに鉄道を目的としてしまったからだ。
 
   鉄道という物理的定義の“ドメイン”ではなく、輸送という機能的定義の“ドメイン”を思考すべきだったのだ。
 
   自分の商品やサービスを中心にして事業を考えていると、技術革新など環境に変化が起こったとき、他の業界に顧客をすべて持っていかれる恐れがあるのだ。
 
   成功と継続を両立させるためには、➀ 顧客は誰か、② 顧客の抱える問題は何か、③ どうやって顧客の問題を解決するか、常に顧客の視点から“ドメイン”を見直すことを怠ってはならないと思う。
 
   1990年代初頭にバブルが崩壊して30年が過ぎる。「失われた10年」がいつの間にか「失われた30年」と言われるようになった。各人が、自らの手で、新たな成長戦略を描くためにも、自社の“ドメイン”を再構築してみたいと思う。